プログラム

日程表 5月23日(土) 日程表 5月24日(日)

※オンデマンド配信は第1会場(市民公開講座除く)、第5会場、第6会場、第8会場のみとなります。

5月23日(土)午前

講師名をクリックすると、抄録が表示されます。

選ばれる職種になるための最先端シリーズ

第1会場 9:15~10:45【1日目 AM1】
カリキュラムコード:144 ロボットと理学療法 点数:1.5
セッションテーマ:AI/IoTの新技術と理学療法への応用
座長:田代 耕一(桜十字福岡病院)

講師:松田 雅弘(順天堂大学 保健医療学部)

医療分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展に伴い、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)を活用した新たな評価・介入技術が急速に発展している。近年では、画像認識技術による動作分析、ウェアラブルセンサを用いた生体情報の継評価技術の発展、生成AIを活用した臨床支援や教育支援など、理学療法領域における応用の可能性が広がっている。一方で、これらの技術は必ずしも臨床現場で十分に理解・活用されているとは言えず、技術の特性や限界を踏まえた適切な導入が求められている。理学療法士が現場で活用可能なAI/IoT技術について、現在実装可能な臨床応用、臨床業務の効率化や意思決定支援における活用方法、今後発展が期待される予後予測や個別化リハビリテーションの展望の3点を中心に概説する。AI/IoTを単なる新技術として捉えるのではなく、理学療法の質を向上させ、さらなる患者中心の支援への活かし方を概説したい。


第1会場 11:00~12:30【1日目 AM2】
カリキュラムコード:146 支援工学 点数:1.5
セッションテーマ:理学療法士が使うVRの可能性
座長:田代 耕一(医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院)

講師:山下 喬之(原田学園 鹿児島医療技術専門学校 理学療法学科/先端技術利活用プロジェクトTEAM)

第61回日本理学療法学術研修大会のご盛会を、心よりお喜び申し上げます。本講演では、Virtual Reality(VR:仮想現実)という先端技術を、理学療法士が将来にわたって「選ばれる職種」であり続けるためのひとつのChance(ご縁)と捉え、新たなレンズを通して見えてくる可能性を皆様のイマジネーションと共鳴させ、明日からの臨床をアップデートする新たな『創造』のきっかけにしていただければ幸いです。VRと理学療法の融合は、熟練者の経験に裏付けられた専門技能や臨床知といった「暗黙知」を技術によって可視化・客観化し、誰もが享受可能な「質の高い知と技」へと昇華させるための新たな実践基盤になると捉えています。VRを単なる治療機械や視聴覚教材として定義するにとどめず、『経験の解像度を上げる眼鏡』と再定義し、その多角的な可能性を皆様と共に描き出していきたいと思います。現在、臨床現場では対象者の動作軌跡を精密に定量化する評価への適用が進む一方、教育現場においては、従来の「習ったことがある」という知識の習得を、仮想空間での体験を通じた「経験したことがある」という確信へと変容させ、学習概念そのものを進化させています。これは、古くからの「百聞は一見に如かず」を現代の技術で実証する絶好の機会といえます。当日は、自校における実践および先行研究の紹介を経て、結びにはXR技術と生成AI、そして演者自身の「好きなもの」を融合させ、キャリアと知的好奇心の境界を超える未来のスタイルを提案します。先端技術を人生の「パートナー」として使いこなし、「選ばれる職種」へと至るための新たな航路を、皆様と共に創造するきっかけとなれば幸いです。


選ばれる職種であり続けるためのワークショップ

第2会場 9:15~12:30【1日目 AM1】
カリキュラムコード:140 リハビリテーション栄養 点数:3
セッションテーマ:リハ栄養

講師:白土 健吾(株式会社麻生飯塚病院 リハビリテーション部)
  講師:田中 拓樹(百年橋リハビリテーション病院 リハビリテーション部)
 
※本セッションは、共同企画として構成されておりますため、抄録は1件にまとめて掲載しております。
  一連の症例を通じた“急性期から回復期”のリハビリテーション栄養 ~つながるアセスメントとアプローチ

 近年の診療報酬改定や各種ガイドラインの動向からも、栄養管理の重要性はますます高まっており、急性期・回復期を問わず、理学療法士にとって必須の視点となっています。しかし、実際の臨床では「急性期でどこまで介入すべきか」「回復期で目標をどこに立て、どこまで攻めるのか」といった判断に悩む場面も少なくありません。
 本ワークショップでは、誤嚥性肺炎で急性期入院加療を経て、回復期へ転院した一連の症例を提示し、急性期から回復期へとつながるリハ栄養のプロセスを検討します。①急性期フェーズでは、提示されたアセスメント情報をもとにゴール設定と介入方針、②回復期フェーズでは、同一症例の経過を踏まえた問題点の再整理と目標設定とアプローチ、①②ともにグループワーク形式で検討していただきます。
 1症例を通して急性期と回復期それぞれの視点を比較しながら検討することで、リハビリテーション栄養ケアプロセスを一連の流れとして捉え、臨床で活用できる思考過程を身につけることを目指します。
  本セッションは受け身になりがちな講義形式ではなく、参加型のワークショップ形式で進行します。参加者同士のディスカッションを通じて、各施設での課題や工夫を共有し、明日からの臨床に活かせる栄養理学療法の視点を持ち帰っていただければ幸いです。


選ばれる職種になるためのハンズオンセミナー

第3会場 9:15~12:30【1日目 AM1】
カリキュラムコード:148 装具 点数:3
セッションテーマ:理学療法士が行う義肢装具の可能性
座長:吉村 雅史(レ・ハビリス桜十字 老健本部)

講師:久保田 勝徳(医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院)

 脳卒中患者に対する下肢装具を用いた歩行練習は、『脳卒中治療ガイドライン2021』において推奨されており、歩行再建を目的とした介入として広く実施されている。特に重度脳卒中患者においては、長下肢装具を用いた必要十分な運動量の確保が歩行自立度やADLの改善に寄与することが報告されており、個々の機能障害と回復過程に応じた実践的運用が求められている。一方で、臨床現場では装具の選定や調整、介助方法、導入時期の判断に難渋する場面も少なくなく、理論と実践の乖離が課題として指摘されている。
 そこで本ハンズオンセミナーでは、下肢装具を使用した歩行練習の理論的整理を概説した上で、実技を通して装具の調整および介助歩行の具体的方法を提示する。さらに、当院で実施している装具回診の運用例を共有し、ワークショップを通して、明日からの臨床で即実践可能な知識と技術の習得を学習目的とする。


選ばれる理学療法士たちの症例発表

第4会場 9:15~10:45【1日目 AM1】
セッションテーマ:神経系理学療法学(day1)
座長:大田 瑞穂(令和健康科学大学 リハビリテーション学部 理学療法学科)

①脳卒中   講師:新屋 成征(株式会社麻生飯塚病院 リハビリテーション部)
  症例から捉える脳卒中リハビリテーションの臨床思考

脳卒中治療ガイドラインには多くのリハビリテーション介入に関するエビデンスが示されているが、臨床現場ではガイドライン通りの介入のみでは改善が得られず、評価や治療選択に迷う症例も少なくない。本症例発表では、特定の手技や治療手段の紹介ではなく、「評価から仮説を立て、介入を選択し、結果を再評価する」という臨床思考の過程を学ぶことを目的とする。内容は、①脳画像から残存機能を推察し治療戦略を立案した重症くも膜下出血症例、②背部筋過緊張に着目し腹臥位療法が有効であった感覚性運動失調症例、③片麻痺症例における立位保持姿勢に着目した介入戦略の3テーマで構成する。各症例を通じて、患者固有の問題点を多角的にアセスメントし、その結果に基づいた介入選択と評価上の変化を示すことで、若手理学療法士の臨床推論能力を高める一助となれば幸いである。

②神経筋疾患 講師:原山 永世(製鉄記念八幡病院 リハビリテーション部)

神経筋疾患の治療における理学療法では、複雑な病態理解と運動負荷量に悩むことが多い。しかし、治療過程においてチーム医療の一員として専門性を発揮し参画できた場合、患者を良好な転帰に導ける。特に、医師による原疾患の治療を適切に理解し、理学療法の専門性を発揮できれば、「選ばれる理学療法士」になれる。本講演では、2症例を通してその具体的戦略を提示する。
1症例目は、パーキンソン病を提示する。「症状日誌」を活用し、新規薬剤の導入前後での非運動症状や運動症状(UPDRS partⅢ)の変化を詳細に可視化できる。この症状日誌をチームで共有することは、薬物療法の微調整に寄与するだけでなく、運動療法の最適な介入タイミングの決定や効果判定を行う上で重要となる。
2症例目は、ランバート・イートン筋無力症候群を提示する。本疾患やこの類似疾患では、薬物療法による筋力改善が主となるが、治療前後での定量的筋力評価(MRCスケール)およびADLの改善を評価し、医師と協議を重ねる必要がある。運動療法を展開する中で、日々のモニタリングを通じてOverwork Weakness(過用性筋力低下)を回避し、良好な転帰を得た経験を述べる。
神経筋疾患の理学療法の本質は、病態把握に基づいた理学療法評価とその効果判定にある。チーム医療の中で、理学療法士が選ばれるための工夫について、本講演が臨床における意思決定の一助となれば幸いである。

③脊髄障害  講師:古賀 隆一郎(総合せき損センター 中央リハビリテーション部)

脊髄損傷の疫学的状況は変化しており、近年では高齢者および不全麻痺症例が増加傾向にある。このような背景から、加齢に伴う併存疾患を有する症例の増加や不全麻痺特有の多様な臨床像が生じ、予後予測を一層複雑にしている。そのため、我々には個々の病態や生活背景に応じたより戦略的なリハビリテーションアプローチが求められる。一般に、歩行や日常生活動作(ADL)の予後は、神経学的所見や画像所見などの医学的情報を基に予測される。しかし、臨床では予測された転帰と実際の回復経過との間に乖離が生じることも少なくない。そこで重要となるのは、評価に基づく仮説を立案しつつ、介入に対する身体機能やADLの変化を再評価しながら捉え、臨床推論を逐次更新し続ける柔軟な姿勢である。
本講演では、不全頚髄損傷による四肢麻痺を呈した症例の経過を通じて、予後予測の考え方と長期的なADL拡大を見据えた段階的介入の実際について述べる。


第4会場 11:00~12:30【1日目 AM2】
セッションテーマ:運動器障害系理学療法学(day1)
座長:齊藤 貴文(令和健康科学大学 理学療法学科)

①運動器  講師:臼本 真也(呉共済病院 リハビリテーション科)
  術前から破局的思考を有したリウマチ性両側変形性膝関節症に対して両側同時T K Aを施行され、術後疼痛管理を中心に介入し良好な経過となった症例

【はじめに】
 日本理学療法士協会の統計によると、2025年3月時点で認定理学療法士取得者は全会員の11.2%であり、そのうち運動器分野は4,942名と最多の取得者数となっており、運動器領域における専門性への追求への高い関心を示している。運動器分野の認定理学療法の資格の取得は、運動器疾患に対する自らの専門性を高め、医療の質の向上に貢献することに重要な役割を担うと考えている。

【症例概要】
 今回は術前評価から破局的思考を有したリウマチ性の変形性膝関節症(右内反・左外反)に対する両側同時TKA術後のリハビリ治療経験について報告する。症例は60歳代前半女性、術前左膝Visual Analogue Scale(VAS)100mm、歩行可能距離3-5m(両側膝関節痛および骨盤前傾アライメントが強く腰部痛の影響)を認めていた。術後早期は疼痛管理中心に疼痛神経科学的な教育と認知行動療法的アプローチを統合した。段階的な目標設定により術後2週のPain Catastrophizing Scale(PCS)は17点(術前42点)、退院時は11点へ改善した。両側同時TKA施行による膝アライメント正常化および術後運動療法介入により骨盤前傾が改善し腰部痛が軽快、隣接関節を含む運動連鎖への配慮が重要であったと考えられた。術後28日で独歩自立、Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)56点から21点へ改善し自宅退院となった。破局的思考への早期介入と運動学的視点を統合した包括的理学療法の重要性を示したと考えられる症例について皆様とディスカッションしていきたい。

②スポーツ 講師:古川 颯真(医療法人原三信病院 リハビリテーション部)
  前十字靭帯再建術後早期における正常歩行獲得に向けた理学療法介入の一症例

前十字靭帯(ACL)再建術後早期は、関節腫脹や疼痛に伴う筋力低下や神経筋協調性低下により異常歩行がしばしば認められる。また、異常歩行は術後5か月時点でも残存することが報告されており、退院後の機能回復や競技復帰の遅延要因となる。しかし、膝前十字靱帯損傷理学療法ガイドラインでは歩行の質に焦点を当てた記載は少なく、臨床における課題の一つである。
本講義では、ラグビー中の受傷によりACLおよび外側半月板を損傷し、再建術および半月板縫合術が施行された症例を通して、術後早期にみられた異常歩行に対する膝伸展ROMの改善、内側広筋の筋力改善、神経筋協調性の改善を目的としたアプローチを紹介し、ACL再建術後早期における歩行の質に着目した評価および介入の重要性について考察する。

③徒手   講師:石田 卓三(タイチ鍼灸接骨院)
  徒手理学療法認定を起点とした臨床推論の深化 ― 症例を通して考える再現性のある意思決定 ―

徒手理学療法は手技そのものではなく、仮説設定と「評価―介入―再評価」を軸とした臨床推論の精度によって成果が決まる。しかし臨床現場では、検査や徒手介入が断片化し、所見と意思決定が十分に結びつかないまま実施されている場面も少なくない。本講義では、私が臨床で用いる意思決定の枠組み(臨床推論OS)を提示し、いくつかの症例を通して同一の思考プロセスで評価から介入、再評価へと展開するアプローチを紹介する。症例では、疼痛機序や主病態の仮説を立て、目的を明確にした検査と徒手介入を行い、その場での再評価によって介入の妥当性を検証する流れを示す。さらに、徒手理学療法認定を一つの起点として、自費・コンサル・活動領域が段階的に広がっていった自身の経験を踏まえ、認定取得が臨床能力の深化のみならずキャリア形成にも影響を与え得ることをお伝えし、臨床とキャリアの両面を発展させるための現実的な選択肢として位置づけたい。


選ばれる職種になるための基礎シリーズ

第5会場 9:15~12:30【1日目 AM1】
カリキュラムコード:88 運動器疾患の理学療法 点数:3
セッションテーマ:運動器理学療法
座長:藤田 努(九州大学病院 リハビリテーション部)

講師:坪内 優太(大分県立看護科学大学 人間科学講座 生体科学研究室)
 選ばれる専門職になるための骨代謝リテラシー ―骨粗鬆症の再考と運動器理学療法―

骨は身体に剛性を与え運動を可能にする支持組織であると同時に,ミネラル代謝,造血,免疫機能に関与する全身性器官である.エネルギー不足時に骨格筋が分解され,カルシウム恒常性維持のために骨吸収が亢進するように,運動器は常に栄養状態やホルモン動態など全身状態の影響下にある.したがって,運動器をターゲットとした理学療法においては,局所機能の改善にとどまらず,全身病態を踏まえた医学的視座が求められる.
近年,サルコペニアや骨粗鬆症に対する関心は高まり,とくに続発性骨粗鬆症に代表されるように,全身疾患と骨代謝異常の関連は明確になっている.骨粗鬆症は加齢や閉経に伴う単なる骨量減少ではなく,骨形成と骨吸収の不均衡により生じる骨代謝疾患である.多疾患併存が常態化する現代においては,骨代謝に影響を及ぼす病態を整理し,障害像を統合的に捉える能力が,運動器理学療法の質を規定する重要な要素となる.
本講演では,選ばれる専門職となるための基盤として骨代謝リテラシーを再確認し,骨粗鬆症の予防・治療に資する臨床思考の枠組みを提示する.

講師:阿南 雅也(大分大学 福祉健康科学部)
 変形性膝関節症における動作解析と運動協調性の理学療法的理解

変形性膝関節症は理学療法士が日常的に担当する代表的な運動器疾患である.しかし,臨床では疼痛や関節可動域制限,筋力低下といった単一要素に着目した評価・介入にとどまりやすく,関節に加わる力学的負荷や身体各部の運動協調性まで踏み込んだ理解は十分とは言えない.
本講演では,歩行や立ち上がり動作を中心に,膝関節内外に作用する力のモーメントや床反力,さらには関節間協調性の観点から変形性膝関節症の病態を整理する.特に,外部膝関節内転モーメントや外部膝関節屈曲モーメントといった力学的負荷と,体幹・股関節を含めた協調戦略の変化を統合的に解釈する視点を提示する.さらに,三次元動作解析や簡易的な臨床評価をどのように結び付け,評価結果を臨床推論へと発展させるかについて具体例を通して解説する.力学的理解をもとに「なぜこの運動療法を選択するのか」を説明できる思考過程を共有し,研究知見と臨床実践を架橋する視座を提示する.運動学・運動力学・運動制御の基礎を再確認しながら,病態理解に基づく理学療法実践を再考し,「選ばれる理学療法士」としての専門性を高める契機としたい.


第6会場 9:15~12:30【1日目 AM1】
カリキュラムコード:116 がんのリハビリテーション 点数:3
セッションテーマ:がん理学療法
座長:広田 桂介(久留米大学病院 リハビリテーション部)

講師:立松 典篤(名古屋大学大学院 医学系研究科 総合保健学専攻)
 周術期のがん理学療法 〜サルコペニアリスクとその対策〜

がん患者はがんの進行もしくは治療経過の中で、筋力低下、体力低下、運動麻痺、関節拘縮、嚥下障害、発声障害、末梢神経障害、四肢長管骨や脊椎の病的骨折、認知障害、浮腫などのさまざまな機能障害が生じる。がん治療の進歩とともに「がんと共存」する時代となってきた昨今においては、これらの障害を予防または改善し、がん患者の日常生活活動(Activity of daily living: ADL)および生活の質(Quality of life: QOL)の維持・向上につなげることが求められている。
近年、がん患者に対する外科手術の治療成績が向上している一方で、がん患者の高齢化が進み、術後の合併症発症や機能回復遅延のリスクが高まっている。一般に、高齢者は加齢による生理的予備力の低下が顕著であり、さまざまな要因によって身体活動量や筋力、認知機能、栄養状態が影響を受けることが知られている。特に、サルコペニアは高齢者の身体的脆弱性に関わる重要なリスク因子であり、その対策は喫緊の課題とされている。本セッションでは、胃癌や食道癌、大腸癌などの消化器癌に対する周術期のがん理学療法に焦点を当て、術前・術後の運動療法および栄養療法のベストプラクティスについて共有し、参加者の皆様と一緒に考える機会としたい。

講師:福島 卓矢(関西医科大学 リハビリテーション学部)

化学療法は、がんに対する疾患特異性の高い治療であり、近年では新規薬剤や治療法の開発・導入により、再発や生命予後といったハードアウトカムに関する治療成績は向上している。一方で、化学療法には骨髄抑制、倦怠感、嘔気・嘔吐などの有害事象が生じ得るという特徴があり、これらは身体機能低下やサルコペニアの併発、日常生活活動(ADL)制限、さらには生活の質の低下につながる可能性がある。そのため、がん治療における理学療法の果たす役割は大きい。
特に、ADL制限との関連性が高い身体機能低下やサルコペニアに着目すると、身体活動量低下や低栄養が主要因になることが明らかとなっており、がん理学療法の実践においてはこれらを考慮する必要がある。すなわち、運動療法と栄養療法を踏まえた臨床実践が重要となる。しかし、臨床現場で遭遇する多様な対象者に対しては、運動療法および栄養療法を一様に提供するのではなく、多角的な視点をもつ多職種が連携し、個別性の高い介入として展開していくことが有用である。
本セッションでは、化学療法を治療の柱とする血液がんを一例として取り上げ、化学療法施行中におけるがん理学療法について、運動療法および栄養療法に着目した介入に加え、多職種連携の視点も交えながら情報共有を行いたい。


選ばれる理学療法士たちのキャリアシリーズ

第7会場 9:15~10:45【1日目 AM1】
カリキュラムコード:48 研究法 点数:1.5
セッションテーマ:市中病院の研究者
座長:横手 翼(麻生飯塚病院 リハビリテーション部)

講師:音地 亮(北九州市立医療センター リハビリテーション技術課)

研究を始めたきっかけは、「研究者になりたい」という強い志があったわけではない。「臨床での疑問を形にしてみたい」という純粋な思いから学会発表を始め、その延長線上で現在に至っている。市中病院における研究は、時間、設備、指導者といった点で多くの制約があると考えられがちである。しかし、これらの課題は大学病院や専門機関においても本質的には共通しており、あえて違いを挙げるとすれば、研究が業務上の責務として明確に位置づけられておらず、研究への関わり方が個人の裁量や熱意に大きく依存しやすい点であろう。市中病院では、日々の臨床の中で生じる疑問や違和感が、研究として整理される前に日常業務の中に埋もれてしまうことも少なくない。
本講演では、これまで取り組んできた臨床研究の失敗と成功、研究時間の捻出方法、人脈形成の重要性などについて、ありのままにお話する。研究エリートではない私の立場だからこそ、これから研究を始めたいと考えている方や、壁に直面している方にとって共感できる部分があるかもしれない。そして何より、研究って思ったより楽しい。そのリアルを皆さんと共有できたら幸いである。

講師:尾﨑 圭一(パナソニック健康保険組合 松下記念病院 リハビリテーション療法室)

本講演では「選ばれる理学療法士シリーズ」の一環として、「市中病院の研究者」をテーマに、日常臨床と研究活動を両立させる意義と実際について共有する。日々、臨床業務や委員会、後輩指導などの多様な業務を担い、部署として臨床研究に積極的でない病院も少なくないのが現実である。このように臨床業務が多忙で、かつ研究文化が十分でない環境において研究に取り組むことは決して容易ではなく、臨床業務との両立、倫理審査やデータ管理、統計解析など多くの壁が存在する。一方で、日々の臨床で生じる「なぜこの患者は良くなったのか」「この介入は本当に有効なのか」といった疑問こそが、研究の出発点であり、市中病院は実臨床に根ざした研究テーマの宝庫でもある。研究を通じて臨床の質を客観的に検証し、外部へ発信することは、自身の専門性を高めるだけでなく、施設や職種の価値向上にもつながる。本講演では、臨床研究を継続するための工夫や失敗から学んだ実践的な知見を紹介し、皆様が「忙しいからできない」ではなく「忙しいからこそやる」研究への一歩を踏み出すきっかけを提供したい。


第7会場 11:00~12:30【1日目 AM2】
カリキュラムコード:157 各ライフステージの人間理解 点数:1.5
セッションテーマ:子育て世代
座長:神崎 良子(九州栄養福祉大学 リハビリテーション学部 理学療法学科)

講師:古川 郁美(桜十字福岡病院 在宅事業部)

2001年に理学療法士免許を取得。「3年は病院で働いて、リスク管理ができるようになったら訪問リハで働きたい」という思いがあり、新卒で急性期病院に就職。2004年に職場を変え、通所介護・訪問リハを経験。2005年に今の職場に入職し、回復期配属を経て、訪問リハに従事できるようになりました。私生活では2007年に結婚し、2010年に第一子を出産。産休・育休を利用し、子供が生後11ヶ月の時に時短勤務で復帰。復帰後1年でフルタイム勤務に戻したものの、翌年に流産を経験。仕事と家庭や育児の両立、自分自身の体調管理や心のバランスを取るのがとても難しい時期でした。子供が3歳になり、久しぶりに県士会主催研修会に参加してみようと思ったら、協会へ休会届を出したまま期限が切れて自動退会となっていたことが発覚。再度入会し、1から新プロを履修しました。子供が小学校に入学した2017年に在宅支援センターのセンター長に就任。2020年に新型コロナウィルス感染症による緊急事態宣言が出ると子供の学校や習い事等全ての予定がなくなり、仕事でも研修会や会議が全てオンラインになったことをきっかけに県士会や協会の活動へ参加するようになりました。2022年に認定理学療法士を取得。2024年に在宅事業部の部長に就任。今年は子供が高校へ進学、私は訪問リハ協会の理事に就任予定。これまでの経験をありのままお伝えすることで、聴講者の皆様の明日からの行動に少しでもお役に立つことができれば幸いです。

講師:小西 信子(国立がん研究センター東病院 リハビリテーション室)
 子育て世代の理学療法士のキャリアデザイン:ワークライフバランスをどう組み立てるか

近年、日本では共働き世帯が増加し、男性の育児参加も政策的に推進されている。働き方改革関連法および育児・介護休業法改正により、多様な就業形態や柔軟な働き方の整備が進められ、理学療法士のキャリア形成にも構造的変化が生じている。子育て世代の理学療法士にとって、臨床業務と家庭生活の両立は重要なキャリア課題であり、これは女性に限らず男女共通の課題である。また、子育て期の支援には、管理職や指導的立場にある理学療法士による理解と関わりも不可欠である。さらに、キャリアはライフイベント発生後に検討するものではなく、新人期から主体的に設計していくことが重要である。本セッションでは「キャリアとは何か」を出発点に、キャリア形成の一つの手段として研究活動を提案し、臨床・研究・子育てをどのように戦略的に組み立てていくかを、自身の経験も踏まえて具体的に紹介する。加えて、管理職が配慮すべきポイントや支援の在り方についても共有する。


選ばれる理学療法士のための日本理学療法学会連合セッション

第8会場 9:15~10:45【1日目 AM1】
カリキュラムコード:24 信頼関係の構築と協働作業の実践 点数:1.5
セッションテーマ:日本理学療法管理学会
座長:前田 晃志(医療法人徳洲会 東京西徳洲会病院 リハビリテーション科)

講師:宮城 春秀(社会医療法人社団 正志会 花と森の東京病院 リハビリテーション科)
 理学療法部門管理に必要なマネジメントガイドラインの現状

現代の医療現場は、技術革新や医療の高度化により複雑性が増し、高度な医療が求められ、多職種連携による包括的ケアの重要性が高まっている。加えて、医療現場における働き方改革やハラスメント対策など社会的要請も強まり、医療および理学療法の質が厳しく問われる時代である。このような社会状況において理学療法部門の管理者には、高度なマネジメント能力を発揮し、限られた資源の中で質の高い理学療法サービスを提供することが求められている。このような背景から管理者には、高度なマネジメントスキルが必要とされ、その役割はこれまで以上に重要かつ困難なものとなっている。
日本理学療法管理学会は、こうした管理者を支援するため「理学療法部門マネジメントガイドライン(以下、ガイドライン)」を策定した。ガイドラインは、自施設の特性に応じた体制整備を行うための基盤となることを目的として、理学療法管理業務を7つの項目(①リーダーシップ、②資源管理、③チーム医療と連携、④職員教育、⑤安全管理、⑥感染管理、⑦患者中心の医療)に区分している。そして、理学療法管理業務の実践的な指針と管理者が直面する課題に対する具体的な解決策や方針が示されている。
管理者がガイドラインを活用することで、理学療法部門の質向上と患者の生活の質の向上に寄与することが期待される。本講演では、ガイドランの作成過程を踏まえた現状を述べる。

セッションテーマ:日本理学療法教育学会
座長:日髙 正巳(兵庫医科大学 アドミッションセンター)

講師:門馬 博(杏林大学 保健学部)
 Beyond Medical & Care:社会が求める理学療法士の新しい姿と教育の役割

 現在、理学療法士を取り巻く環境は大きな転換点を迎えている。日本国内の理学療法士養成校の状況をみると、受験倍率の低下、受験生の基礎学力の低下とリメディアル教育の必要性といった話題を避けることができない状況と言える。一方で海外に目を向けると、理学療法士はベストジョブランキングで長年上位に名を連ねる職業である。その背景には高度な専門性、医師の指示を待たずとも理学療法士が患者をみる「ダイレクト・アクセス」や「開業権」といった制度、そして高い給与水準や社会的地位など、日本国内の状況とは大きな違いがあることは否めない。国内の現在の状況は、少子化と養成校数のバランスが一つの要因であることは間違いないが、原因は果たしてそれだけだろうか。若者の視点から理学療法士という職業の魅力に陰りが見え始めてはいないだろうか。時代や社会が大きく変化する中で、医療・介護の現場の仕事という旧来的なイメージに縛られ、将来に向けたキャリアパスの見えにくい職種という印象をもたれていないだろうか。
 急激に変化する社会の中で、理学療法士の仕事、働き方も大きく変化してきている。言い換えれば新たな可能性が大きく広がっており、学校保健における運動器検診の充実や、企業の生産性向上を目的とした「健康経営」への参画など、理学療法士の専門性が求められるフィールドは社会のあらゆる場面へ急速に拡大している。
 また、重要な着眼点として、理学療法士が次世代に「選ばれる職種」となるためには、教育のあり方も進化しなければならない。単なる技術者の育成に留まらず、社会ニーズを敏感に捉え、自らの価値を自律的に展開できる能力を養うことが不可欠である。広い視野をもち、社会のさまざまな部分にアプローチする次世代の理学療法士養成教育という観点から、これからの未来における理学療法士の新たな魅力、可能性を提示していくために、我々一人ひとりがどう変わるべきかを問い直したい。


第8会場 11:00~12:30【1日目 AM2】
カリキュラムコード:98 呼吸障害 点数:1.5
セッションテーマ:日本呼吸理学療法学会
座長:関川 清一(広島大学 大学院医系科学研究科)

講師:玉木 彰(兵庫医科大学)
 「選ばれる職種」への変革:呼吸理学療法が切り拓く専門性と社会実装の未来

理学療法士を取り巻く環境は、供給数の増加や診療報酬の厳格化、そして2040年を見据えた社会構造の変化により、大きな転換期を迎えている。我々が今後も「選ばれる職種」であり続けるためには、専門職としての確固たる技術に加え、その価値を社会へ還元し、多職種や市民に正しく伝える力が必要不可欠である。 本講演では、日本呼吸理学療法学会が取り組んできた広報・啓発活動と人材育成の具体例を通じ、理学療法のさらなる発展に向けた戦略を提示する。広報活動においては、単なる情報発信に留まらず、呼吸理学療法がもたらすアウトカムを「可視化」し、社会的なエビデンスとして提示する工夫について詳述する。また人材育成においては、高度な臨床推論能力をベースに、チーム医療を牽引するマネジメント力やデータ活用能力を備えたハイブリッドな人材の養成が急務である。 呼吸はすべての生命活動の基盤であり、その理学療法は急性期から生活期、予防に至るまで極めて高い汎用性と重要性を持つ。本学会の取り組みをモデルケースとして、理学療法士が社会から真に必要とされる「エッセンシャルな存在」であり続けるための実践的アプローチについて議論したい。

セッションテーマ:日本循環器理学療法学会
座長:寺松 寛明(産業医科大学病院 リハビリテーション部)

講師:花田 智(都城市郡医師会病院 リハビリテーション科)
 「選ばれる理学療法士」となるために ―日本循環器理学療法学会の取り組み―

日本循環器理学療法学会(Japanese Society of Cardiovascular Physical Therapy, JSCVPT)は,2021年に高橋哲也初代理事長の強いリーダーシップのもと歩みを始めました.現在は1500名を超える会員の皆様とともに,「学術活動の深化と支援」「学会の一体化と強化」「社会への実装と貢献」を掲げ,神谷健太郎理事長を中心に循環器理学療法学の進歩を目指し活動しています.
本セッションのテーマは「選ばれる職種」です.皆様はこの言葉にどのような姿をイメージされるでしょうか.その定義は,対象によって変化します.そこで今回は,「理学療法士」「多職種」「地域」から選ばれるJSCVPTという3つの視点を軸に,本学会の活動を紹介します.
循環器分野は,施設基準のハードルの高さから「専門的な一部の人が関わるもの」という印象を持たれがちです.しかし超高齢社会の今,脳血管障害や運動器疾患に循環器疾患を併存する患者さんは増えており,皆様も日々の臨床でその重要性を実感されているのではないでしょうか.
循環器疾患を抱える方が増えている現代,本学会はこれまで以上に皆様に寄り添い,共に発展し,社会に貢献できる団体でありたいと願っています.本セッションを通じて,1人でも多くの方に私たちの活動(キセキ)を知っていただき,循環器理学療法のミライに興味を持っていただければ幸いです.


5月23日(土)午後

講師名をクリックすると、抄録が表示されます。

市民公開講座

第1会場 13:30~14:30【1日目 PM1】
カリキュラムコード:1 プロフェッショナリズム 点数:1
講師:工藤 公康(元福岡ソフトバンクホークス監督)
 選手の未来を見据えて〜障害予防のために私たちが考えること〜

投球動作には“正解”と呼ばれるものはありません。
目の前の選手に対して「必ず 150 キロ投げられる」「絶対にケガをしない投げ方」という指導をできる人がいないように、答えはないのです。
しかし、投球という動作を紐解くことで見えてくる原理や原則、身体の使い方というものは存在します。 医科学の発展により、動作の数値化やデータ化は進んでいますが、それでも現場レベルで“投球”という動作を指導、介入するとなると、指導者やトレーナーが見た“目”で、リスクや改善策を伝えなければならないと私は考えます。対処療法ではなく、選手の未来を見据え、何を伝え、どう向き合っていくのか。この部分はパフォーマンスを高める上でも障害を予防する上でも非常に重要なことだと私は考えます。
時代は変われど、目の前の選手に対する情熱、思いを大切し、その中で学びを深め、見る目を養う。選手や子どもたちに関わる多くの方々と共に、障害予防に関する知見を深めていきたいと思っています。


選ばれる職種になるための最先端シリーズ

第1会場 15:15~16:45【1日目 PM2】
カリキュラムコード:126 ウィメンズヘルス・メンズヘルスにおける理学療法 点数:1.5
セッションテーマ:ウィメンズヘルスの可能性
座長:吉田 遊子(九州栄養福祉大学 リハビリテーション学部 理学療法学科)

講師:漆川 沙弥香(LUTIS)

本セッションでは、理学療法士が担うウィメンズヘルス領域における最新動向と、その可能性について概説する。月経痛や月経前症候群などの月経随伴症状、プレコンセプションケア、産前・産後、骨盤底機能障害、更年期以降の運動器症状など、ライフコースを通じた課題を整理し、理学療法士の立場から実践可能な支援と、その実装ポイントを提示する。加えて、産婦人科外来および周産期病棟での実践例として、思春期外来における思春期女性への支援、出産に向けた身体づくりを目的とした運動指導、ならびに腰痛・骨盤帯痛・尿失禁へのケア、産後の骨盤底筋トレーニングと育児動作指導、更年期以降における尿失禁・骨盤臓器脱へのケア体制など、医師・助産師と連携した包括的支援の取り組みを紹介する。


選ばれる職種であり続けるためのワークショップ

第2会場 13:30~16:45【1日目 PM1】
カリキュラムコード:43 臨床推論 点数:3
セッションテーマ:運動器分野

講師:吉田 大地(医療法人桜十字福岡 花畑病院)

本ワークショップでは,運動器疾患領域における急性期腰椎椎間板ヘルニアの一症例を題材とし,「発生機序」「病態解釈」「治療戦略」の三点について論理的思考を深めることを目的とする.具体的には,画像所見と臨床症状の整合性を解釈し,疼痛の要因を特定していくための評価、および解剖学的根拠に基づく介入プロセスを提示する.ワークショップはディスカッション形式を採用し,提示された限定的な情報から参加者自身が臨床推論を構築する過程を重視する.パネリストによる実践例の提示を通じ,多角的な視点から問題解決を図る思考過程を共有したい.本セッションを通じ,臨床推論能力と知識に基づいた介入を行なっていくことで,「選ばれる専門職」としての問題解決能力の向上を目指す.

講師:田中 創(福岡整形外科病院 リハビリテーション科/臨床研究センター)

本ワークショップでは,運動器疾患領域において生じた「予期せぬ事象」の一例を題材とし,「なぜ起きたのか」「どこで気付けたのか」「何ができたのか」「誰が担うべきだったのか」を多角的に検討する.このような事象は医学的因子のみでは説明できず,機能回復,動作習慣,生活環境,教育内容,行動選択,他職種連携,制度的構造など複数のレイヤーが重なることで生じる.ワークショップでは,参加者に症例の限られた情報を提示した上で,①医学的因子,②機能的因子,③行動・教育因子,④環境因子,⑤制度・連携因子に整理しつつ検討する.特定の正解を提示することを目的とせず,理学療法士としての臨床的思考,意思決定,役割認識,および行動の選択を深めることを目指す.
個別事例を素材とした分析は,理学療法士が “予後をどのように扱い得るか”,そして “誰に選ばれる職種となり得るか” を再考する契機となる.臨床経験の有無や領域に関わらず,参加者が自身の実践に接続できる視点の獲得を目指したい.


選ばれる職種になるためのハンズオンセミナー

第3会場 13:30~16:45【1日目 PM1】
カリキュラムコード:89 徒手理学療法 点数:3
セッションテーマ:理学療法士が行うテーピングの可能性
座長:園田 剛之(麻生リハビリテーション大学校)

講師:小樋 雅隆 (株式会社麻生飯塚病院 リハビリテーション部)

理学療法士を取り巻く医療環境が変化する中、専門職としての価値を明確に示すことがこれまで以上に求められている。臨床においては、経験や感覚に基づく介入に加え、理学療法評価に基づき「なぜその介入を選択したのか」を説明できることが、患者や他職種から選ばれる理学療法士となるための重要な要素である。
テーピングは即時的な身体変化を引き出しやすく、筋機能改善、循環改善、疼痛軽減などの効果があると言われている。一方で、貼付目的や評価指標が不明確なまま使用されることも多く、臨床的有用性や再現性が十分に共有されていない現状がある。
本ハンズオンセミナーは、講義と実技を組み合わせた内容で構成しており、理学療法士が行うテーピングを「評価に基づく介入」として体系的に整理する。講義では、貼付前後で変化を捉える評価指標の選択、即時効果の解釈について解説する。実技では、評価→貼付→再評価の一連の流れを体験し、臨床で再現可能な貼付戦略を共有する。
さらに、得られた臨床データを症例報告や臨床研究へ発展させる視点を提示し、日常臨床の中で専門性を可視化し続けるための思考過程を共有する。福岡の地から、理学療法士が技術と根拠をもって選ばれる存在となるための実践的な学びの場としたい。


選ばれる理学療法士たちの症例発表

第4会場 13:30~15:00【1日目 PM1】
セッションテーマ:内部障害系理学療法学(day1)
座長:池内 智之(霧ヶ丘つだ病院 呼吸リハビリテーションセンター)

①循環 講師:若菜 理(新古賀病院 リハビリテーション科)

「選ばれる理学療法士たちの症例発表 循環」のセッションを担当いたします、若菜理と申します。近年、心疾患をはじめとする循環器疾患の増加により、循環領域における理学療法の重要性はますます高まっています。循環器疾患では、原疾患の理解や病態把握を基盤に、循環動態の変化を踏まえた離床のタイミング、運動療法の進め方、身体活動量の調整など、細やかな臨床推論が求められます。わずかなバイタル変化や症状の違いが介入の可否を左右するため、理学療法士の判断力が患者の回復に直結する領域でもあります。こうした日々の臨床での気づきや工夫を言語化し、他者と共有できる形にまとめる最も身近な学術活動が症例報告です。症例報告は、単なる経験の記録ではなく、理学療法士としての思考過程を整理し、臨床推論の質を高める重要なプロセスです。また、循環領域の症例は個別性が高く、病態の変化も多様であるため、症例報告を通じた知見の蓄積は、臨床の質向上に大きく寄与します。
 本セッションでは、循環領域の症例を通して、評価の視点、治療戦略、運動療法の展開、そして臨床推論のプロセスを共有し、明日からの臨床に活かせる実践的な学びを提供したいと考えています。皆さまの臨床力向上と、循環理学療法の発展につながる時間となれば幸いです。

②呼吸 講師:森 駿一朗(霧ヶ丘つだ病院 リハビリテーションセンター)
  COPD患者に対する外来呼吸リハビリテーション

 慢性呼吸器疾患患者に対する呼吸リハビリテーションでは、長期的な機能変化を定期的に評価し、介入内容を適切に調整していくことが重要である。本発表では、安定期COPD患者に対する外来呼吸リハビリテーションの継続経過を報告し、提示症例を通して呼吸リハビリテーション実施時における評価の視点、問題点の整理およびプログラム立案の考え方について解説する。

【症例提示】
 男性、70歳代後半。BMI=30.8kg/m2。疾患名は慢性閉塞性肺疾患(COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease)で混合性換気障害あり。当院での入院呼吸リハビリテーションプログラムを終了し、在宅酸素療法(HOT:Home Oxygen Therapy)を導入して退院。HOTは経鼻カニューレで安静時1L/分、労作時2L/分。ADLは自立しており、Modified Medical Research Council息切れスケール1度。6分間歩行試験にて歩行距離424m、最低SpO2=87%。呼吸筋力はPImax=43.4cmH2O、PEmax=121.9cmH2O。外来呼吸リハビリテーションを週2-3回利用しながら2年経過。

③代謝 講師:平良 康太郎(株式会社麻生飯塚病院 リハビリテーション科)
  低血糖・高血糖を反復する急性期糖尿病患者への理学療法介入 ~CGMを用いた安全な運動療法とチームアプローチ~

【はじめに】
 2型糖尿病の血糖コントロールには有酸素運動、レジスタンス運動が推奨される。また糖尿病患者が食事や運動、薬物療法といった治療を継続していくためには、多職種によるチーム医療が重要である。
【目的】
 血糖変動が大きい急性期糖尿病患者に対し、持続血糖モニタリング(以下:CGM)データによる血糖可視化と行動変容支援を組み合わせた理学療法介入および多職種連携の実際を、症例を通じて共有することを目的とする。
【症例】
 低血糖体験を契機に運動への不安が強く、活動量低下を認めた急性期糖尿病患者。初回介入時の空腹時血糖は247mg/dl、HbA1cは8%であり、身体機能は比較的保たれていたが、血糖変動への理解不足が運動継続の阻害要因となっていた。
【介入】
 CGMデータを用いて血糖変動を可視化し、運動・食事・薬物療法との関連を多職種で共有した。理学療法士は運動時の血糖変動リスクを説明し、個別化した行動支援ツールを用いた自己管理を促した。
【結果・考察】
 糖変動への理解が深まったことで低血糖への不安が軽減し運動継続に繋がり、最終評価では空腹時血糖125mg/dl、3カ月後のHbA1cは6.7%まで改善。血糖の「見える化」は、理学療法士が患者の行動変容を支えるための一つの有効な手段である可能性が示唆された。


選ばれる職種になるための基礎シリーズ

第5会場 13:30~16:45【1日目 PM1】
カリキュラムコード:77 中枢神経疾患の理学療法 点数:3
セッションテーマ:神経系理学療法
座長:玉利 誠(令和健康科学大学)

講師:水田 直道(日本福祉大学 健康科学部)
 脳卒中リハビリテーションにおける運動制御と神経可塑性 — 理論から臨床応用へ

動作解析などの客観的評価技術は,運動の結果を可視化する上で極めて有用である.一方で,その結果をもたらす原因,すなわちヒト脳内神経メカニズムの推論能力が臨床現場における治療戦略の立案には不可欠である.
本講演では,脳卒中リハビリテーションの根幹をなす運動制御と神経可塑性について,基礎理論から臨床応用までを概説する.特に,皮質脊髄路や網様体脊髄路といった下行性伝導路の機能解剖,および動作遂行の基盤となる予測的姿勢制御(APA)の重要性に焦点を当てる.
さらに,神経可塑性の原理に基づき,代償動作と機能回復の位置付けの整理と実践的視点を提示する.動作解析が現象を定量化するアプローチであるのに対し,本講演では「なぜその代償動作が出現するのか」,「なぜその介入がヒト脳内神経メカニズムを修飾するのか」という定性的な理解に重きを置く.神経科学的根拠を持った臨床推論を深める機会としたい.

講師:大田 瑞穂(令和健康科学大学 リハビリテーション学部 理学療法学科)
 神経系理学療法における動作解析と実践的アプローチ — 評価技術の進化と臨床応用

 神経系理学療法領域の動作分析は長い歴史を有し,とりわけ脳卒中片麻痺者の歩行分析については多くの研究が蓄積されている.病態との関連,歩行パフォーマンスの可否,さらに活動・社会参加との関連まで,運動学・運動力学的パラメータに基づき解釈・予測・判断の手掛かりとなる指標が数多く提示されてきた.しかし一方で,これらの客観指標を「所見の列挙」として当てはめ,ステレオタイプな推論を展開すると,症例の個別性(残存機能,代償戦略,環境条件,目標)とのミスマッチを生じやすく,研究知見の臨床実装を妨げる要因となり得る.
 そこで本講演では,主に脳卒中片麻痺者の歩行解析にフォーカスし,「所見の列挙」ではなく,「病態―運動戦略―制限」をつなぐ個別化した定量的推論の枠組みとして再整理していく.特にモーションキャプチャ(マーカベース/マーカレス)や床反力計,筋電計,慣性センサなどの客観的評価技術を用いて得れる情報から,脳卒中片麻痺者の歩行おける動作特性と介入効果を“見える化”する実践手順を紹介する.近年は簡易かつ低コストな計測手法が普及しつつあることから,測定設計や品質管理,臨床で押さえるべき指標の考え方も共有し,未来志向でありながら現場で再現可能な“見える化”技術の臨床展開を提示したい.


第6会場 13:30~16:45【1日目 PM1】
カリキュラムコード:105 循環器疾患の理学療法 点数:3
セッションテーマ:内部障害理学療法
座長:緒方 孝(社会医療法人雪の聖母会 聖マリア病院 脳卒中循環器病センター)

講師:及川 真人(長崎大学病院 リハビリテーション部)
 呼吸器疾患における内部障害理学療法の最前線 — 急性期から生活期までの呼吸リハビリテーション

呼吸器疾患に対する内部障害理学療法は、単なる呼吸管理の補助ではなく、患者の生活機能を守るための専門的実践である。急性期においては、体位管理や排痰といった肺障害への直接的介入に加え、早期離床を安全かつ段階的に進めることが重要となる。安静による筋力低下や活動制限を最小限に抑え、その後の機能回復へとつなげるためには、活動量や運動耐容能、日常生活動作を継続的に評価し、状態に応じて介入を調整する視点が欠かせない。さらに慢性期・生活期では、身体活動の維持向上と自己管理支援を通じて再増悪や再入院を抑制し、社会参加を支える役割を担う。本講演では、急性期から生活期をつなぐ呼吸リハビリテーションの実践と戦略を整理し、内部障害理学療法の専門性と今後の方向性を提示する。

講師:松沢 良太(兵庫医科大学 リハビリテーション学部)
 腎疾患に対する内部障害理学療法の新展開 — 透析・保存期腎不全患者における運動療法の実践と課題

慢性腎臓病(CKD)は、加齢や生活習慣病を背景に進行し、末期腎不全に至れば透析療法や腎移植といった腎代替療法を要する。わが国の腎代替療法はその大半を透析療法が占めるが、特に高齢患者は、低栄養、慢性炎症、尿毒症、同化抵抗性、透析に伴うアミノ酸喪失、身体不活動など、フレイル・サルコペニアを助長する多標的なリスク因子に曝露されている。これらは生命予後の悪化に直結するため、身体機能の維持・改善に寄与する運動療法は極めて有望な治療戦略である。透析患者や腎移植レシピエントに対する運動療法の重要性は古くから認識されていたものの、方法論の未確立や人員不足、診療報酬上の制約、さらにはその有効性への懐疑心から、臨床現場での普及は長らく停滞していた。その転換点となったのが2007年の「PEAK study」である。透析中の高強度レジスタンス運動による下肢筋力の改善が証明されたことを機に、腎臓リハビリテーションのエビデンスは飛躍的に蓄積された。令和4年度の診療報酬改定では、透析時運動指導等加算が認められたことで、運動療法は透析医療のルーチンケアとして位置づけられつつある。本シリーズでは末期腎不全に焦点を当て、最新のエビデンスに基づく実践経験を共有するとともに、現在直面している構造的・臨床的課題について議論を深めたい。


選ばれる理学療法士たちのキャリアシリーズ

第7会場 13:30~15:00【1日目 PM1】
カリキュラムコード:10 保険外・自費と理学療法 点数:1.5
セッションテーマ:起業した理学療法士
座長:柳 颯(医療法人 宮若整形外科医院)

講師:中田 恭輔(うるおい訪問看護リハビリステーション)

本講演では、「起業した理学療法士」という立場から、専門職として社会に選ばれ続けるためのキャリア形成と組織運営の実践について経験に基づいて報告する。私は2012年に広島大学医学部保健学科理学療法学専攻を卒業、2014年に同大学大学院博士課程前期を修了後、同年にJapan Life Support株式会社を設立した。27歳で訪問看護事業を開設し、制度設計、人材確保、地域連携の構築など多面的課題に直面した。開設初期には管理体制の不安定さから管理者の早期退職を経験するなど、組織基盤の脆弱性を痛感したが、その過程で理念の明確化と信頼関係構築の重要性を学んだ。地域のケアマネジャーや医師との連携強化、紹介・口コミによる信頼の蓄積を通じて事業は拡大し、現在は看護師14名、リハビリテーション職9名を擁する体制へと成長している。本講演では、起業過程における実践的課題と克服の過程を整理し、理学療法士の専門性を社会実装するための視点を提示する。

講師:瀬尾 徹(リハナス株式会社)
 理学療法士の枠を超えたキャリア形成 ~ゼロから3法人150名規模へ至る起業の軌跡~

近年、理学療法士(PT)を取り巻く環境は激変している。給与水準の停滞やリハビリ室内に限定されたキャリア形成の限界が課題となる中、PTの職能を活かした多様な働き方が求められている。本セッションでは、病院勤務の「普通のサラリーマンPT」であった演者が、ゼロから起業し、現在3法人150名の社員を擁する組織を構築するに至ったプロセスを通じ、PTの新たなキャリアの可能性を提示することを目的とする。臨床現場のみでのスキルアップは重要だが、それだけでは「替えのきかない人材」としての希少価値を高めることが困難な現状がある。経営視点の欠如や、専門領域以外への挑戦に対する心理的障壁が、PTの経済的・社会的地位の向上を阻む要因となっている。演者は、訪問看護ステーションの立ち上げを起点に、介護福祉分野を中心とした事業展開を行ってきた。その過程で重要視したのは、PTとしての専門性に加え、「介護福祉分野の中で医療の目を持つ職種である点」や「PTが他専門職の中でリーダーに向く資質の人材が多い点」、また様々な介護福祉事業にリハビリテーションを掛け合わせるという発想である。本講演では、組織規模が拡大する各フェーズでの困難と、それを打破した戦略について、リハナス株式会社の沿革を交えて具体的に詳述する。PTの視点を臨床から経営・地域連携へと広げることで、キャリアの選択肢は無限に広がる。自らの希少価値を高め、社会に必要とされる「選ばれる理学療法士」が増えることが、業界全体の活性化に繋がると確信している。


第7会場 15:15~16:45【1日目 PM2】
カリキュラムコード:154 地域保健 点数:1.5
セッションテーマ:行政で働く理学療法士
座長:吉田 純一(青洲の里訪問リハビリテーション)

講師:炭本 貴大(豊中市はぐくみセンター こども未来部こども支援課)

 地方自治法によると「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」とされており、地方公共団体の最小単位である市町村での行政は、住民にとって最も身近でありつつも、地域全体に影響を及ぼす点に特徴があります。また、行政が担う業務内容は多岐にわたる中で、公立病院や福祉部門等での従事を目的に理学療法士が採用されているものの、厚生労働省による令和5年度末時点の保健所及び市区町村の地域保健事業に関わる常勤職員の配置状況調査によると、理学療法士の配置は増加していません。
 私は理学療法士としての病院勤務を経て、多様な主体と関わりながら地域に貢献することを志向し行政職を選択しましたが、専門職ではなく事務職の試験を受けて採用されています。“理学療法士として”ではなく、理学療法士が“事務職として”働く上での経験を踏まえて、その意義や可能性について参加者の皆様と考えたいと思います。

講師:西田 紋奈(北九州市役所 保健所地域リハビリテーション推進課)

 急速な高齢化と地域包括ケアの進展に伴い、行政で働く理学療法士には、医療・介護の枠を超えて地域全体をデザインする役割が求められている。行政では、個別支援だけでなく、地域包括ケアの構築、地域リハビリテーションの推進、人材育成、ネットワーク形成、制度設計など、住民全体の生活を支える仕組みづくりに携わる点が特徴である。北九州市の取り組みに示されるように、地域リハビリテーション支援センターの運営、協力機関の育成や介護予防事業の推進など、多層的な地域づくりに関わることが行政理学療法士の重要な役割となっている。また、地域や暮らしを良くしたいという意志のもと、地域課題への関心、政策的視点、コミュニケーション力を活かし、課題把握から制度設計、事業評価までを担うことで、専門性を政策へと翻訳する力が求められる。一方で、制度の制約や時間軸の長さなど、行政ならではの壁も存在する。
 人口減少と高齢化が進むこれからの社会において、行政理学療法士は個別支援に留まらない視点とスケールで、地域包括ケアを支える中核としてその重要性をさらに増していくと考える。本講演では、行政理学療法士に期待される役割や必要な視点、キャリアの描き方等について、北九州市の実践を交えて紹介する。


選ばれる理学療法士のための日本理学療法学会連合セッション

第8会場 15:15~16:45【1日目 PM2】
カリキュラムコード:125 コンチネンス領域の理学療法 点数:1.5
セッションテーマ:日本ウィメンズヘルス・メンズヘルス理学療法学会
座長:横井 悠加(城西国際大学 理学療法学科)

講師:井上 倫恵(日本福祉大学)

 ウィメンズヘルス領域の理学療法は、産前産後における健康問題、尿失禁や便失禁、骨盤臓器脱、性機能障害などの骨盤底機能障害、女性アスリートにおけるスポーツ障害・外傷、月経に関わる健康問題、更年期以降の女性における骨粗鬆症、乳がん・婦人科がん術後におけるリンパ浮腫など、その対象は多岐にわたり、女性のライフステージを通じて必要とされる。また、メンズヘルス領域の理学療法は前立腺全摘除術後における尿失禁や骨粗鬆症などが対象となり、ウィメンズヘルスと両輪で発展していくべき領域である。
一般社団法人日本ウィメンズヘルス・メンズヘルス理学療法学会では、体系だった学術事業を通じて臨床・教育・研究で活躍できる人材の育成を行ってきた。また、泌尿器科医師や産婦人科医師らとの多職種連携をより一層進展させるべく、学術大会において関連医学会とのジョイントセッションを企画・開催してきた。「選ばれる理学療法士」の活躍の場を育むためには、臨床において研鑽を重ねることはもちろん、エビデンスを構築し、他職種や関連医学会との丁寧なコミュニケーションを積み重ね、信頼関係を構築することが重要であると考えている。
 当日は、ウィメンズヘルス・メンズヘルス領域における理学療法の現状や今後の展望について、学会としての取り組みもふまえてご紹介したい。「選ばれる理学療法士」を目指して我々が歩むべき道筋を、ともにお考えいただけたら幸いである。


セッションテーマ:日本小児理学療法学会
座長:松﨑 哲治(夫婦石病院 リハビリテーション部)

講師:藪中 良彦(大阪保健医療大学 保健医療学部 リハビリテーション学科)

 少子化と支援ニーズの多様化が進む中、小児分野で「選ばれる理学療法士」に求められる力について考察する。
 本講演では以下の三点を解説する。第一に、子どもの機能向上・維持を図る力である。子どものモチベーションを高めるために子どもがやりたい活動に取り組み、適切なチャレンジ水準で成功できるように課題と環境を調節した中で、子どもが自ら戦略を考え試行錯誤することが重要である。第二に、子どもと家族の生活を理解し、活動・参加の改善を支援する力である。F-wordsやPEDI、ADOC-S等を活用して生活文脈を把握し、こどもと家族と一緒に、COPMを用いて取り組む課題を絞り込み、SMART方式による目標設定とGASによる目標の段階化を行い、ガイドラインを踏まえた介入を実践する。さらにTransdisciplinary team approachを志向し、ホームプログラムも活用する。第三に、家族中心アプローチを基盤としたコーチング能力である。OPC(作業遂行コーチング)を参考に、専門職が解決策を提示するのではなく、子どもと家族が自ら問題解決できる力と自己効力感を高める支援について論じる。


5月24日(日)午前

講師名をクリックすると、抄録が表示されます。

選ばれる職種になるための最先端シリーズ

第1会場 9:00~10:30【2日目 AM1】
カリキュラムコード:155 産業理学療法における理学療法 点数:3
セッションテーマ:産業理学療法の可能性
座長:井元 淳(九州栄養福祉大学 リハビリテーション学部)

講師:松垣 竜太郎(産業医科大学 産業生態科学研究所作業関連疾患予防学)

 近年、理学療法士の活躍の場は従来の医療・介護現場にとどまらず、学校保健や地域保健など多岐にわたり拡大している。その中でも新たな展開として注目されているのが産業保健分野である。働き方の多様化や労働者の高齢化が進行する現代社会において、労働災害の防止と労働者の健康維持増進は喫緊の課題となっており、理学療法士の専門性が産業保健の現場で期待されるようになっている。
 一方で、産業保健分野における理学療法士の活動は歴史が浅く、理学療法士が産業保健現場から求められる職種となるためには、今後解決すべき課題もいくつか存在する。本講演では、産業理学療法の現状を整理するとともに、理学療法士が産業保健分野でその役割を深化させるために何が必要か、そして産業理学療法の可能性についてお話しする。


第1会場 10:45~12:15【2日目 AM2】
カリキュラムコード:22 チーム医療・多職種連携 点数:1.5
セッションテーマ:ワンヘルス
座長:西浦 建蔵(甘木中央病院)

講師:野原 隆士(福岡県議会議員)
 ワンヘルスにおける理学療法士の役割(地球規模の健康・環境・動物福祉の統合的レジリエンスの構築)
 ワンヘルス(One Health)とは
「人の健康」「動物の健康」「環境の健全性」を一つの健康と捉え、一体的にまもっていくという考え方です。

「理学療法士」と「ワンヘルス」
理学療法士とワンヘルス、関連が無いように思いがちですが、従来の個別の解剖学的・生理学的な機能回復に限定される「運動の専門家」から、環境の変化に適応し、地球規模の健康課題に対してレジリエンスを発揮する「持続可能な健康の調律者」へと、その専門性が拡張されています。
理学療法士とワンヘルスの関係を紐解く上で、まず理解すべきは、人間の移動能力や身体機能が、常に周囲の生態系や動物との相互作用、そして気候条件という「環境因子」に規定されているという事実です。
・人獣共通感染症と理学療法の役割
・気候変動と理学療法:適応、緩和、そして社会的責任
・医療のカーボンフットプリントと理学療法の持続可能性
・動物介在介入(AAI):人間と動物の絆を通じた健康の共創
・災害マネジメントにおけるワンヘルスと理学療法士   等
について解説します。


選ばれる職種であり続けるためのワークショップ

第2会場 9:00~16:30【2日目 AM1】
カリキュラムコード:47 統計学 点数:6 
※本講義は終日受講により、6点の単位を取得となります。
セッションテーマ:理学療法士のための臨床研究はじめの一歩
ファシリテーター:白土 健吾、田中 拓樹、尾﨑 圭一、横手 翼、永富 祐太、山内 康太、寺松 寛明

講師:紙谷 司(京都大学医学部附属病院 臨床研究教育 研修部)

臨床研究はリサーチクエスチョン(RQ)を作成することから始まります。どんなに素晴らしいアイデアであってもそれを臨床研究という科学的な枠組みに落とし込めなければRQとしての価値はありません。ただPECOにすれば良いという単純作業ではないのです。皆さんの頭の中にあるアイデアや解決したい疑問、そしてその背後にある皆さんの臨床家、研究者としての想いを具体的に可視化し、誰にでも伝わるようにしなければなりません。今回のワークショップでは以下のプロセスについて演習を行い、臨床研究の正しいスタートの仕方を身につけて頂きます。

【1. RQの整理整頓】
クリニカルクエスチョンを臨床研究で検証できるようにするために疑問の構造を整えます。
【2. 先人に学ぶ】
先人たちがすでに解明したことに対して今回のRQから何が新しく得られるのか、そのRQになぜ取り組む必要があるのか、つまり新規性を明確にします。
【3. 疑問のモデル化】
要因とアウトカムの関係に背後にどのような仮説があるのかを図示化することで、RQに込められた想いを可視化します。
【4. 測定のデザイン】
一つ一つの言葉(概念)を定義づけ、どのような変数(データ)として測定する必要があるかをデザインします。

そして、臨床研究において重要なことは一人で黙々と考えるのではなく、仲間と一緒に取り組むことです。いろいろな意見を出し合い議論することがRQをブラッシュアップするための最も効果的な手段です。今回はグループワークを通じて、その楽しさと奥深さを実感して頂きたいと思います。


選ばれる職種になるためのハンズオンセミナー

第3会場 9:00~12:15【2日目 AM1】
カリキュラムコード:96 疼痛に対する理学療法 点数:3
セッションテーマ:理学療法士が行う腰痛予防と治療の可能性
座長:真鍋 匠(福岡リハ西都クリニックスポーツ・整形外科 リハビリテーション部)

講師:多々良 大輔(switch physio)
 理学療法士が行う腰痛予防と治療の可能性

腰痛診療において、若手理学療法士が直面する最大の壁は、評価データから「真の問題点」を絞り込めず、介入が画一化することにある。特に強い痛みを経験した患者は、再発への恐怖から活動を制限し、それが更なる機能低下を招く悪循環に陥りやすい。本セミナーでは、臨床推論に基づき「仮説・介入・検証」の手続きの紹介によって腰痛の解像度を高めるとともに、「動ける自信」を付与し、再発を防ぐ予防的アプローチを提示することを目的とする。
まず、問診や動作観察から疼痛発生部位やバイオメカニクス的要因を推定する「フレームワーク」を提示する。その上で、介入そのものを最大の評価指標(検査)と捉える「治療的検査」としてハンズオンを行う。具体的には、特定の運動方向への誘導や徒手的な組織滑走性の改善を短時間試行し、即時の症状変化を導き出すことで、「その場で痛み(恐怖感)が変わる」という成功体験を、患者の再発に対する恐怖心を解消するためのセルフエクササイズの実践に繋げ、「自己効力感の向上」へと昇華させるプロセスを実践する。
本学会のテーマでもある「選ばれる職種」に必要なのは、単なる徒手技術ではなく、患者の心理的障壁を取り除き、再発への不安を「動ける自信」へと変える専門性である。
3時間の演習を通じ、迷いのある介入を「根拠のある選択」へと変え、治療から予防までを一貫してマネジメントできる技術と視点を提供したい。


選ばれる理学療法士たちの症例発表

第4会場 9:00~10:30【2日目 AM1】
セッションテーマ:神経系理学療法学(day2)
座長:久保田 勝徳(医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院)

①脳卒中   講師:今井 陽平(博愛会病院 リハビリテーション部)
  先天性の両足部変形や高度肥満をともなう脳出血後右片麻痺患者

【症例紹介】
30代男性で身長178cm,体重108kg .先天性の両内反尖凹足を有し,発症前ADLは自立.歩行は杖や装具を用いず連続2km程度可能であった.勤務中に左被殻出血を発症し19病日に当院回復期病棟へ入院.
【経過】
当院入院時のBRS(右)はⅠ-Ⅰ-Ⅱ,足関節の関節可動域は背屈右−20°/左0°,外返し右−20°/左0°,FACTは9点で,軽度の運動性失語を認めた.起居動作は1人介助,起立移乗は2人介助であった.重度右片麻痺や足部の疼痛のため麻痺側での荷重・支持困難で,両足部変形に対応した踵の補高や内側アーチサポートなどの修正を加えた半長靴を用いて右長下肢装具と左靴型装具を作製した.装具によって立位の安定,疼痛改善および介助負担の軽減を認め,起立やステップ,歩行など抗重力位での訓練の反復が可能となった.歩行補助具は松葉杖やロフストランド杖を用いた.65病日には右下肢BRS:Ⅳと改善を認め短下肢装具での歩行訓練が可能となり,154病日には松葉杖と右短下肢装具,左靴型装具での屋内歩行が自立した.階段昇降と入浴以外のADLが自立し,独居へ向けた生活訓練継続のため198病日に障害者支援施設へ入所した.
【考察】
足部の変形には靴型装具による立位の安定を,重度右片麻痺や高度肥満に対しては長下肢装具による下肢の支持と介助量軽減を得たことで,入院時は困難であった立位での積極的な介入が可能となり,歩行の獲得につながったと考えられる.

②神経筋疾患 講師:今村 純平(医療法人かぶとやま会 久留米リハビリテーション病院)

技能には型がある。理学療法にも型があり、症例報告にも型がある。
理学療法を実施する上での型は「ICF」をお勧めする。「健康状態」を把握することは疾病を知ることでありリスク管理と言える。疾病により生じる「心身機能・身体構造」の改善に理学療法士が介入することは多い。その結果として動作の改善を支えているが、これをゴールとしてしまうと物足りない。「活動(≒ADL、IADL)」、できれば「参加(≒役割を持った活動、他者を意識した活動)」で成果を出すことを見据えた介入が必要である。そのためには、「環境因子(人的、物的、制度的)」や「個人因子(性格、経験、価値観など)」への積極的な介入が大切になる。ICFを見据えて介入することは全人的な視点と言える。
症例報告にも型がある。第1の型は「PICO」である。どのような対象者(P)に、どのようなことを実施(I)したら、何(いつ)と比べて(C)、どのような成果(O)が出たのか?を明らかにすることが大切である。第2の型は「見出し」である。【はじめに】【対象】【方法(介入)】【結果】【考察】の流れは一般的である。第3の型は「伏線と回収(フリとオチ)」である。前述の見出しのそれぞれには「伏線と回収(フリとオチ)」の関係がある。
型を習得し、対象者の個別性に応じて型を破る。それが「選ばれる理学療法士」への第一歩かもしれない。

③脊髄障害  講師:將基面 恵介(一般社団法人巨樹の会 下関リハビリテーション病院)
  回復期リハビリテーション病院における高齢脊髄疾患患者の「歩けない」をどう突破するか

下関リハビリテーション病院は165床の回復期病院であり、脊椎・脊髄疾患患者を多数受け入れている。小川院長のもと脊損チームを組織し、専門的リハを継続している。一方で、当院の対象は高齢者が多く、既存疾患の重複、易疲労性、意欲低下、疼痛などが訓練量およびリハビリ様式を制限し、機能回復の阻害因子となることが少なくない。今回、これらの臨床課題を背景に、診断補助評価およびリハビリ戦略の観点から示唆に富む症例を提示する。症例1は腰部脊柱管狭窄症術後に歩行障害が進行したが、頚椎MRI所見は軽微で上肢症状に乏しく、責任病変の同定に難渋した。理学療法士がISNCSCIに基づく神経学的評価を実施し、C8–T1領域の運動・感覚障害を定量的に検出した結果、頚胸椎移行部脊髄症の診断につながり、除圧術および集中的リハによって歩行改善に至った。症例2は高齢脊髄疾患2例(易疲労性の強い頚髄損傷例、重度深部感覚障害を呈した胸髄症例)であり、標準的リハを継続しても離床拒否や立位恐怖心により立位・歩行訓練が停滞し、歩行自立および自宅復帰が困難となる可能性があった。座位でのVR治療を追加し、難易度を段階的に調整した結果、バランスおよび歩行能力が改善し自宅復帰に至った。高齢脊髄疾患では症状の重複とリハビリ制約が診断・治療を複雑化させる。理学療法士として迷いながらも、患者のdemand実現に向けた最適解を模索し続けている。本報告が参加者の一助となれば幸いである。


第4会場 10:45~12:15【2日目 AM2】
セッションテーマ:運動器障害系理学療法学(day2)
座長:吉田 大地(医療法人福岡桜十字 花畑病院)

①運動器  講師:松田 俊之(長崎労災病院 中央リハビリテーション部)
  急性期多発外傷症例における理学療法介入の優先順位設計

 多発外傷症例では,複数損傷部位の疼痛や安静度制限が併存し,理学療法の選択および介入優先順位の判断が困難となる.本症例は高さ5mからの転落により腰椎破裂骨折,左脛骨高原骨折(Schatzker分類Ⅳ),左踵骨骨折を受傷し血胸を合併した.全身管理と疼痛コントロールに加え,体幹・膝関節の運動制限,患側免荷など複数の安静度制限が存在し,離床開始にも難渋した.
 単独外傷であれば,損傷部位に対し可動域改善や安定性獲得,筋力強化を段階的に進め,機能回復を図ることが可能である.しかし本症例では,複数部位の制限が重なり,代償動作戦略の構築が困難であった.そこで免荷期には,制限下でも実施可能な膝周囲軟部組織の滑走改善,足関節可動域練習,体幹深部筋の収縮練習を主軸とし,局所機能と全身協調性の維持を図りつつ荷重再開に備えた.術後4週より段階的荷重へ移行し,膝関節へのアプローチに加え,下肢・体幹の力学的連動性の再構築から,立位活動時のアライメント修正と荷重線の最適化を図った.その結果,膝・足関節機能の改善に加え,荷重位での動作安定性が向上し,復職を見据えた歩行・階段昇降・しゃがみ動作の獲得に至った.
 本症例を通して,多発外傷により疼痛や安静度制限が重複する状況下では,局所改善の積み上げではなく,全身統合を前提とした介入優先順位の再設計という視点が,機能再建および社会復帰を促進する可能性が示唆された.

②スポーツ 講師:鎌田 愛莉(医療法人HMC 博多メディカルクリニック)
  競技特性が介入戦略に及ぼす影響 ― 陸上競技3症例の比較検討 ―

本発表の目的は、スポーツ障害に対する理学療法において、競技特性を踏まえた評価および介入戦略の実際を提示することである。対象は陸上選手の複数症例とした。スポーツ障害においては、局所症状の改善のみでは競技復帰後のパフォーマンス発揮や再発予防が十分とは言えない。
本症例では、疼痛や可動域制限といった局所所見に加え、競技特有の動作特性を整理し、復帰基準を明確化した上で包括的評価を行った。さらに、動作分析および再発リスクを踏まえた臨床推論に基づき、段階的負荷設定とリコンディショニングを展開した。その結果、全症例において競技復帰を達成し、パフォーマンス改善も認められた。
競技特性を軸とした理学療法の展開が、スポーツパフォーマンスまでを見据えた包括的アプローチにつながると考える。

③徒手   講師:佐藤 光倫(株式会社麻生飯塚病院 リハビリテーション部)
  ALS-THA術後急性期に歩行時腰痛を呈した1症例 ー評価的治療としての徒手理学療法と臨床思考の整理ー

徒手理学療法は「手を用いた治療」という印象が先行しやすいが,本質は臨床思考(clinical reasoning)を基盤とし,病態を整理したうえで治療戦略を構築する理学療法的アプローチである.本講演では,ALS-THA術後急性期に歩行移行期の腰痛を呈した1症例を通して,徒手理学療法に至る思考過程を整理する.症例は術後急性期であり,股関節伸展の直接的な可動域改善が困難な状況にあり,伸展制限に伴う腰部代償が病態として想定された.腰痛の要因として椎間関節性および筋・筋膜性を仮説立て,徒手介入を評価的治療として実践しながら病態を検証した.その結果,股関節前方軟部組織の柔軟性低下が伸展制限に関与し,腰痛の増悪因子であると推察した.急性期において安全に介入し得る部位と判断しAIIS fat padを標的とした前方軟部組織へ徒手介入したところ,歩行時腰痛(疼痛NRS)は3/10から0/10へ改善し,評価的治療により病態仮説の妥当性が高まった.本講演では,症例を通して「病態が整理されれば介入は自ずと定まる」という視点と,徒手理学療法を実践するための思考の枠組みを共有し,前期・後期研修中の理学療法士にとって一助となれば幸いである.


選ばれる職種になるための基礎シリーズ

第5会場 9:00~12:15【2日目 AM1】
カリキュラムコード:50 基本的な理学療法治療技術 点数:3
セッションテーマ:物理療法
座長:光武 翼(佐賀大学医学部附属病院)

講師:生野 公貴(西大和リハビリテーション病院)
 物理療法の基礎理論とエビデンス — 安全で効果的な臨床応用のために —

講演では、2015〜2025年の系統的レビューや主要ガイドラインを統合し、理学療法でよく用いられる代表的な物理療法モダリティ(温熱・寒冷療法、経皮的電気神経刺激〔TENS〕、神経筋電気刺激〔NMES〕、超音波療法、振動刺激、低出力レーザー療法〔LLLT〕など)の作用機序、エビデンス、臨床応用、安全性を疾患・障害・症状別に体系的に概説する。近年、物理療法はその役割が受動的な介入にとどまらず、神経生理学的・生物物理学的根拠に基づく能動的な介入へと再定義されつつある。神経領域では、機能的電気刺激(FES)が補装具としての活用を超え、ヘブ則に基づく中枢神経可塑性の誘導手段として再評価されており、Brain-Computer Interface(BCI)やロボットとの統合による精密リハビリテーションへの展開が進んでいる。内部障害領域では、NMESが心不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、ICU関連筋力低下(ICU-AW)に対して運動耐容能や呼吸機能を改善する代替的アプローチとして確立されつつあり、全身振動刺激による動脈スティフネス改善も注目される。運動器領域では、人工膝関節全置換術(TKA)後の関節原性筋抑制(AMI)に対するNMESの早期介入に加え、拡散型圧力波やLLLTを用いた早期鎮痛と運動療法の併用が注目されている。さらに、多様な疾患・病態に対する物理療法の臨床意思決定、パラメータ設計の要点、安全性の確認、および施設運用の標準化についても概説する。

講師:中原 寿志(医療法人魁成会 宮永病院 リハビリテーション室)
 「物理療法の臨床実践 — 疼痛・筋機能・循環改善への応用と課題」

本講演では、物理療法の基礎理論と科学的根拠を踏まえ、日常臨床で遭遇する具体的症例を通して、物理療法をどのように評価・選択し、運動療法へ接続しているかを提示する。脳卒中症例に対しては、NMESおよびFESを用いた麻痺筋促通や運動療法との併用による運動学習の促進、さらにショックウェーブ療法を痙縮抑制目的で応用した実践例を紹介する。関節可動域制限を呈する症例に対しては、組織伸張性向上を目的とした超音波療法の活用と、その作用機序を踏まえた介入戦略を解説する。また、筋力低下症例に対する電気刺激併用下での筋力増強の工夫や、疼痛抑制を起点とした運動療法の組み立てについても呈示する。重要なのは、単に物理的刺激を加えることではなく、「何のために行い、その後の何をどう変化させるか」という視点である。各モダリティの適応判断、パラメータ設定、安全管理を含め、効果を説明し修正できる理学療法士こそ臨床で“選ばれる”存在である。本講演では、物理療法を“能動的治療へつなぐ起点”とするための臨床推論と実践上の要点を共有する。


第6会場 9:00~12:15【2日目 AM1】
カリキュラムコード:159 スタッフ教育と教育システム 点数:3
セッションテーマ:理学療法管理・教育
座長:野中 嘉代子(令和健康科学大学 リハビリテーション学部 理学療法学科)

講師:都留 貴志(地方独立行政法人市立吹田市民病院 リハビリテーション科)
 次世代を育てる理学療法士教育 — 臨床教育から人材育成・キャリア形成まで

 本講演では、理学療法士教育の構造的課題を再考し、臨床教育から人材育成・キャリア形成までを一貫して捉える視点を提示する。学生・新人の成長不足は、個人の能力や意欲の問題ではなく、教育スキルや教育システムの未整備に起因する可能性が高い。とりわけ、評価と治療を統合する臨床推論や判断に至る思考過程が十分に言語化・可視化されていないことが、本質的課題である。
 臨床教育においては、明確な目標設定、タイムリーで建設的なフィードバック、省察の促進を基盤とし、見学・模倣・実施の段階的アプローチを意図的に設計することが重要である。また、「任せる・支える・止める」という関与の調整を通じて、学習者の成長と患者安全を両立させる教育システムが求められる。さらに、教育を個人の善意や経験に委ねるのではなく、段階的教育プログラムやクリニカルラダーに基づく組織的育成体制を構築することが不可欠である。次世代を育てる教育こそが、理学療法の質の向上と持続的発展に繋がることを提案する。

講師:松田 徹(亀田リハビリテーション病院)
 理学療法部門のマネジメントとチーム運営 — 組織力を高めるための実践と課題

 医療を取り巻く環境が高度化・複雑化する中、理学療法部門には、専門的知識や技術に加え、患者、他職種、組織から信頼され、「選ばれる存在」として価値を発揮することが求められている。本講演では、「選ばれる」という状態を、的を見極め、矢を磨き、それを射続けるというメタファーで整理し、日々の臨床や業務の中で若手理学療法士が意識すべき視点を、マネジメントの立場から示す。
 「選ばれる」とは、単に成果を上げることではなく、「この人に任せたい」「このチームと働きたい」と判断される状態である。そのためには、患者や他職種、組織が何を期待しているのか、すなわち「的の中心」を的確に捉える力が欠かせない。さらに、その期待に応え続けるためには、個人の努力に依存(属人化)するのではなく、組織として成果を生み出す仕組み(標準化)を理解し、活用するマネジメントの視点が重要となる。
 本講演では、管理業務、チームビルディング、他職種連携、スタッフ育成といった理学療法部門の実践を通して、若手理学療法士が自身の成長と組織成果を結びつけて捉える視点を提示する。あわせて、当院における部門運営の取り組みを紹介しながら、組織力を高めるための具体的方策と課題を検討し、理学療法部門のマネジメントとチーム運営の本質について考察する。


選ばれる理学療法士たちのキャリアシリーズ

第7会場 9:00~12:15【2日目 AM1】
カリキュラムコード:20 医療マネジメント 点数:3
セッションテーマ:病院や施設のトップで働く理学療法士たちの座談会
座長:善明 雄太(医療法人共仁会 福岡脊椎クリニック)

講師:井本 俊之(飯塚病院 リハビリテーション部)
 病院組織における理学療法士の役割と歩み――創立107年の歴史を紡ぎ、「日本一のまごころ病院」を目指して――

飯塚病院は創設者・麻生太吉氏の「群民のために良医を招き、治療投薬の万全を図らんとする」という精神を今も脈々と受け継ぎ、創立107年を迎えました。私たちは現在、このミッションに基づき「日本一のまごころ病院」というビジョンの具現化に邁進しております。
私が1988年に入職した当時、リハビリテーション部門は理学療法士5名を含むわずか10名の小規模な組織で、外来診療が中心でした。しかし、2000年の介護保険制度施行を機に、当院のリハビリテーション部は「入院中心」へと大きな転換期を迎えます。2003年には多職種(OT・ST)の雇用による総合リハビリテーション施設の承認を受け、翌年には維持期外来リハを終結。さらに2015年には、急性期365日リハビリテーション体制を確立するに至りました。
本稿では、病院組織の中でリハビリテーション部が果たしてきた役割について、「健全経営」「人材育成」「改善」という3本の柱を軸に、私たちがどのように病院の理想を形にしてきたのかをご紹介させていただきます。

講師:北野 晃祐(村上華林堂病院)

私は、現在、病院を中心に法人経営を司る役職を担っているが、業務に取り組む上で、やはり根幹に理学療法士として培った知識や経験がある。ターニングポイントは複数あるが、振り返ると新人時代、3年目、6年目に忘れられない出会いとともに訪れている。新人時代に当時の上司から学んだ理学療法士の生産性を含めた診療報酬制度は、管理職を担う上で必須の知識であり、現職においても、収入や支出を管理する上で大きな礎となっている。3年目の頃、学習意欲が不足する私が担当していた患者から繰り返し頂いた感謝の言葉は、それまで漠然と聞き流していた学習や研鑽の必要性を落とし込み、理学療法士としての私の在り方を大きく変えた。6年目に縁あって村上華林堂病院に再入職したタイミングで、現在の理事長である菊池仁志先生と出会い、大学院でのテーマとなる神経難病の理学療法に興味を持った。大学院への進学は、研究手法を学べたのに加え、私の1番の財産である指導教官や同期、そして学術集会等で全国の仲間たちと出会うきっかけとなっている。理学療法士の仕事は、患者や家族、他職種、上司、同僚、業者など人と関わる機会が多い。私のキャリアは、理学療法士として、多くの方々とのコミュニケーションを経て成長させていただいた延長であることは間違いない。

講師:諌武 稔(社会医療法人青洲会 法人本部人事部)

日本は2040年を見据え、健康寿命の延伸や医療・福祉改革など、誰もが長く元気に活躍できる社会の実現に向けた取り組みを進めている。私たちを取り巻く環境も日々めまぐるしく変化しており、それに伴い、理学療法士の活躍の場は、予防・病院・在宅分野にとどまらず、多方面へと広がっている。理学療法士に求められる期待も、ますます高まっている。
私自身のキャリアは病院勤務からスタートしたが、現在の役割を振り返ると、キャリアの転換期ごとに、その時々で必要とされる能力や経験、果たすべき役割があったと感じている。理学療法士のキャリアの選択肢は以前と比べて広がっている一方で、将来像が描きにくい時代でもある。だからこそ、多様な経験や考え方に触れながら、自身なりのキャリアを構築していく視点が重要となっている。
本座談会では、これからの理学療法士が未来を見据えたキャリアパスを考え、自身の価値を高めていくために何が必要か、また何が求められているのかについて、参加者の皆様とともに考える機会としたい。


選ばれる理学療法士のための日本理学療法学会連合セッション

第8会場 9:00~10:30【2日目 AM1】
カリキュラムコード:85 関節可動域障害 点数:1.5
セッションテーマ:日本運動器理学療法学会
座長:田中 創(福岡整形外科病院 リハビリテーション科/臨床研究センター)

講師:対馬 栄輝(弘前大学大学院 保健学研究科 総合リハビリテーション科学領域)

 エビデンスを当てはめて対象の治療を決定するならば,そのエビデンスに当てはまらない対象は犠牲を払うことになる.Webの活用によって,高いレベルのエビデンス,診療ガイドラインなど多くの情報を得ることが可能になった.容易に入手できる情報を即座に適用してEBM,EBPTというのである.理学療法士は技術専門かつ学術専門職であり,他職種とは異なる面がある.エビデンスは標準であり,その標準を臨床現場に生かせる技術が重要なのである.適応外となる多くの対象を除外して得られたエビデンスを,臨床でそのまま当てはめるわけにはいかない.ここに理学療法士の独自性が必要となる.理学療法士に期待される医療機関内外の活躍は広がっている.多事にわたる活躍は結構だが,理学療法士の根本的立場を意識できているかが疑問である.問題提起ばかりになるが,これから選ばれる理学療法士として,どうしていくのが良いか考えてみたい.

セッションテーマ:日本スポーツ理学療法学会
座長:中村 雅隆(しらにた整形外科クリニック)

講師:相澤 純也(順天堂大学 保健医療学部 理学療法学科)

 一般社団法人日本スポーツ理学療法学会(Japanese Society of Sports Physical Therapy, JSSPT)は、40か国が加盟する国際スポーツ理学療法連盟の構成団体である。スポーツ理学療法学を明記する唯一の日本学術会議・協力学術研究団体およびスポーツ庁Sport in lifeコンソーシアム加盟組織である。2026年1月時点で、JSSPTの会員数は1,618名となり、組織体制は13委員会7部会、評議員48名、理事15名・監事2名となっている。JSSPTは予防、急性期介入、リハビリテーション、パフォーマンス向上を含めた国際コンピテンシーに基づき、エビデンスと他学協会・省庁連携により、国民・社会の健康に寄与するための学術・社会事業を展開している。
 スポーツ領域における理学療法の主なターゲットは運動・スポーツ活動中に生じた外傷・障害や、これらの心身リスク要因である。スポーツを愛する者や職業とする者に不可欠なパフォーマンス維持・向上やスポーツ復帰はスポーツ理学療法士の腕の見せ所である。「求められるスポーツ理学療法士」とは、良い時も悪い時も対象者に寄り添い、結果が出るまで理学療法で支援できるよう、多職種で協働しながら頑張ることができる人かもしれない。本シンポジウムではJSSPTやスポーツ理学療法に関する情報を共有しつつ、「求められるスポーツ理学療法士」について皆様と議論を深めたい。


第8会場 10:45~12:45【2日目 AM2】
カリキュラムコード:107 糖尿病、脂質異常 点数:1.5
セッションテーマ:日本糖尿病理学療法学会
座長:池永 千寿子(製鉄記念八幡病院)

講師:今岡 信介(大分岡病院 リハビリテーション部)
 糖尿病の重症化予防を担う理学療法の現在地と可能性

近年,糖尿病重症化予防は行政施策における重要課題と位置づけられ,医療機能の分化・連携を基盤とした地域包括的管理体制の構築が求められている。2022年および2024年の診療報酬改定では,糖尿病足病変が運動器リハビリテーション料の算定対象病名に追加され,透析時運動指導等加算が新設されるなど,糖尿病理学療法の社会的役割と科学的実証への期待は拡大している。このような社会的背景のもとで「選ばれる理学療法士」となるためには,運動指導にとどまらず,病態生理に立脚した評価と理学療法を科学的根拠に基づいて実践・提示できる専門性が不可欠である。理学療法士は,糖尿病およびその合併症に起因する代謝・運動機能低下に対する介入と行動科学的疾患管理を基盤に血糖・代謝改善ならびに身体活動性・生活機能の向上と重症化抑制に寄与する専門職である。糖尿病足病変においては,局所の創部評価のみにとどまらず,立位および歩行時における全身的アライメントを包括的に評価することが重要である。さらに,足病変部位へ過剰な負荷が集中する力学的メカニズムを分析し,病態生理および運動学的観点からその要因を考察する必要がある。病態理解に基づく実践を積み重ね,エビデンスを臨床へ還元し続ける姿勢の先にこそ,糖尿病領域における「選ばれる理学療法士」の姿がある。本セッションでは,その役割と今後の展望を提示する。

セッションテーマ:日本基礎理学療法学会
座長:猪村 剛史(広島大学大学院 医系科学研究科)

講師:藤澤 宏幸(東北文化学園大学 医療福祉学部)

 日本基礎理学療法学会は二つの源流を有する。一つは1996年発足の「理学療法の医学的基礎研究会」であり、もう一つは1997年日本理学療法士協会学術局専門研究部会に置かれた「基礎理学療法研究部会」である。前者は2011年に日本基礎理学療法学会(JPTF)となり、日本学術会議協力学術研究団体となった。後者は2013年に協会内組織としての日本基礎理学療法学会(JSPTF)となり、法人化の準備が進んだ。そして、2021年にJPTFを母体して二つの団体・組織が統合され、一般社団法人日本基礎理学療法学会が誕生した。これら一連の流れは、2000年以降に大きく前進する養成校の4年制大学化と大学院設置を先取りし、解剖学、生理学、身体運動学等の研究手法を積極的に取り入れ、実践知としての理学療法を科学的裏付けのもとに形式知へと変換する運動そのものであった。
 現在、JPTFでは7つの研究領域(①解剖・組織学、生理学等、②運動学、運動力学等、③神経科学、認知科学等、④運動生理学、⑤理学療法評価学、⑥理工学、⑦基礎から臨床への橋渡し研究)を掲げ、研究者間の意見交換、情報共有の場を提供している。また、他の関連学会と合同委員会を設置し、現代における研究・教育・臨床環境の改善にも取り組んでいる。本講演では、JPTFの取り組みに賛同し、共に活動してくれる方が増えることを期待し、現在の活動を中心に紹介したい。


5月24日(日)午後

講師名をクリックすると、抄録が表示されます。

選ばれる職種になるための最先端シリーズ

第1会場 13:15~14:45【2日目 PM1】
カリキュラムコード:160 コーチング・ファシリテーション 点数:1.5
セッションテーマ:コーチングテクニック
座長:秋 達也(北九州八幡東病院)

講師:江草 典政(島根大学医学部附属病院 リハビリテーション部)
 目標達成・成長を支援するためのコーチングテクニック

リハビリテーション、理学療法において臨床や教育など様々な職務がありますが、その類似点は、なんらかの目標に向かって誰かの行動変容を支援することであることはそう大きな異論はないことと思います。

患者さんが自身の課題に気づき克服する過程、職員が自己の成長を目指して学ぶ過程、そして臨床実習において学生が臨床技術と患者さんへの向き合い方を習得する過程。これら全てのプロセスには「教え育む・学ぶ」という本質的な要素が内在しています。では、こうした成長を促進するために、どのようなアプローチが考えられるでしょうか。

当日は、「問い」の持つ力を会場で実感できる講演構成を予定しています。「人は問いによって生きている」「問いが変わることで行動が変わる」という視点を共有しながら、ご自身の成長に向けた取り組みを、臨床家、教育者、そして学習者当事者など、様々な立場から再確認する機会を提供します。コーチングは、単なる知識の伝達ではなく、相手自身の「気づき」と「行動変容」を促すための強力なツールです。本講演が、皆様の今後の臨床実践や教育活動において、新たな視点や具体的なヒントを提供できることを期待しています。


第1会場 15:00~16:30【2日目 PM2】
カリキュラムコード:19 理学療法政策 点数:1.5
セッションテーマ:マーケティング戦略、医療経済学の必要性
座長:鈴木 裕也(製鉄記念八幡病院 リハビリテーション部)

講師:穴田 周吾(京都芸術大学大学院 コミュニケーションデザイン専攻)
 2040年に向けた持続可能な医療・介護・ヘルスケア提供体制についての可能性を探る~臨床/企業/行政の経験から~

日本は人口減少と生産年齢人口の縮小が進み、医療・介護・ヘルスケア提供体制の持続可能性が強く問われている。

理学療療法士(以下.PT)を取り巻く環境は、2016年厚生労働省医政局にて医療従事者の需給に関する検討会にて当時は過剰供給の可能性等が示唆された。それから10年を経て、診療報酬改定では各ユニットでの早期リハ、病棟への役割の拡大、急性期の土日祝リハ、精神病床での介入、医療介護連携等の様々な変化があった。加えて、新型コロナウイルスを経ての社会変化があり、地域や職場によってはPTが足りない等の当時見え切ってはいなかった課題が顕在化しつつある。

また、医療DXや医療情報の電子化は進んでおり、過去には急性期病院にて導入されたDPCデータが回復期リハ等の各病棟へ提出対象が広がり、さらに外来領域にも拡大し、粒度も細分化されてきている。リハビリテーション分野も同様であり、医療の質指標の設定、大学入試の情報学の導入等、PTに求められるスキルが変わりつつあると言えるのでないか。

演者は町に一つだけの病院と老健で臨床業務に従事した後に、DPC データ分析に特化したコンサルティングファームにて、全国の病院の経営分析や各部門の業務改善に向けた提案を行ってきた。現在は中央省庁で医療DX関連の政策推進の業務に取り組みつつ、大学院にて医療政策を学び直している。一連の経験を通して見えてきた理学療法管理学の各視点を本講演では皆様と共有したい。


選ばれる職種であり続けるためのワークショップ

第2会場 9:00~16:30【2日目 PM1】
カリキュラムコード:47 統計学 点数:6
※本講義は終日受講により、6点の単位を取得となります。
セッションテーマ:理学療法士のための臨床研究はじめの一歩
ファシリテーター:白土 健吾、田中 拓樹、尾﨑 圭一、横手 翼、永富 祐太、山内 康太、寺松 寛明

講師:紙谷 司(京都大学医学部附属病院 臨床研究教育・研修部)

臨床研究はリサーチクエスチョン(RQ)を作成することから始まります。どんなに素晴らしいアイデアであってもそれを臨床研究という科学的な枠組みに落とし込めなければRQとしての価値はありません。ただPECOにすれば良いという単純作業ではないのです。皆さんの頭の中にあるアイデアや解決したい疑問、そしてその背後にある皆さんの臨床家、研究者としての想いを具体的に可視化し、誰にでも伝わるようにしなければなりません。今回のワークショップでは以下のプロセスについて演習を行い、臨床研究の正しいスタートの仕方を身につけて頂きます。

【1. RQの整理整頓】
クリニカルクエスチョンを臨床研究で検証できるようにするために疑問の構造を整えます。
【2. 先人に学ぶ】
先人たちがすでに解明したことに対して今回のRQから何が新しく得られるのか、そのRQになぜ取り組む必要があるのか、つまり新規性を明確にします。
【3. 疑問のモデル化】
要因とアウトカムの関係に背後にどのような仮説があるのかを図示化することで、RQに込められた想いを可視化します。
【4. 測定のデザイン】
一つ一つの言葉(概念)を定義づけ、どのような変数(データ)として測定する必要があるかをデザインします。

そして、臨床研究において重要なことは一人で黙々と考えるのではなく、仲間と一緒に取り組むことです。いろいろな意見を出し合い議論することがRQをブラッシュアップするための最も効果的な手段です。今回はグループワークを通じて、その楽しさと奥深さを実感して頂きたいと思います。


選ばれる職種になるためのハンズオンセミナー

第3会場 13:15~16:30【2日目 PM1】
カリキュラムコード:143 ICT・AIと理学療法 点数:3
セッションテーマ:AIワークショップ
座長:川満 謙太(飯塚病院)

講師:西下 智(リハビリテーション科学総合研究所/関西リハビリテーション病院 リハビリテーション・エンジニア)
 誰一人取り残さないAI活用ワークショップ

生成AIの進歩は、知的作業の構造そのものを再編しつつある。少子高齢化と労働力減少が進み、医療提供体制の持続可能性が問われる日本において、限られた人的資源の中で専門性を最大化する視点が不可欠となっている。一方で、生成AIの活用経験には個人差があり、安全かつ現実的な導入方法が十分共有されているとは言い難い。

理学療法士の業務には、患者と直接向き合い高度な専門的判断が中核となる領域と、専門的判断を内包しつつも、情報整理や資料作成、説明文書作成、企画調整など、構造化や言語化能力の比重が相対的に高い領域がある。さらに、臨床実践を担う立場から組織運営や人材育成を担う立場へと役割が拡張するにつれ、判断そのものだけでなく、判断を支える過程を設計する力が専門職の価値を左右するようになる。

この業務構造と役割変化に着目し、生成AIを専門的判断の代替ではなく、判断に至る過程を支える補助として位置づける。本ワークショップでは、現時点で個人でも活用可能な生成AIを用いた実演と体験的演習を通して、参加者が翌日から実務に応用できる具体的な活用方法の習得を図る。情報整理や構造化、文書作成といった場面に即した活用例を扱い、安全に活用するための基本的な原則と実践の型を共有することで、日々の業務に無理なく取り入れられる形を示し、専門的判断に向き合う時間を広げる契機とする。
※当日はご自身のPCと新規アカウント作成のために使用可能なメールアドレスをご用意ください。

選ばれる理学療法士たちの症例発表

第4会場 13:15~14:45【2日目 PM1】
セッションテーマ:内部障害系理学療法学(day2)
座長:山口 寿(麻生リハビリテーション大学校 理学療法学科)

①循環 講師:杉本 望(産業医科大学病院 リハビリテーション部)

急性心不全患者に対する理学療法では、早期介入の重要性が広く認識される一方で、理学療法士が介入の適応や強度の判断に迷う場面は少なくない。また近年、集団レベルでは早期リハビリテーションの安全性を支持する知見が示されているが、これらは一律の実施を推奨するものではなく、個々の病態や経過に応じた判断を前提とした解釈が求められる。本講演では、急性心不全における理学療法を、介入適応および強度をどのように判断するかという視点から再整理し、高血圧性心不全で急性期にNPPV管理を要した高齢患者の1症例を通じて、急性期から外来期まで一貫した関わりを紹介する。そして、全身状態および循環動態を踏まえた急性期における介入可否および進行度の判断、退院前における評価と準備、外来期における再入院予防を目的とした療養支援の考え方を共有する。
心不全診療ガイドラインおよび近年のエビデンスを裏付けとしつつ、各時期に理学療法士がどのような視点で判断し、選択していくべきかを言語化することで、「選ばれる理学療法士」に求められる実践的思考を提示したい。

②呼吸 講師:川端 直人(株式会社麻生飯塚病院 リハビリテーション部)
 呼吸サルコペニアを呈したCOPD患者に対する外来リハビリテーションと栄養介入の効果:2症例

【はじめに】
呼吸サルコペニアは、呼吸筋力低下と呼吸筋量減少が示唆される病態と定義されている。慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)患者に対する、運動と栄養の複合介入の効果は報告されているが、呼吸サルコペニアに着目した報告は少ない。今回、外来リハビリテーションと栄養介入により呼吸筋力・筋量の向上を認めた、重症度の異なるCOPD患者2症例を報告する。
【症例】
症例1は60歳代男性のGOLD Stage ⅡのCOPD患者、症例2はGOLD Stage IVのCOPD患者で、在宅酸素療法導入中の40歳代男性であった。両症例とも最大呼気流量(PEF)と胸筋指数(PMI)の低下を認め、呼吸サルコペニアと判断した。両症例に対し、週1回60分、全12回の外来リハビリテーションと栄養指導を実施した。
【結果】
症例1、症例2ともにPEF、PMIの改善を認め、呼吸サルコペニアを脱した。また、運動耐用能や身体機能などの臨床指標においても多面的な改善を認めた。
【考察】
呼吸サルコペニアを呈した症例1、症例2が外来リハビリテーションと栄養指導により呼吸サルコペニアを脱し、臨床指標においても多面的に改善した背景を当日発表にて詳しく考察する。

③代謝 講師:池永 千寿子(製鉄記念八幡病院)
 糖尿病ケアにおける理学療法士の役割:運動支援と足病変予防から

運動療法支援と重症化予防に焦点を当てた2症例を通じ、理学療法士が果たし得る役割を検討したい。
症例1:教育入院した70歳2型糖尿病患者にCGMで運動時の血糖変化を可視化し、記録紙を用いて行動変容を促した。退院後は一時的に運動習慣を獲得したが、季節要因などで活動量が低下し血糖悪化を認めた。再度CGMと記録紙を活用し、季節に左右されにくい運動環境を提案した。12か月後には運動習慣と連続した座位時間の減少が定着し血糖も改善した。CGMによる可視化は行動変容支援に有用であり、理学療法士は季節変動など継続阻害因子への対策を準備する必要がある。
症例2:爪白癬と胼胝を入院時に認めた末梢神経障害を有する2型糖尿病患者に対し、足趾筋力と片脚立位を含む身体機能を評価し、筋力低下とバランス不安定性を確認した。足趾把持運動や歩行練習を提案し、看護師による足部観察・爪ケア・保湿のセルフケア教育とともに、胼胝部にはパッドを用いた圧分散も検討した。退院後はアプリで活動量管理と自主訓練を継続し、6か月後には足趾筋力とバランスを含む身体機能が改善し、足部観察も習慣化していた。理学療法士は足病変重症化予防に重要な役割を担う。
本報告では、CGMを用いた運動療法支援と足部機能評価に基づく介入を紹介する。身体機能を評価し、生活に根ざした支援を提供できる理学療法士は、糖尿病患者の行動変容を後押しし、重症化を防ぐアプローチができるかもしれない。


選ばれる職種になるための基礎シリーズ

第5会場 13:15~16:30【2日目 PM1】
カリキュラムコード:49 理学療法の基礎領域 点数:3
セッションテーマ:基礎理学療法
座長:烏山 昌起(南川整形外科病院 リハビリテーション科)

講師:猪村 剛史(広島大学大学院 医系科学研究科)
 理学療法の基礎科学と運動制御の理解

 理学療法は、人の動作や姿勢制御を対象とする実践科学であり、その基盤は運動学・運動力学に基づく身体運動の理解と、神経科学に基づく運動制御の理解によって支えられている。本講演では、関節運動や身体重心、床反力といった力学的視点と、感覚入力から中枢神経系の情報処理、運動出力に至る神経科学的視点の両面から、人の運動をどのように科学的に捉えるかを整理する。とりわけ姿勢制御や歩行を例に、観察される現象の背後にある原理を読み解く意義を共有したい。臨床においては、「なぜその治療を行うのか」を説明できることに加え、運動の原理を深く理解することが評価や介入の選択そのものを変容させ得る。本講演が、若手理学療法士にとって基礎科学の重要性を再確認し、理論と実践を相補的に結び付けながら臨床を深化させる契機となることを目指す。

講師:櫻屋 透真(朝日大学 歯学部 口腔構造機能発育学講座 口腔解剖学分野 解剖学)
 理学療法の基礎となる解剖学的観点について-肉眼解剖学的研究に取り組む立場から

理学療法士の実務における解剖学の重要性は、その程度には多少の差がありながらも、理学療法士が共通して認識するところであろう。解剖学は、単に解剖学用語を提示するものではなく、形態学的研究の成果が体系化された学問分野である。すなわち、解剖学の中心にあるのは動かない「かたち」の事実である。筆者は形態学的研究の取り組みとして、チンパンジーやオランウータン、ニホンザル、ワオキツネザルなどの広範な霊長類種を対象に、下腿の筋と支配神経を解剖して形態を比較することで、進化の過程における筋の形態変化を追究してきた。特に、ヒトで発達し、抗重力筋として歩行や立位に重要な役割を持つヒラメ筋に着目した研究では、霊長類に共通してヒラメ筋は2つの部分の組み合わせからできており、それぞれの部分が独立して変化することで、各種の進化に伴って形態を変化させている可能性を新たに見出した。本講演では、このような研究をはじめとする具体的な事例を交えながら、解剖学的な研究成果がどのように明らかにされるのかを提示し、解剖学の学問的な位置付けや枠組みについて解説する。本講演を通じて、理学療法の基礎となる人体の捉え方について、解剖学的な観点を明確に示すとともに、聴講された方々において解剖学的観点から人体への理解を深める一助としたい。


第6会場 13:15~16:30【2日目 PM1】
カリキュラムコード:7 地域リハビリテーション 点数:3
セッションテーマ:地域理学療法
座長:若菜 理(新古賀病院 リハビリテーション課)

講師:野坂 進之介(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター)
 地域包括ケアにおける理学療法士の役割 — 制度・連携・実践モデルの最前線

高齢者の健康寿命延伸には、身体機能や認知機能の低下リスクを早期に捉え、支援につなげる体制の構築が重要である。本講演では、臨床で抱いた疑問から研究に関わるようになった経緯にも触れながら、地域包括ケアシステムの枠組みを踏まえ、理学療法士が果たす役割について整理する。その上で、現在所属する研究部で取り組んでいる自治体連携による地域支援の実践を中心に紹介する。具体的には、自治体および多職種と連携した地域健診事業を通じた機能評価や、その評価結果に基づく個別フィードバック、継続的なフォローアップ体制の構築について概説する。さらに、ICTを活用した継続的なモニタリングや、VR技術を用いた運転評価などの取り組みにも触れる。本講演を通じて、地域の中で理学療法士に求められる専門性や姿勢について共有し、若手理学療法士が自らの実践や今後の在り方を考える一助となれば幸いである。

講師:松﨑 英章(九州栄養福祉大学 リハビリテーション学部 )
 生活期・地域住民に対する理学療法の展開 — 介護予防からフレイル対策まで

 近年の地域高齢住民を対象とした疫学研究では、フレイル対策と介護予防は「運動(身体活動)、栄養・口腔ケア、社会参加」の3本柱を基本とした介入が効果的であることが示されている。本講演では、それらのエビデンスを地域の介護予防現場での実装へつなぐ視点から、演者が行政と共同で取り組む事例をもとに、理学療法士に求められる役割を整理して紹介する。
 特に身体活動支援については、演者が関わる地域コホートの知見から、運動としての身体活動に限らず、日常生活(家事・仕事等)に含まれる身体活動も含めて「総量」を高めることの重要性が示唆されている。また、連続した実施に限らず、短時間の積み重ねでも介護予防効果が得られる可能性が示された。これらの知見を踏まえ、対象者個々の状況に応じた身体活動計画の設計と、地域の介護予防活動での具体的な実践内容を中心に述べる。


選ばれる理学療法士たちのキャリアシリーズ

第7会場 13:15~16:30【2日目 PM1】
カリキュラムコード:13 国際支援における理学療法 点数:3
セッションテーマ:海外から選ばれた理学療法士たちの座談会
座長:佐々木 圭太(下関看護リハビリテーション学校 理学療法学科)

講師:新貝 和也(霧ヶ丘つだ病院 呼吸リハビリテーションセンター/臨床研究室)

近年,情報やサービスのグローバル化に伴い,海外の情報へアクセスする機会は飛躍的に増加しており,留学への障壁は軽減しつつある.しかしながら,専門職として留学することは依然として狭き門であり,実際に留学を実現した者は限られている.われわれ理学療法士の世界においても,国際活動の活発化に向けた様々な取り組みが進められているが,他国と比較して国際活動の水準は高くないのが現状である.演者は2022年2月より1年間,カナダのトロント大学理学療法学部(Department of Physical Therapy, University of Toronto)に博士研究員として留学する機会をいただいた.今回,理学療法士としての研究留学について,その経緯や渡航の実際,ならびに留学を通じて得られた知見や意義,および自身のキャリア形成について共有する.本講演が,今後留学を志向する理学療法士の方々の一助となれば幸いである.

講師:浦川 純二(長崎県島原病院 リハビリテーション科)
 海外での障がい児シーティング支援と上田法インストラクター活動経験

 本発表では、私が海外で取り組んできた二つの活動について紹介する。第一は、障がい児シーティングに関わる多職種が協働して立ち上げた Asia Seating Assistance Project(ASAP)である。本プロジェクトは日本で培われたシーティング技術を基盤に、東南アジア地域の障がい児の生活の質向上を目指して、技術者育成と技術移転を中心に進めてきた。2011年にタイで支援を開始し、現在まで年2〜3回の訪問を継続している。2016年からはラオスの Lao Friends Hospital for Children への支援も加わり、臨床技術、支援工学、国際協力、理学療法教育を横断する実践的なキャリアが形成されてきた。単なる技術提供にとどまらず、現地医療者が自立して支援を継続できる体制づくりを重視している点が特徴である。
 第二は、上田法治療国際インストラクターとしての教育活動である。2007年に認定を受け、2012〜2018年にはドイツで開催された講習会に講師として参加した。近年は現地主導の開催へ移行しているが、昨年はフランクフルトおよびドレスデンでの講習会に招聘され、新規インストラクター認定を行った。また、2016年以降は韓国で年間3〜6回の講習会に継続的に携わっている。 これらの経験を通じて、日本の理学療法士が持つ専門的知識・技術は国際的にも十分に活かせる一方、アジア地域においてもまだ共有が進んでいない現状が見えてきた。本報告が海外での活動に関心を持つ方々の一助となれば幸いである。

講師:宇戸 友樹(学校法人麻生塾 麻生リハビリテーション大学校)

演者は2021年から2024年3月までの3年間、総合商社に出向し、インドネシアの病院および大学と連携した回復期リハビリテーション導入および理学療法士教育事業に携わった。現地では医療制度や保険運用の違いにより、リハビリテーションの提供体制や継続性が日本とは大きく異なっていた。公的医療保険BPJSの運用では継続的な介入よりも急性期対応を中心とした設計がなされており、また日本の介護保険制度や地域包括ケアシステムのように生活期を支える制度的基盤は十分に整備されていない。その結果、理学療法の提供内容や役割の位置づけにも制度的背景の影響が見られた。
一方で、医療の発展や高齢者人口の増加に伴い、機能回復および生活支援を担う専門職への需要は今後高まる可能性を有している。本発表では、制度の違いを踏まえつつ、海外で活動する中で求められた視点を整理し、理学療法士が国境を越えて選ばれるために必要な要素について議論の一助としたい。


選ばれる理学療法士のための日本理学療法学会連合セッション

第8会場 13:15~14:45【2日目 PM1】
カリキュラムコード:136 咀嚼・摂食・嚥下 点数:1.5
セッションテーマ:日本栄養・嚥下理学療法学会
座長:鈴木 裕也(製鉄記念八幡病院 リハビリテーション部)

講師:内田 学(大阪医療大学医療看護学部理学療法学科設置準備室)

日本栄養・嚥下理学療法学会は、多くの専門学会と専門性を共有しながら、栄養・嚥下・身体機能を横断的に扱う学術団体である。本講演では、脳卒中患者を中心に、嚥下障害と低栄養がADL、自宅退院率、入院期間、機能予後に及ぼす影響を概説し、理学療法士に求められる実践的役割を整理する。とくに、体重変化、口腔機能、身体活動量と機能予後との関連を踏まえ、嚥下を口腔・咽頭機能に限定せず、姿勢・体幹および頚部アライメント、呼吸機能、全身運動機能との相互作用として捉える重要性を示す。さらに、嚥下障害を有する脳卒中患者では、急性期と回復期で関連因子の構造が異なる点に着目し、病期に応じた評価視点と介入戦略の必要性を提示する。加えて、食事場面における姿勢調整や環境設定、姿勢・呼吸介入を含めた具体的実践を紹介し、栄養評価と姿勢介入を統合したアプローチの有用性を示す。日本理学療法学会連合セッションのテーマである「選ばれる理学療法士」となるために、多職種連携の中で理学療法士が主体的に参画すべき視点と行動指針を提案する。

セッションテーマ:日本がん・リンパ浮腫理学療法学会
座長:高倉 保幸(埼玉医科大学 保健医療学部)

講師:吉田 裕一郎(宮崎善仁会病院 リハビリテーション部)

 日本がん・リンパ浮腫理学療法学会は、がん患者の抱える課題に対して、理学療法の視点に立った基礎研究および臨床研究を推進し、がん患者に対する最良の理学療法に必要となる知識・技術の普及と学術的発展に努めることを目的としている。
 2015 年に日本理学療法士協会内の下部組織である「がん理学療法部門」として活動を開始し、2023 年に一般社団法人として学会化した。学術活動としては、年に一度の学術大会の開催、2024年3月には機関誌を創刊し、また昨年9月には、日本学術会議協力学術研究団体として認定を受け、さらに学術活動を推し進める体制を図っているところである。
 がん治療、並びに患者の多様化に対して、より的確で効率的な学会運営が行えるよう、2025年度には学会内組織図を再編、中でも領域別委員会の再編成を行い、これに伴い16の部会を新たに立ち上げた。現在では各部会での事業計画を基に、部会ごとに実態調査や研究などを進めており、より活動が重視される部会においては重点課題研究として、予算を割り当てた活動へと進めていく予定である。この重点課題研究では、すでに全国調査として2つの調査研究を進めている。
 がん患者の治療や、療養生活を支えるうえで、理学療法士への期待は高まっている。「選ばれる職種」として理学療法士がその役割を全うできるよう、当学会は学術活動の推進、セミナー等の事業を通じた支援を今後も継続していく。


第8会場 15:00~16:30【2日目 PM2】
カリキュラムコード:150 予防と保健 点数:1.5
セッションテーマ:日本支援工学理学療法学会
座長:森田 智之(神奈川県総合リハビリテーションセンター 神奈川リハビリテーション病院 理学療法科)

講師:小原 謙一(川崎医療福祉大学 理学療法学科)
 選ばれる「職種」から選ばれる「個人」へ―支援工学理学療法という選択ー

 理学療法士の有資格者数は20万人を超え、「理学療法士だから選ばれる」時代ではなくなりました。では、同じ資格を持つ中で、私たちはどのようにして「個人」として選ばれる存在になればよいのでしょうか。本講演では、その考え方を整理し、私自身の経験を一つの「具体例」として共有します。

 私が常に意識してきた視点は三つあります。第一には、専門性を「掛け算」で設計する視点です。選ばれる個人は「100万人に1人の存在」であるとされていますが、「100人に1人の強みを三つ掛け合わせる」と捉えることです。理学療法士という資格に加え、どの専門性を掛け合わせるかが重要になります。第二には、主戦場を自分で選ぶという視点です。「鶏口となるも牛後となるなかれ」という言葉が示すように、大きな分野で埋もれるのではなく、自らが第一人者を目指せる主戦場を選ぶことです。第三には、価値は「認知度から普及度を引いた差」によって生まれるという視点です。すなわち多くの人が重要性を理解していながら、実践者が少ない領域に着目することです。

 これら三つを満たす領域の一つが「支援工学理学療法」です。本講演では、この領域がなぜ「選ばれる個人」につながるのかを掘り下げ、参加者の皆さんが自身のキャリアを再考するきっかけを提供したいと思います。

セッションテーマ:日本産業理学療法研究会
座長:岩倉 浩司(株式会社地域リハデザイン研究所)

講師:久原 聡志(産業医科大学病院 リハビリテーション部)
 産業保健分野において「選ばれる職種」としての理学療法士:その歩みと未来への展望

 現代社会は、働き方の多様化や急速な高齢化、AI・DXの進展といった変革の渦中にある。こうした時代において、働く人々の健康を守り、能力を最大限に発揮させる「産業保健」の重要性はかつてないほど高まっている。理学療法士の専門性は近年、作業環境の改善や労働災害の予防、健康経営の推進、さらには治療と仕事の両立支援といった場面で、多大な期待を寄せられるようになった。理学療法士が「選ばれる職種」として認識され始めた象徴的な出来事が、2023年策定の「第14次労働災害防止計画」である。同計画では、転倒や腰痛などの労働災害防止対策に「理学療法士等を活用する」という文言が初めて明記された。少子高齢化や労働力不足という課題に対し、理学療法士が労働者の健康保持・増進に貢献できる専門職であることは、社会的な共通認識となりつつある。
 こうした社会的要請に応えるべく、本会は2013年設立の産業理学療法部門を前身とし、2021年より「日本産業理学療法研究会」として活動を展開してきた。これまで、産業保健理学療法の定義作成や国際ネットワークの構築など、専門性の確立に努めてきた経緯がある。本講演では、これまでの歩みと現在の活動、そして未来に向けた展望を皆様と共有したい。
TOP