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変形性関節症は、本邦における主要な慢性疾患の1つで、その治療法として人工関節置換術がある。国内における手術件数は、年々増加傾向である。その中でも人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty: TKA)と人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty: THA)が多く行われている。TKA・THA後のリハビリテーションは、多くの施設でクリニカルパスを運用し、早期離床・早期退院の目標を達成できるように仕組み化されている。しかし、私の経験上、各患者によって手術した関節の状態や動作の特性など多くの違いがあり、一色単な理学療法を行なっても良い結果を得ることが難しいと感じている。例えば、膝関節の関節可動域練習を実施する際に、考えなしで膝関節を動かすのではなく、関節安定性や膝蓋骨可動性、軟部組織の硬さなどの評価を伴いながら動かすことが重要である。多くの患者は、痛みや歩行障害などの改善を期待し、痛みのない人生を送りたいと願い手術を決断する。理学療法士は、その期待に応えられるようにTKA・THA後の理学療法について学ぶべきである。今回の研修会ではTKA・THA後の理学療法について、私自身の臨床経験と過去に報告された研究結果をまとめてお伝えする。
理学療法士にとって、歩行機能の改善は最も重要な目標の一つであり、そのための技術、知識の研鑽はその責務であると考える。しかし、歩行機能の改善を考える場合、どういった状態を「改善」と見做すかについて、一致していない状況にあると感じる時がある。ある理学療法士は「異常な歩容の改善」に注力するのに対して、別の理学療法士は「歩行速度の増加」に焦点を当てている場合もある。このような主要アウトカム評価の不一致や、対象者のデマンドとの乖離は、歩行再建を妨げている可能性がある。 さらに学術的な議論においては、客観的に正確な指標を用いることが重要となる。数値におけるバイアスの少ない三次元歩行分析などを用いるのはこのためである。しかし、臨床的な要求としては、主観的にも適切に評価し、その優先順位を決めなければならない。この状況を考える場合、対象者個人に最適な評価や介入手段はエビデンスだけでは決まらないことになる。このため、本講演では「臨床現場に役立つ」ことに焦点を当てた場合の、歩行分析の考え方について、広範囲の視点から議論を深めてみたい。
近年,生体用計測機器は,目覚ましく発展しており,屋外計測やユーザーのニーズに応じた様々な解析が簡単に行えるようになってきています.本講演では,臨床で実践できる歩行分析の方法について解説します.1) 動作解析ソフト(Kinovea) Kinoveaは,オープンソースのソフトウェアです.動作環境はWindows系PCで動画のフォーマット形式も幅広く対応しています.マーカの自動追跡や,指定したマーカの速度,加速度の表示,さらに関節角度表示なども簡単に行えます.また,ストップウォッチ機能も付いているため動画をコマ送りにしながら時間の測定も行えます.2) 慣性式モーションセンサー(IMUセンサー) 動作分析に使用するIMUセンサーは,小型,軽量,無線,安価なものが多く,3軸方向の加速度に加え,ジャイロ(角速度),地磁気などを内蔵したものがあります.本講演では,「動きの滑らかさ」の評価についてご紹介します.3) 表面筋電図(EMG) EMGは,筋が収縮する際に発生する微弱な活動電位を記録したもので,量的評価としての積分筋電図解析や質的評価としての周波数解析などがあります.本講演では,我々の研究グループが開発した臨床普及型EMGシステムを紹介します.
人口構造の変化に伴う高齢者人口の増加を背景に,内部障害理学療法の対象者も増加しています.理学療法の対象となる疾患には,心臓,肺,腎臓以外にも,消化器の病気などが含まれ,症状も多岐にわたります.加えて,中枢神経疾患や運動器疾患に内部障害に含まれる疾患を合併することも多いことから,主として対象となる疾患以外にも目を向けた理学療法を実施する必要があると考えます.
本講義では,内部障害の制度上の基礎,理学療法の対象となる病態に関する知識としての基礎,理学療法学を支える研究面での基礎など,「内部障害理学療法学の基礎」をいくつかの側面から整理したいと考えています.これらを通じ,技能がつなぐ未来への進歩の土台作りの一助となり,理学療法士としての価値軸を育むことに繋げることができれば幸いです.
日本は世界最高水準の新生児医療を提供しながらも、少子化の中で超・極低出生体重児は一定数出生します。彼らはNICUへの長期入院を余儀なくされ、その後の成長・発達に影響を受ける可能性があります。当院では、NICUに入院中の新生児に対して、早期から積極的な理学療法を実施しています。保育器内でも安全かつ効果的に行える運動療法、呼吸療法、哺乳評価などを通して、発達支援と早期療育に関わっています。さらに、脳性麻痺や発達障害の早期発見・早期療育のためのGeneral Movements評価も積極的に実施しています(GM-Trust基礎評価コース取得)。職域拡大含めた「周産期医療への関わり」は協会誌でも特集され(2020年JPTA NEWS)、特にNICUに関わる理学療法士は、医師や看護師をはじめとする医療チームと連携しながら、超・極低出生体重児の成長・発達をサポートする重要な役割を担っています。私は約14年間、当院NICUに専従的に介入しています。この経験を活かし、実際の臨床場面を中心としたNICUにおける理学療法についての内容を伝え、この分野への理解を深め、今後の実践に役立てていただければ幸いです。私は、理学療法士として選んだこの道が、新生児の未来を支える事ができると信じています。
ここ十余年で集中治療室 (intensive care unit: ICU) の重症患者に対する理学療法士の関わり方は、大きくパラダイムシフトしている。患者の病態が不安定であり、救命率が最も重要なアウトカムであったICUの重症患者は、安静臥床が必要とされていた。しかし、近年の医療技術の進歩により救命率は飛躍的に改善し、ICU退出後の日常生活動作や生活の質が重要視されるようになった今日では、ICUの重症患者も可能な限り早期の離床が推奨される様になった。
本邦では、平成30年度の診療報酬改定において「早期離床・リハビリテーション加算」が新設され、令和5年度からは日本集中治療医学会より集中治療理学療法士制度が開始されている。このように理学療法士のニーズや社会保険制度が変化してきた中で、当初は珍しかったICU専従の理学療法士も時代の流れとともに増加してきている。本講義ではICUにおける専従理学療法士の役割と価値を、今後の展望をふまえて概説する。
運動能力の発達は、受胎から死に至るまでの生涯を通じて人間の発達において重要な役割を果たしており、近年、学術的な注目が高まっている。幼少期の運動習慣が青年期以降の運動習慣に影響を与えるため、予防医療の観点からも運動能力の発達を促し、子どもの健康支援を考えることが重要になっている。 我々は、7年間の子どもの運動能力(走る・投げる・跳ぶ)に関する縦断的調査を実施し、運動発達の多様性と非線形性に関するさまざまな知見を得るとともに、運動発達の未熟さがスポーツ障害につながる可能性を指摘してきた。また一方で、学校保健分野や各スポーツ競技団体での障害予防活動や運動指導を通じて、子どもへ対する効果的な指導方法を模索してきた。エコロジカルアプローチやディファレンシャルトレーニングなどの最新の運動学習理論に加えて、言語発達に基づく認知心理学的アプローチを併用したコンセプトを提唱することで、子どもの基本的運動能力を高め、身体活動量を向上させる方法を提示する。
未来を想像した時に価値がある職業は、社会に貢献できる役割がある。そして職業の将来を担う若者がキャリアデザインや自分の健康を思考することは、当該領域の発展に重要である。
2023年に厚生労働省が策定・公示した第14次労働災害防止計画に理学療法士が初めて明記された。2040年を展望すると労働生産者の減少が予測されており働く人の健康を維持増進する取り組みは、国や企業から非常に高い注目を集めている。
しかし、日本における理学療法士の養成教育や生涯学習制度では産業保健の学習機会がほとんど無く未整備の状態である。
そこで本講演は、社会背景(経済産業省・厚生労働省・スポーツ庁の公表資料ならびに産業保健専門職の学術的知見)、産業保健の基礎知識、多団体と協働した「産業保健を支援する理学療法士の実践例」を解説する。そして横断的な情報を統合して、理学療法士が創造する労働者への健康増進を多角的に考える機会としたい。
今、介護予防・フレイル対策領域におけるセラピストの需要および期待度は高まり続けている。この10年だけみても、介護予防領域で活躍するセラピストは激増しており、その経験値や専門性は飛躍的に上昇した。それに伴い、これまでの「リハビリテーションの知識を地域へ還元」から「リハビリテーション専門職が有する介護予防・フレイル対策の知識を地域へ還元」へとシフトし、セラピストへの期待度も高まっている。このように、社会的に介護予防・フレイル対策のニーズが高まり、特にセラピストへの期待度が上昇している中、セラピストが有しておかなければならない考え方とは何か。本教育講演では、最新の知見や大規模データを紹介しながら、理学療法士が介護予防・フレイル対策で有しておくべき情報を整理したい。
近年、多くの研究が報告されてきている新たな物理療法モダリティに、拡散型ショックウェーブ療法(拡散型体外衝撃波療法)がある。拡散型ショックウェーブ療法は、脳卒中などの中枢神経疾患においては、痙縮や脳卒中後肩関節痛に用いられる。また整形外科疾患においては、足底腱膜炎、変形性膝関節症などの疼痛や関節拘縮などに対して適用される。痙縮に関しては、本邦の脳卒中治療ガイドライン2021(改訂2023)においても掲載され、先進的な痙縮への介入として本邦でも注目されている。また各整形外科疾患においては、多数のシステマティックレビューが実施され、そのエビデンスが示されてきており、今後さらに臨床での活用が期待されるモダリティである。本講義では、拡散型ショックウェーブ療法の基本的知識を整理するとともに、痙縮や整形外科疾患に対するショックウェーブ療法の近年の動向をレビューしつつ、臨床応用について紹介したい。
電気刺激および磁気刺激は,中枢神経疾患や運動器疾患,そして内部疾患など幅広い領域の患者に適用することができる.本手法は,正しい知識と患者の病態を的確に評価することで,理学療法の有用な治療手法の1つとなり得る.
電気刺激は,体表に貼付した電極から運動神経や感覚神経の活動を引き起こすことで,筋収縮だけでなく中枢神経系の活動を変調することが可能である.また,磁気刺激は,コイルに電流を流すことで,コイルから発生する磁場変動により数㎝下に渦電流を生じさせる.この渦電流により神経活動を誘発することで,電気刺激と同様に筋収縮や中枢神経系の活動を変調できる.2つの刺激方法は,両者ともに筋収縮や中枢神経系を賦活できるが異なる特徴を有している.
本講義では,電気刺激と磁気刺激の基礎知識として,それぞれの刺激特性や生理学的作用,臨床効果とその効果機序を提示したうえで,臨床応用に向けた臨床推論過程を共有する。
基礎研究は,真理の探究や基本原理の解明を志向する研究活動に位置づけられます。理学療法の実践にエビデンスは重要ですが,必ずしもエビデンスのみに立脚して臨床的判断を下せるとは限りません。よって,基礎研究によって確立された病態や治療法のメカニズムに沿ってその臨床的判断を補強するとともに,新たなエビデンス確立のための研究につなげる必要があります。一方,基礎研究の実践のためには,論文を読み解き,使用する研究機器の特性を理解した上で,研究対象者の選定や測定方法を考慮する必要があります。さらに,その研究遂行前には、倫理審査が必要です。研究内容によって要求される研究体制や準備,費用等が異なるため,自身の研究の分類を事前に確認する必要があります。本講演では,ヒトを対象とした基礎研究について上記のように論文の読み方を含む情報収集から研究テーマと方法の立案,倫理審査,研究の実施と解析,そして公表に至る一連の手順について,講演者の実践例を交えながら講義を行います。このことにより,参加者が基礎研究成果をどのように臨床場面に還元すべきかを学び,さらに自立して研究計画を立案・遂行するための一助になればと思います。
理学療法領域の基礎研究は運動障害の原因となる疾病、障害のメカニズム、あるいは理学療法がいかに人体に作用するのかを明らかにすることを目的に行われます。しかし、ヒトを対象とした研究には厳しい制約があるため、必要に応じて実験動物を対象とした研究(動物実験)が選択されます。動物実験は正常な動物だけでなく遺伝子改変動物、病態モデル動物など多様なモデルを対象に分子・細胞レベルから個体レベルの研究が可能であるため、臨床研究では迫ることが難しいメカニズムに迫る知見を得ることができる有効な手段です。一方、動物実験は動物に犠牲の上に成立する研究であるため、動物愛護法や各研究機関の動物実験指針に従った上で、動物実験委員会の承認を得て実施されることが必要です。また、動物実験の結果を正しく理解するためには、動物種の違いによる影響や実験手法と、その限界について熟知する必要があります。本講演では実験動物を対象に行う基礎研究の計画立案、実施、その解釈について講演者の実験データなどを用いて解説し、参加者が実験動物を対象とした研究計画の立案・遂行をするための一助となることを目指します。
準備中
高次脳機能障害には、半側空間無視、注意障害、失語症、失認、遂行機能障害などが含まれる。国内における高次脳機能障害を有する脳卒中患者は2015年の調査において50%以上であり、理学療法士が高次脳機能障害を有する症例の担当になることは多い。我々理学療法士が担当することが多い高次脳機能障害には半側空間無視、注意障害、遂行機能障害が挙げられる。
半側空間無視は空間性注意が右に引っ張られることにより、左空間への注意が乏しくなる症状である。半側空間無視を有する脳卒中患者の歩行は異常な経路を示すことがあり、病態を考慮した上で歩行経路を設定する必要がある(Huitema et al. Gait & Posture 2006)。遂行機能障害は脳卒中後の約50%に認められ(Sakai et al. Brain and Behavior 2024)、物事を効率よく遂行する能力が障害される。歩行が可能な対象者においては、遂行機能障害によって歩行能力が低下する症例もいる(Sakai et al. Brain Sciences 2023)。本講演では、理学療法士が関わることが多い半側空間無視、注意障害、遂行機能障害の病態生理とエビデンスを整理した上で、現時点で有効な評価や身体機能との関連について紹介し、病態分析方法や介入方法について紹介する。
呼吸不全は肺実質の障害である肺不全とポンプ機能の障害である換気不全(ポンプ不全)に大別される。Roussosの分類によれば換気不全の原因は中枢性抑制、機械的損失、呼吸筋疲労に集約することができるが、この機械的損失に該当する呼吸筋力の低下、呼吸筋量の減少、筋出力効率の低下、および呼吸筋疲労は、理学療法においてはアプローチすべき機能障害である。呼吸器疾患や神経筋疾患といった疾病では、呼吸筋機能低下は換気の制限因子としてよく理解されているところであるが、近年では疾病によらず呼吸筋力の低下と呼吸筋量の減少の双方が起こった状態として呼吸サルコペニアという新しい虚弱の概念も提案され、呼吸筋機能低下に関する理解の範囲も広がっているといえる。呼吸筋トレーニングを行えば呼吸筋力は確かに増大するが、それを単独で行うことで得られる身体機能の改善についてはエビデンスが乏しく、その適応については注意が必要である。本講では、呼吸筋の特性、呼吸筋機能低下の病態、呼吸筋機能の評価やその改善のためのアプローチについて解説を行う。また新しい概念である呼吸サルコペニアについても取り上げる。
本邦では超高齢化社会を迎え,総人口に占める高齢者割合は29.0%となった.年齢とともに心不全の発生率も上昇し,心不全増悪で入院した患者の平均年齢は78.0±12.5歳と報告され,患者も必然的に高齢者が多くなっている.心不全患者が急増する状況下で,心不全の標準的な理学療法を習得することは理学療法士としても責務になってきている.心不全患者に対する心臓リハビリテーションは心不全の標準治療の一つであり,再入院予防や予後改善,運動耐容能向上,QOLの改善が証明され,その中でも理学療法士の役割は重要である.さらに,患者教育によりヘルスリテラシーを高めることは,予防や健康寿命の延伸につながる.目の前の心不全患者に対して安全で効果的な理学療法を実施するにあたり,心不全の病態に応じた運動療法やリスクマネジメントは重要である.心不全の病態や増悪因子,服薬内容を把握し,小さな変化を見逃さない洞察力,観察力,患者への関心が心不全の理学療法に最も重要が要素であり,症状の悪化の際には理学療法士の適切な対応が必要になる.
本研修では,心不全患者の評価と理学療法実施上の運動療法やリスクマネジメントについて解説する.
日本の労災において、精神疾患への罹患を認定している件数が最も多いのは、医療福祉という業界である。当然の流れとして、労働者としての理学療法士のメンタルヘルスへの関心が高まっている。アメリカでは労働者のメンタルヘルスについての関心は日本よりはるかに高く、アブセンティーズム(メンタルヘルス等の要因により欠勤してしまうこと)、プレゼンティーズム(同様の要因により仕事のパフォーマンスが下がっていること)の予防や対応のため、EAP(Employee Assistance Program)が広く知られており、専門機関と企業が一緒に取り組んでいる。後を追う形ではありつつも、日本でもストレスチェック制度等対策が進んでいるところである。今回、その中でも最も基本的であるセルフケアとラインケアについての知識を共有し、対人援助職である理学療法士自身が健康に働けるような土壌づくりについて話題提供したい。
価値とは、その物事がどのくらい役に立つのかの度合い、値打ちの事であり、価値軸はその価値を判断する唯一無二の基準と言うことができます。 シンポジウムのテーマである「未来に向けた理学療法士の価値軸」とは、「未来に向けた理学療法士がどのくらい役に立つのか、また値打ちがあるのか」を判断する基準。それは、すなわち「理学療法」そのものであると考えます。 それでは「理学療法」とは何か。 その答えとしては、既に公開している「理学療法標準評価」を提唱したいと思います。これは、全世代および疾病・障害・病期に関わらない理学療法士の臨床技能における価値軸と考えます。 また、近年においては今日の理学療法士による理学療法を俯瞰し、「理学療法の核」に関する検討が広く展開されています。その中で「公衆衛生」という概念が新たな価値軸として意見は集約されつつあります。 最後に、本会は公的な理学療法士のみのコミュニティとして、22万5千人の理学療法士の価値軸の主体であることも共有したいと思います。
現代は感染症や生活習慣病など身体がリスク化された時代といえる。過剰な恐怖を煽ることなく、国民の生涯にわたる健康と安寧に貢献できる理学療法学を確立するにはどのような価値軸が必要なのであろうか。研究者はベースとなる個人としての価値軸と科学者としての価値軸の両面に拘束され行動している。個人としては、エーリッヒ・フロムのいうTo be(あること)とTo have(所有すること)、利己的と利他的の二つの価値基準が重要と思われる。一方、研究者としては、科学の宿命である新規性・独創性の追求、すなわち専門分化に関するものと、学問の体系化に関する二つの価値基準があるだろう。そして、理学療法学を成熟した学問とするためには、俯瞰的に見る態度と、専門性の追求のいずれも大切である。さらには、その前提に学問をする者としての哲学・倫理的素養も欠かせないのも事実である。本シンポジウムでは研究者の立場から理学療法士の価値軸について議論したい。
それにしても困難な題目を頂いた。経営に携わる立場から、これまでに感じてきたことを述べる。理学療法士(PT)養成の課程に加え、就業現場での習得事項を鑑みれば、PT が持ち得る能力が国民の健康に寄与できることは自明と言える。その上で取り上げたいのは、その能力を広く、自由に、また自己判断で必要ないと考えている国民に提供できているのかという点である。医療では疾患を抱える患者、介護では後遺障害と加齢変化を抱える方々が対象となり、この方々に対して医師を筆頭とした組織内で、時間的制約や画一環境の中で理学療法を提供する場面が多い。これは合理的な仕組みである一方、ここに未来があるのかと疑問視する声もあり、昨今では自分たちの能力を計る目的もあってコンディショニングセンターを開設する PT もいる。
未来を考える視点は二つ。「今持っている価値を別の顧客に提供する」。もう一つは「今の顧客に別の価値を提供する」というもの。当日は、もちろん前者を深めていきたい
理学療法の対象疾患として脳血管障害や神経難病等は非常に大きな比率を占めており、主として運動機能面に対する理学療法介入が実践されている。これらの代表的な疾患に留まらず運動器疾患においても、嚥下障害や誤嚥性肺炎を合併する事で入院期間を延長させ、在宅復帰率を抑制する因子になる事が報告されている。理学療法士が抱く摂食嚥下障害のイメージは、口腔顔面に限局した機能障害と捉えている印象を持つが、身体運動機能や姿勢調節、呼吸機能にも影響される多様な運動障害であることを理解すべきである。この領域は、専門の歯科医師、医師、歯科衛生士や言語聴覚士、看護師などが主軸となる診療体制であるが、全身の運動機能面を熟知している理学療法士が参画することで更なる効果が期待されるものと期待している。本講演では、第一線で活躍されている歯科医師を招き、現状の診療体制に加えて理学療法士が協働すべき具体的な役割について解説する。
本邦は2007年に超高齢社会に突入し、高齢化率は上昇を続けている。高齢化はとどまるところなく進んでいき、2060年には人口の約40%が65歳以上となるという推計がなされている。肺炎は老人の友という言葉が示す通り、高齢者にとって肺炎は非常に身近な問題であり、現在の日本人の死因の第6位は誤嚥性肺炎となっている。嚥下機能の低下による食物や唾液の誤嚥に伴って誤嚥性肺炎が発症されることは周知のとおりだが、嚥下機能、つまり食事という日常生活を送るうえでなくてはならない機能の低下に伴った疾患であるという特殊性がある。誤嚥性肺炎の治療や予防には、医科的な管理に加え、理学療法、作業療法、言語療法等のリハビリテーション的な視点や介護的な視点など様々な方面からのアプローチが必要となる。歯科は口腔の整備、並びに嚥下機能の評価者として嚥下障害に関わることが多いが、実際にリハ職とともに患者の診療に当たる機会は少ない。とりわけ理学療法士との連携を行う機会は限られているのが現状である。今回は嚥下障害患者を支えるという観点から理学療法士と歯科医師との連携について述べていきたい。
私は理学療法士として外来の整形外科に勤務しながら、非常勤で歯科医院に勤務し顎関節症を中心に歯科医と連携し理学療法を提供している。※当日は実際の歯科医院での臨床風景動画を5分程度流す予定です。
“なぜ理学療法士が顎関節(症)?”そう思う方も多いはずである。私が臨床2年目の時、頸部の評価・治療に難渋していた時があった。その際に海外の参考書に「頸部を診る際は、顎関節・肩・胸椎を関連部位として評価しなければいけない(Magee2005)」と書かれ、また顎関節症は頭痛、頸部痛、上肢痛・痺れ、また腰背部痛の併発率が高いとも報告されている(Plesh2011)。実は顎関節は咀嚼・嚥下・発声機能に加えて、平衡衡機能を有し運動器の専門である私達 理学療法士にとっては重要な意味をもつ関節である。
普段、医師・看護師などと理学療法士が病院・クリニック・施設で医療連携しているように、今後は歯科医師・歯科衛生士などと理学療法士も医療連携ができる・する必要性が日本でもある。歯科領域では顎関節症をはじめ、口腔機能低下症、口腔機能発達不全症といった疾患に対して理学療法士の専門性を必要としているのを実感している。
顎関節症とは顎関節や咀嚼筋の疼痛、関節雑音、開口障害あるいは顎運動異常を主要症状とする障害の包括的診断名である。その病態は咀嚼筋痛障害、顎関節痛障害、顎関節円板障害、変形性顎関節症に分類されている。顎関節症に対する初期治療では保存的・可逆的かつエビデンスに基づいた治療を行うことが強く推奨される。(米国歯科研究学会,2010年)以前は咬合や嚙み合わせなどの非可逆的な治療が主流な時もあったが、現在は薬物療法と理学療法が推奨され実施されている。日本顎関節学会においても理学療法(物理療法、運動療法)をどの病態の顎関節症に対しても推奨している。
(顎関節症治療の指針2020)初期治療において理学療法は大変重要であるが、理学療法士が卒前・卒後教育において口腔を含めた顎関節の解剖に接する機会は少なく、顎関節やその周囲の疾患を理解するのは難しいのが現状である。今回の講演では顎関節周囲の解剖、顎関節症の分類、評価、さらに理学療法について解説する。顎関節症において筋や姿勢に問題があるものは多く、治療や予防における理学療法士の役割は重要であると思われる。まずは顎関節に関心を持って頂ければ幸いである。
令和6年度には、団塊の世代が全員75歳を超える2025年を目前に控えている。これに伴い、2040年を視野に入れたポスト2025戦略として、地域包括ケアシステムのさらなる深化と推進、医療のデジタル変革(DX)の推進、医療機能の分化と強化、そして連携の促進を含む、医療制度のさらなる改革が求められている。本年は、医療保険制度の安定性と持続可能性を高めるため、効率化と適正化を目指した診療報酬の改定が、地域の特性、高齢人口の増加、人口減少といった社会的要因を考慮して行われている。これらの状況を踏まえ、地域ごとの特徴を理解し、それに合わせた計画的な人員配置とリハビリテーションサービスの提供が急性期リハビリテーションの中長期計画策定において不可欠である。理学療法士は、これらの課題に対応し、地域社会のニーズを満たすために、柔軟かつ革新的な手法を採り入れる必要がある。これらの変化への対応戦略、具体的な人員配置計画、及び質の高いリハビリテーション体制について議論の場としたい。
2024年度の診療報酬・介護報酬の同時改定において、2040年までの高齢者増加と多死社会に向けて、医療と介護の連携が評価された。言い換えれば、益々回復期・生活期リハビリテーションの連携が重要となる中で、回復期・生活期リハビリテーション、地域活動の取り組みと人財育成に焦点を当て、当センターでの活動を交えて供覧する。回復期・生活期リハビリテーションの中長期計画として、包括的で効果的なリハビリテーションを一体的に取り組む環境を構築することを目指し、教育と管理の両面からリハビリテーションに貢献するための新たな価値軸を提案する。その中で理学療法士は、最新の理学療法知識・技術やEBPTに基づくアプローチを提供するだけでなく、倫理的な価値観や患者中心のアプローチを前置し、チームとして効果的に連携できる実力が求められる。また、日本理学療法士協会の生涯学習との連動を意識した卒後教育の展開や効率的なリソースの配分など組織運営の観点から、医療、介護の連携を軸に持続可能な成長と進化を促進できる組織の在り方を創造したい。
前十字靱帯(ACL)損傷患者の多くがスポーツ復帰を目指してACL再建術を受ける。スポーツ復帰に向けた理学療法では、ACL損傷や再建術後に生じる身体機能障害の改善が主体となる。しかし実臨床では、患者個々の心理社会的背景との相互作用によって理学療法の進捗やスポーツ復帰に影響が生じることから、生物心理社会モデルに基づく患者理解や個別対応が重要である。本グループワークを通じてACL再建術後理学療法の価値軸を共有したい。
肩関節に生じる病態は上肢機能障害を引き起こし、QOLの低下に直結する。肩関節複合体は、複数の関節によって構成される為、あらゆる要因で機能障害が生じる可能性があり、主訴の根本的要因を理解し、理学療法介入を行う必要がある。本グループワークでは肩関節疾患を有する症例を提示し、参加者とともに評価から理学療法介入までの考え方をディスカッションすることで、肩関節機能障害に対する理学療法の進め方の理解を深めていく。
日本理学療法士協会会員の所属する施設内で腰痛予防・労働安全に貢献することを目的に「2023 職場における腰痛予防宣言!」が開催された。2022年の国民生活基礎調査の有訴者率第一位は男女ともに腰痛であり、5人中4人が生涯のある時期に腰痛を経験すると言われている。腰痛に関わる理学療法士として、腰痛対策の価値軸を一緒に考え共有していきたい。
中枢神経損傷後に生じる痙縮は、リハビリテーションを進める上で対応する機会の多い障害の1つである。痙縮に対する治療に物理療法が用いられることがあるが、治療にあたっては、痙縮の病態を踏まえつつ、各物理療法の特性を活かして介入を選択する必要がある。そこで本研修では、痙縮の病態解釈や、電気刺激、ショックウェーブといった物理療法による痙縮へのアプローチについてディスカッションし、理解を深める機会としたい。
ポケットを保有する褥瘡は治癒に難渋することが多いと思われます。今回はポケットを保有する褥瘡に対して、電気刺激療法を実施した時の効果についてお伝えします。また、グループワークでは電気刺激療法のみでなく、難治性の褥瘡に対して理学療法士としてどのように関わっていく必要があるのか?も含めてディスカッションできればと思います。
グループワークでは,電気刺激および磁気刺激について,その生理学的な作用や効果機序を概説し,どのような疾患や病態に適用できるのかを議論する.さらに,本手法を臨床で有効に使用していくために,脳卒中症例を提示し,参加者との議論を通して臨床推論の向上を図る。
今回のグループワークでは、ヒトを対象とした基礎研究の観点から運動障害のメカニズムを解明するための研究や理学療法の効果について検証するための研究をテーマとしてディスカッションを行う予定です。このことにより、ヒトを対象とした基礎研究の計画を立てるための具体的な手順や方法について実践的なスキルを身につけることにつながればと考えています。
グループワークでは、実験動物を対象に運動障害のメカニズムを解明するための研究や理学療法の効果を検証するための模擬実験計画を立案、ディスカッションし、実験動物を対象とした基礎研究の計画を立てるための具体的な手順や方法についての学びを深めるきっかけになればと考えています。
超高齢社会の本邦において、内部障害は苦手だから、という言葉はただ無責任に思える。近年は感染症への対応や業務効率性(働き方改革)の観点から、疾患別のチーム編成、病棟専従体制をとっている施設が多いかもしれない。そのような中でも、理学療法士は、疾患別リハ料の対象となる心機能、呼吸機能障害だけでなく、腎機能、肝臓機能、膀胱・直腸機能障害など代謝異常、消化・吸収・排泄の問題を抱える患者に日頃から対応しなければならない。脳卒中の多くの原因は末梢動脈疾患(循環器病)であるし、運動器疾患は糖尿病等代謝性疾患を合併すると治療成績が悪いことも周知の通りである。糖尿病足病変が運動器リハ料の病名に収載されたのも記憶に新しい。対象者の主要な問題点(理学療法の治療対象)が主病名に由来する障害になるのは当然だが、併存疾患を考慮した運動処方、予後予測、リスク管理、再発予防のための指導を行うことは極めて重要であり、これは急性期、回復期、維持期・在宅等全ての病期に共通と考える。本セッションでは、内部障害における重複障害を概説し、疾患別・臓器別だけではなく総合的な診療能力を持った理学療法士の必要性について再考したい。
変形性膝関節症は、膝痛や膝関節可動域制限などの症状を抱えADL障害やQOL低下を招く。変形性膝関節症に対する人工膝関節置換術(以下:TKA)は、有効性の高い術式であり、我が国においても年間約15万件以上が施行されている。また、超高齢者社会となり、様々な併存疾患がある状態でTKAを受ける患者が増えており、重複障害を有するTKA後のリハビリが医療のニーズとして高まっている。
TKA後のリハビリにおいて、早期離床や積極的な運動療法は身体機能改善に有用である。例えば、心機能の低下を有しているTKA患者として考えた場合、早期からの積極的運動は心臓負荷が増し心不全のリスクが高まる可能性がある。そのため、全身状態のリスク評価を行い個別リハビリプログラムを検討することが重要と考える。
本講義では、各重複障害を持つTKA患者のリハビリに焦点を当て、リハビリプログラム立案と治療戦略を述べたい。
リハビリテーション料は『疾患別』で算定され、従来の理学療法では疾患特異的に計画され実行されていた。しかし、脳血管リハビリテーションの実臨床では並存疾患によって計画通りに進まないことも多い。具体的には早期離床を進めたくても糖尿病による自律神経障害で血圧が下がる、脳血流に配慮して血圧を高く維持すると心不全が悪化する、運動療法を進めたいのに低栄養や膝関節痛で耐えられないなどの問題に直面する。日本の入院患者は75%以上を高齢者が占め、単一疾患ではなく複数の並存疾患による『重複障害』への対応が必須となっている。重複障害への対応は理学療法における工夫で対応できることもあるが、他職種との協働が有効になることも多い。本講演では脳卒中患者のリハビリテーションにおいて日常臨床でよく遭遇する並存疾患の影響と対処方法について解説する。
「運動器理学療法の基礎」では、運動器疾患患者に対する現在の医療、理学療法の現状を総論として解説した後、腰部疾患を例に私が考える以下のコンセプトを解説致します。まず、①発痛部位の特定から構造的(組織学的)推論を行うこと、②原因組織に加わるメカニカルストレスを推定し、筋機能、関節機能、神経機能の評価から疼痛増強因子の特定し、力学的推論を行うこと、③機能不全に対して、運動療法を提供すること、④運動を行う事で痛みが軽減する成功体験を患者自身が感じること、⑤患者自身が痛みのマネージメントが出来るようになること。を症例を提示しながら、説明致します。
神経の可塑性やHebb則が基礎研究で明らかになり,神経理学療法の理論は現在のニューロリハビリテーションの基礎として位置づけられている。また,理学療法士は急性期から生活期にかけて適切な運動療法の実践に加えて,活動量の管理や生活機器の支援など,近年の科学技術を活かす議論も深まっている。神経障害の病態を把握するために,脳画像などの画像所見を把握すること,理学療法評価結果の解釈は必要不可欠である。理学療法評価が示す数値を適切に把握と解釈し,病態に応じた運動療法に加えて,課題設定,環境設定,練習の量をマネイジメントして対象者へ理学療法を提供する。しかし,まだ装具の使用や物理療法機器の使用など,施設による理学療法の選択基準に差がある。EBMが指摘されてから,かなりの時間が経過して教育のなかでも浸透してきた。重要なのは理学療法を施行する際にガイドラインを参考にして,EBMだけでなく理学療法士の経験や対象者の意見も反映して,最終的に対象者と共同して理学療法プログラムと目標の意思決定を行う。ガイドラインには具体的な治療手段の明記がなく,その記述内容をもとに目の前の対象者に適合させて実践していく。これらの内容を統合して,神経理学療法の基礎について概説したい。
理学療法士労働環境委員会は日本理学療法士協会会員全体の労働環境実態等を把握するために2017年に常設委員会として設置されました。調査内容について検討を重ね本会会員に対して2020年度から「理学療法士の勤務実態及び働き方意向に関する調査」として開始し、2023年度まで毎年おこなっています。 調査内容としては、1)勤務・業務、2)教育、3)マインドと3つに区分し、1)勤務・業務では、雇用・勤務形態、労働時間、業務量、時間外労働状況、年収、昇給、各種休暇(産前産後・育児・介護)取得の有無等について、2)教育では、資格取得状況、研修会の参加頻度、助成の有無等について、3)マインドでは、転職経験の有無、転職理由、今後の社会貢献希望の有無、満足度等についてとしました。以上の調査結果について報告させていただきます。
理学療法士養成校の教員として、近年頻繁に受ける質問が「理学療法士の将来」に関する内容である。この質問の背景としては少子高齢化の進行による人口減少、AIやロボット等の技術革新などが想起される。我々はこれらの不安を払拭できる明確な解を持ち合わせてはいない。しかしこれらは他の職業においても将来への重大な課題として位置づけられる。人口動態の変化や技術革新の中で理学療法士はどうあるべきか。もし理学療法士が今後も既存の価値軸でしか動けないのであれば、理学療法士は失われゆく存在になるかもしれない。重要なことは急変する社会のニーズに合わせ、我々自身が価値軸を柔軟且つ的確に設定し、その中で理学療法士としてのプロフェッショナリズムを発揮することだと考えている。資格と職業がイコールでなくなる時代の中で理学療法士はどう変わるのか、その可能性は理学療法士の数だけあると私は考えている。
近年理学療法士の活躍の場は、医療機関、介護施設、訪問在宅、地域、予防、産業など多岐にわたるようになった。30年前には約1万人であった理学療法士も現在では約20万人となった。時代とともに理学療法士の専門性が各領域で進化しスペシャリストとしてのキャリアモデルも確立されてきた。一方、理学療法士の在り方のバリエーションとして、専門性を他業種他領域で活かす新たな働き方が選択されることも増えてきている。
働き方や活動の選択においては、個人のライフステージや資質のみならず、社会情勢、事業ライフサイクル、マーケット分析の視点も踏まえた判断基準、つまり価値軸が必要となる。
本講演では様々な働き方をしてきた筆者の経験も踏まえつつ、キャリアの変遷過程における等身大の価値軸についても紹介したい。今後ますます、多様性と変化の大きな時代を迎えるにあたり、模索する同胞として、他山の石として役立てていただければ幸いである。
個人の価値軸は、その個人を取り巻く環境や経験等から影響を受けます。私は理学療法士免許の取得後は病院にて急性期、回復期、維持期を経験し、修士課程(循環器リハビリテーション)へ進みました。卒後は現在の職場へ身を置きながら、疫学で博士を取得しました。その後、ご縁があり日本理学療法管理学会のお仕事を一部関わらせていただいています。私の価値軸はこのような、経験からの影響を受けています。また、これまでに出会った方々からも大きな影響を受けています。
多くの方は組織の一員として働いていると思います。組織では、個人の価値軸のみならず組織の価値軸も考えて行動することが必要となります。この”考えて行動する”ことは、組織における自身の役割からも影響も受けます。どのように価値軸を育めばいいのか、私自身は答えは持ち合わせておりませんが、新たな人に出会うことで多様な価値観を知る機会を得ています。いずれにしても、組織運営では価値観の共有に心を配る必要があります。思考軸と感情軸とのベクトルをいかに共有するのか、本学術研修大会に参加される皆様と一緒に、考える機会になればと思っております。
医療・介護現場における理学療法の重要性も高まるなか、地域保健(介護予防含む)からも療法士の関与がますます歓迎されている。本講演では、具体事例として、千葉県山武市の転倒骨折予防プロジェクトを紹介する。当該事業は①転倒骨折予防と自己管理法の習得・定着によって“いつまでも転ばない状態”を目指すこと、②“自分らしい現役生活”が見つかりやすいまちを目指すこと、③転倒骨折を予防し社会保障費の適正化につなげること、を目標としており、これまで4年間の市の骨折医療費を評価すると、県全体、同規模自治体、全国の上昇トレンドと比べ、9~13%の減少で推移している。その成果は運動器の健康日本賞の受賞(優秀賞)や市の重点施策の継続事業として評価された。演者は理学療法士であり、当該事業の企画・運営アドバイザーを務めている。事業を通じて見えてきた地域との接点について共に考える時間としたい。
当グループは、千葉県南東部にある人口三万人、高齢化率40%の鴨川市にある総合病院(917床)を中心に回復期病院(56床)、クリニック(19床)、訪問リハビリテーション、さらには関連グループの介護老人保健施設と連携して、急性期から生活期までの質の高い医療介護サービスの提供を目指している。2004年には、亀田クリニック開設に合わせて医療法42条に規定された疾病予防運動施設(以下メディカルフィットネス)である亀田スポーツ医科学センター室をリハビリテーション室の隣に併設した。メディカルフィットネスとは、医療法人が運営する健康運動施設で、糖尿病や高血圧などの生活習慣病対策のための自費による運動施設である。これにより医療現場での疾病予防や介護予防といった保険適応外となる予防領域への参加が可能となった。今後、持続可能な社会づくりにおいては、教育現場やスポーツ現場、介護予防、さらには企業における健康経営など、理学療法士の保有する知識や技術が予防領域においてこれまで以上に期待されると考えている。当施設では、運動器疾患であるロコモティブシンドロームなど運動器の健康を柱に取り組んでいる。副題にある「攻めのリハ」とは、保健領域へ踏み出し、医療に適切に繋げるための取り組みを表現している。まだまだ道半ばではあるが当院における保険適応外における取組について紹介する。
日本地域理学療法学会は地域理学療法学を「動作や活動への多面的な働きかけにより人々が地域でのくらしを主体的につくりあげられるよう探究する学問」と定義している。地域理学療法の視座から介護予防事業における理学療法士の役割を考える出発点であり帰着点ともなるのは地域住民の“くらし”のありようである。介護予防の具体的な焦点は、転ばないように、閉じこもらないように、サルコペニアにならないように、などと時々で変化し、今はフレイルにならないように、が強調されている。理学療法士には、こうした〇〇にならないように、の指導だけでなく、その先にある“くらし”を語ることも求められている。本講義では、介護予防事業の「通いの場」を例に、身体の衰えに不安を感じて、運動(体操)に通い始めた参加者が、やがて一緒に運動(体操)する仲間を得て、グループメンバーとして役割を担い、居場所と出番のある“くらし”を実現させていくプロセスを紹介し、こうしたプロセスを作り出すために、どのような“くらし”を目指し、どのような運動(体操)を開発し、どのような指導、関与をするのか、について考えてみたい。
予防医学の分類の一つにポピュレーションアプローチ(以下、PA)とハイリスクアプローチ(以下、HA)がある。この2つのアプローチは予防対象の特性によって選択すべきである。2000年の「健康日本21」では、心不全発症者と非発症者の分布を根拠に、HAからPAへの転換が図られた。我々はIADL障害発症者と非発症者の分布を検討し、介護予防についてはHAがより有効と結論付け、2005年の介護保険法の予防重視型システムへの転換への根拠を示した。その後、事業への参加者が少ないことからPAへの転換が図られたがHAの重要性が変わったわけではない。 例えば変形性膝関節症による生活機能低下には綿密な評価に基づく介入が必要なくては解決できないことは疑う余地もない。我々、理学療法士は、あらためてHAの重要性を認識する必要がある。この研修大会はHAの一手法である虚弱高齢者を対象とする包括的高齢者運動トレーニング(CGT)の評価、介入選択アルゴリズム、高負荷筋力増強トレーニングの実際について解説する。
呼吸理学療法の対象は多岐にわたります。臨床では典型的な症候にあてはまらない現象も多く、日々悩みながら従事されていると推察します。今回は、①COPD安定期、②間質性肺炎急性増悪、③誤嚥性肺炎の3症例を取り上げ、症例検討を行います。画像や血液データ等の情報収集から病態の理解、臨床推論過程、評価や介入方法、リスク管理などをグループで検討することで、気づきや思考の整理に繋がり日々の診療の一助となればと思います。
循環器疾患の理学療法を安全に行うためには、疾患特有の病態を理解し、カルテ情報や様々な検査データの解釈が重要となる。本セッションでは①心不全②虚血性心疾患③心臓弁膜症の3症例で症例検討を行う。症例ごとにグループワークを行い、評価から治療までのプロセスやリスク管理など、多岐にわたる新たな発見や気付きが芽生える事を切望している。所属を超えて相談できる仲間の輪が波紋の如く広がっていく事を期待したい。
国民の5人に1人が後期高齢者(75歳以上)という超高齢化社会を迎えることで、雇用や医療、福祉など社会にもたらす諸問題「2025年問題」に対して様々な対応・体制整備が進められてきた。その後の戦略に何か必要か。急性期~回復期~生活期における地域分析と部門経営について「Vision2040」と題して、それぞれの職場・地域・士会活動などで想定される戦略についてグループワークを行なう。
タイトル:労働者就労支援事業「高年齢労働者のための転倒・腰痛予防」の報告(新潟県)
講師:中山 裕子(新潟県理学療法士会・新潟中央病院 リハビリテーション部)
本会では、2022年から高年齢労働者就労支援モデル事業を日本理学療法士協会の委託事業として開始、翌23年には、士会に労働者就労支援委員会を設立し活動を継続している。事業テーマは「転倒・腰痛予防」であり、その内容は、①講話・集団体操、②講話・個別体操指導、③運動機能測定等であり、それぞれの料金を規定、有償で展開している。事前に座学研修と事業見学を行った登録理学療法士である会員を部員として登録し、講師や測定会の検者として企業等に派遣しており、この2年間でのべ62名にのぼった。23年11月からは、新潟県産業保健総合支援センターの依頼により、企業への訪問支援事業も開始した。業務内容は、上記士会事業と同一とし、会員7名を産業保健相談員として推薦、委嘱を受け従事している。予想を上回る依頼があり、相談員の増員を検討している。
本シンポジウムでは事業の経過と課題、今後の展望について報告する。
タイトル:司法領域(刑事施設)における理学療法士の活動と展望
講師:南雲 光則(一般社団法人 栃木県理学療法士会、自治医科大学附属病院リハビリテーションセンター)
刑法犯の認知件数は、2002年をピークに減少していたが、2022年度以降は増加している。また、新受刑者のうち高齢者や障害を有する者の割合も増加傾向にあり、高齢者の2年以内再入率は出所者全体と比べても一貫して高い。
矯正施設は更生や社会復帰を図る場として位置づけられ、特別な配慮が必要な受刑者に対し本会では2013年より理学療法士を派遣している。
2014年から地域の医療・福祉等の専門家と連携する「女子施設地域支援事業」が始まり、矯正施設における地域連携や多職種連携のロールモデルとなっている。
2022年の刑法改正によって、2025年6月17日までの間に拘禁刑という新たな刑罰の種類が設けられることになった。拘禁刑のもとでは、受刑者の改善更生を図るため、各自の特性に基づいたより柔軟な処遇が可能となり、受刑者の再犯防止が期待されている。
今回のシンポジウムでは、司法領域(刑事施設)における活動から理学療法士への期待と今後の展望について報告する。
タイトル:神奈川県理学療法士会の活動について
講師:內田 賢一(公益社団法人 神奈川県理学療法士会、神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部)
本会は、神奈川産業保健総合支援センターと「転倒・腰痛に係る労働災害防止対策の連携等に関する協定書」を令和5年3月27日に締結し、県内12か所に設置されている地域産業保健センターと本会が協働出来る形を描き、労働災害や健康障害のない職場づくりに取り組むようシステム構築を行っている。
そして、令和5年度神奈川県ME-BYOリビングラポ実証事業に採択された日本美容創生株式会社と共に、本会は「美容室はまちの保健室プロジェクト」を支援している。結婚、出産、子育て世代の女性理学療法士は常勤職に就くことが難しいため、自宅近くの美容室で必要な時間だけ業務を行える環境を作ることができれば、より多くの女性理学療法士が社会活動へ参加でき、資格保持による業務遂行も可能になると考えられる。さらに、女性理学療法士の職域拡大も併せて対応できる活動と考えている。
当日は、これら2つの事業を中心に、本会の活動について報告する。
タイトル:令和6年能登半島地震における富山県内理学療法士の活動
講師:石田 克也(一般社団法人 富山県理学療法士会、市立砺波総合病院総合リハビリテーションセンター)
富山県は震度5弱以上を記録した大地震が過去100年間で僅か2回しか発生しておらず、これは全国で最も少ない数字であった。地震が少ない県といったイメージが県内でも浸透していたが、マグニチュード7.6を記録した令和6年能登半島地震によってそのイメージは払拭された。県内では最大震度5強が観測され、最大約1万5千人の避難者が発生し、当士会でも所属施設での避難者対応といった平時とは異なる業務に当たった会員も見られた。また被害の大きい石川県を支えるため、災害派遣医療チーム(DMAT)や日本災害リハビリテーション支援協会(以下JRAT)の一員として多くの会員が支援活動に携わった。 当士会では会員の安否や被災状況等の情報収集に加え、会員への情報提供やJRAT活動の支援、他団体との連携等を行ったが情報収集や連携方法に課題が残った。今回、令和6年能登半島地震に関する当士会会員の活動及び課題を振り返り、今後の展望について報告する。
タイトル:能登半島地震における石川理学療法士会の活動と今後の展望
講師:北谷 正浩(石川県理学療法士会)
令和6年1月1日に発生した能登半島地震は、石川県内を中心に甚大な被害をもたらし、県外にも広範囲にわたる影響を与えました。そのような中で、発災直後から平時にむけて、石川県理学療法士会としての取り組みについて、報告します。 1.発災直後の混乱期の活動では、全国初となる取り組みとして、1.5次避難所における支援活動や1次避難所でリハ・トリアージを行いました。また、避難行動要配慮者への早期介入と避難所での支援ニーズの把握を行っただけでなく、被災地外の2次避難所支援も実施しました。 2.災害時におけるリハ支援チームの組織化と連携では、全国の地域JRATの支援地域を調整するだけでなく、支援ニーズにより他の災害救助チームと連携し、情報の共有体制を構築しました。 3.平時における防災・減災に向けた取り組みでは、関係機関とのネットワーク構築や住民への啓発活動として自助・互助・共助に関する啓発活動を実施している。
タイトル:熊本県士会における防災活動の紹介
講師:林 寿恵(熊本県理学療法士協会)
近年日本各地で私たちの生活や健康に影響を与える甚大なる自然災が発生している。熊本県でも2016年4月14日に発生した熊本地震、2020年7月4日に発生した熊本県南豪雨災害は、災害救助法が適用されJRATも活動を実施した。熊本県は熊本県地域リハビリテーション広域支援センターが2次医療圏域ごとに整備されており、地域での主な活動を行っている。熊本地震をきっかけに、この活動契約の中に災害時における支援活動協力が盛り込まれるようになった。県士会では熊本地震以降、会員、所属施設の被災状況確認を目的にブロック毎の安否確認手段を検討し、実施に取り組んでいる。また協会BCPを作成し、整備している。2021年度からは活動の迅速、充足化を目指し、災害担当部署を特別整備設置した。現在は各圏域にある地域リハ広域支援センターと協会の連携と役割、災害支援における人材育成、BCPの見直し、安否確認と状況把握の迅速化にむけた課題があり、取り組んでいる。
理学療法士は患者の身体機能、ADLおよびQOLの向上にむけてリハビリを実施する。急性期病院におけるリハビリの最初の目標は、離床を通して、車椅子離床を獲得することであり、これが廃用症候群予防の第一歩となる。しかしながら、病態重症度、疼痛、フレイル、せん妄など離床の阻害因子は多く存在する。我々、理学療法士は、これらを打開するために病態把握をはじめ疼痛コントロールなど離床促進因子を確保する。その一助となるのが多職種での離床促進である。医師と治療方針の共有や看護師による点滴などのルート管理、そして薬剤師との連携である。例えば、疼痛コントロールには鎮痛剤を使用するが、鎮痛剤の作用、半減期、副作用を理解した上で介入すべきである。一方、薬剤師は離床の阻害となりうる薬剤を把握し、適正な薬物療法を提供することで離床促進の一助となる。互いに情報を共有し、疼痛改善、バイタルの是正、せん妄の改善を促すことで早期離床や患者のリハビリゴールに近づくことができる。本講演では理学療法士から離床の阻害因子とその対策を、薬剤師は薬剤の基礎からリハビリテーションに影響を及ぼす作用など、多職種のアプローチの重要性について述べたい。
近年、リハビリテーションと栄養の関係が認知されてきましたが、薬剤との関係にも注目が集まっています。リハビリテーションの効果を最大化するためには、薬物療法の適切な選択と管理も必要です。病態の治療に用いられた薬剤が影響を与えている可能性が報告されており、その影響は治療計画に重要です。今後は、薬剤師と理学療法士が協働し、患者さんの治療における薬剤使用に関する情報を共有し、最適な治療法を提供することが必要です。両職種が連携することで、患者さんの転帰改善に寄与できると思います。例えば、理学療法士から患者がリハビリ中にふらつきを訴えると聞いた場合、薬剤師はふらつきを与えうる薬剤の有無を確認します。そこで、理学療法士からリハビリ中に血圧低下がないことの情報を得ることで、ふらつきの原因が長時間作用型のベンゾジアゼピン系眠剤を使用ではないか?と推測し、他の薬剤への変更や作用が残りにくい短時間作用型への変更を提案するでしょう。今回の講演会では、薬剤とリハビリテーションの関係を双方向から焦点を当て、患者さんのADLやQOLの改善のためにそれぞれ何が出来ると最適化に繋がるのか、議論したいと思います。
女性の身体は,ライフステージを通して大きく変化し,特に性成熟期では妊娠・出産による身体的変化が大きい.そしてその影響は適切にアプローチされない限り更年期や老年期にも及ぶ.妊娠に伴う子宮拡大は,非妊娠時に比べ約20~25倍の重量を呈し,骨盤腔の最下部に位置する骨盤底への負荷を増加する.更に,分娩時には骨盤底筋群が静止長の約2~3倍に伸張されることから,多くが産後に骨盤底機能障害を誘起し,その割合は60%にまで至ると報告されている(Sangsawang et al. 2013).このような骨盤底機能障害は,年齢とともに罹患率が増加し,その代表的なアプローチとして骨盤底筋トレーニング(以下PFMT)が挙げられる.しかし,骨盤底筋群の機能回復に着目したPFMTのみならず,一人ひとりの全身的な理学療法評価に基づいたアプローチを展開・提供することが重要と考える.本シンポジウムが,骨盤底理学療法の視野を広げるきっかけとなり,臨床での一助となれば幸いである.
(はじめに)骨盤底リハビリテーションは、まず尿失禁の治療でエビデンスが集積されたが、さらに骨盤臓器脱などの骨盤底障害に適用が広がり、さらに最近では、慢性骨盤痛や、GSM(閉経関連尿路生殖器症候群)の治療さらにそれらに伴う性交痛の治療にも応用されている。(フェムゾーン(腟と外陰)のセルフケアの将来の展望)人生百年時代において、女性が、一生一度は骨盤底やフェムゾーンのセルフケアを学ぶことは、QOL向上の点から非常に重要だと考える。この教育の中心となるのが、世界的にみれば理学療法士であるはずである。しかし日本においてもまだ、一般の人々にとってクリニックや病院は病気になってから行くところであり、その敷居は高い。(多様性の中で理学療法士の役割)全ての理学療法士が希望する医療機関に常勤として勤務できる世の中は崩壊しはじめているだろう。一方で医療機関外では、骨盤底リハビリテーションの知識をもつ理学療法士は、重宝される。例えば多様な女性のフェムゾーンセルフケアビジネスを行う人々のサポーターやコンサルタント等をして、正しい情報を伝達の一役を担うのはどうだろうか?市場は、分けるものではなく広げるものである。
介護予防・日常生活自立支援事業の一層の推進、共生社会の実現に向けた認知症基本法の成立、施行など、共生社会の実現に向けた施策が進んでいる。最新の施策の動向を紹介し、理学療法士が地域で活躍する方向性について議論する。
国土交通省では人口減少下における根幹的な都市政策として、居住機能や都市機能の集約・誘導、持続可能な公共交通ネットワークの充実による都市全体のコンパクト・プラス・ネットワーク化を掲げ、コンパクトな日常生活圏のなかで歩いて暮らし健康で質の高い生活を営むことができる「健康まちづくり」を推進している。 国からの技術的助言として平成26年に「健康・医療・福祉のまちづくりの推進ガイドライン」を公表し、ガイドライン公表から10年を経る令和5年度には、健康まちづくり事例集として、都市部局と健康・医療・福祉部局間の具体的な連携プロセス、歩行や運動などの身体活動の促進に加えてコミュニティの形成や心理的安全性を保つ居場所づくりに着目した先進事例を整理した。 国土交通省の健康まちづくり推進に向けた近年の動向を紹介しながら、都市政策と健康政策の連携に求められる視点、地域再生やまちづくりに対する理学療法士の方々への期待について論じる。
東京都北区は、総人口35万人、高齢者人口(65歳以上) 8万5千人(24.1%)の区市町村である。(2023.1.1現在) 北区行政との変遷を振り返えると、2012年当時、北区は東京23区で最も高齢化が進んでおり、医療資源も総じて乏しいが、その一方で行政と医師会、多職種団体との連携体制を構築する会議が設置され、多職種連携に取り組める「強み」を持っていた。 2012年 地域包括ケアシステムの構築に伴い、東京都北区在宅介護・医療連携推進会議(現;東京都北区在宅療養推進会議)設置 リハ職として参加 2013年 北区行政と医師会、多職種団体が加入する「北区在宅ケアネット」を設立 2014年 北区リハネットへ北区介護予防事業協力依頼 2015年 北区「地域づくりによる介護予防」モデル事業開始 2016年 北区通いの場の立上げ本格実施 2017年 北区介護予防ご当地体操「北区ご近所体操」を運動指導員、区と作成 2012年より北区とリハ職との関りを持たせていただく中で、行政の人事異動が更なる連携の広がりとなり、今では多くの部署で、リハ職の活用に至っている。
私は、平成29年より瑞穂町の介護予防による地域づくり推進員として活動しています。瑞穂町でのセラピストの活躍の場は、病院から施設・在宅まで多岐にわたっていますが、町内全域のセラピスト数は、PT・OT・ST合わせて40名程度です。その為、町内全域のセラピストと、顔の見える関係作りを推進してきました。その結果、現在では、セラピストの強みや所属施設の特性を活かし、体力測定会や体操教室、地域ケア会議や訪問Cを適時分担して行っています。推進員として、継続に向けた仕組みや情報共有の機会づくりの為、行政の方を含めた連絡会を2ヶ月に1回開催し、事業報告の他、各施設での取り組みの共有を行ってきました。地域包括ケアシステムの構築に向け、セラピスト間との連携、特に行政連携の必要性が不可欠であることを実感しています。今後も介護予防事業や健康分野、障害分野との関係を模索しながら、連携強化にも努めていきます。
2009年、私は「介護予防に取り組むことで、痛みに煩わされずいくつになっても豊かな人生を送ることができる社会をつくる」ことを目的に、町田市で介護予防の取り組みを始めた。最初に取り組んだことは自分の住む町内の自治会館を使った週1回の体操教室であった。そんな中、今日に至る行政と繋がる最初のきっかけとなったのが、地域包括支援センター(以下、センター)からの1本の電話であった。これを契機にセンターや行政との関係が少しずつ築かれ、現在は町田市介護予防フレイル予防推進員として、リハビリテーション専門職と連携し、通いの場・通所C・地域ケア会議等に関わっている。理学療法士は地域包括ケアシステムを進化させていく一メンバーとして、行政がどのような街づくりをどのように進めていこうとしているのか理解に努め、行政職員だけでなく、センター職員、地域住民等、様々な関係者と連携をしていくことが重要であると考えている。
一般介護予防事業等に今後求められる具体的方策等について理学療法士などの専門職の関与が記載されている(厚生労働省:介護予防について).そのための理学療法士の人材育成も進んでいる(日本理学療法士協会:日本理学療法士協会の地域包括ケアシステムへの取り組み).一般介護予防事業のうちの「地域介護予防支援事業」において小平市では住民主体で運営する通いの場を行政と連携を図りながら支援および拡大を図ってきた.
本セッションでは小平市の住民主体の通いの場「フレトレ」についての紹介および拡大を行政とどのように連携を図っていくかを地域アセスメントの視点で共有することまた訪問や通所利用者が通いの場に繋がった事例を紹介する.
北区は、23区の中でも高齢化率が高く、平成24年度から在宅医療・介護連携に取り組むため、多職種による「北区在宅療養推進会議」や「北区在宅ケアネット」による研修会などを通じて「みんなで支え安心してくらせる地域づくり」を基本理念とする「北区版地域包括ケアシステム」の深化を目指している。
この間、コロナ禍においては、こうした連携体制を基盤として、在宅療養患者の健康観察や高齢者施設従事者等のPCR検査・抗原定性検査キットの配布など地域特性を踏まえた感染症対策を推進し、区民の安全、安心に繋げてきました。
なお、令和4年度には新たに北区地域医療会議を設置し、地域医療の側面から在宅療養の推進に必要な環境課題と施策の方向性をとりまとめたところであり、引き続き関係機関とともに行政が取り組むべき具体的な事業について検討を進めることとしています。
瑞穂町は東京都の西部に位置し、人口は3万人台で茶畑や農地が多く残っている地域です。高齢化率は30%を超え、後期高齢者数が前期高齢者数を上回り、超少子高齢化となる中、地域包括ケアシステムの構築・推進に向け、平成27年1月より高齢者福祉課に保健師を配置し、様々な施策を進めています。 平成27年4月の介護保険制度の大きな改正に伴い、介護予防・日常生活支援総合事業の構築・推進等、行政に求められる専門的役割が多くなりました。リハビリテーション専門職との連携も求められ、町としてもリハ職の必要性を感じているとき、先方から声をかけていただいたことをきっかけとして、「介護予防による地域づくり推進員」としてリハ職を配置し、現在も、介護予防、総合事業の推進、地域づくりに努めています。 相互に、顔の見える関係を構築し、ちょっとしたことでも気軽の話のできる関係を大切にすることが、良好な連携につながると考えています。
町田市では、東京都の最南端に位置し、人口約43万人、高齢化率約27%であり、高齢者が住み慣れた地域でいきいきと暮らすことができるよう、介護予防につながる取組を進めている。2015年には市内のリハビリテーション専門職(以下、リハ職)と連携を開始し、住民運営の通いの場・短期集中型サービスC・地域ケア会議の3つの事業を実施している。2016年には通いの場のツールの1つとして、高齢者向けの市オリジナルの体操である「町田を元気にするトレーニング」を共同で考案し、リハ職が運動効果の講義や助言、体力測定の実施、結果のフィードバック等を実施することで、通いの場の立ち上げ及び活動の継続的な支援を行っている。今後も高齢化に伴い、高齢者が参加しやすい通いの場の拡充が求められる中で、理学療法士へは、自身の専門性を活かしつつ、地域の状況を理解し、地域住民や関係者と協力して問題解決に取り組んでもらうことを望んでいる。
小平市はこれまで,高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画を一体のものとして3年ごとに策定し,高齢者保健福祉及び介護保険施策を総合的に推進してきた.平成27年度からの新たな計画は,地域包括ケアシステムの構築を一層推進していくため,総称を「小平市地域包括ケア推進計画」として策定した(現在第9期).この計画に沿って施策を展開し,高齢者が住み慣れた小平で,いきいきと笑顔で暮らせる地域社会をめざすことを基本理念としている. 本セッションでは,小平市の「市の現状と課題」,「施策の取組」を紹介し,また,理学療法士とどのように連携を図り, 地域づくりにおける介護予防の取組の構築を図ってきたか,また,今後の展望について共有する.
現在高齢者死亡は死亡者全体の約92%を占め,後期高齢者だけでも約82%を占めている。平均寿命と健康寿命の差は男性で約9年,女性で約12年とその差は縮小する傾向がなく,日本人は75歳を超え一定期間ケアを受けてから死に至る経過が典型となっている。また未だ病院死が一般的であるが,調査によれば8割以上の高齢者は無理に治療をせず楽な状態で死に至ることを望んでいる。
発表者は,「老衰・認知症」に分類される”Illness Trajectory”をたどり,生命予後が予測がしづらいと言われる高齢者の研究をしてきた。その結果,栄養摂取量は不変でありながら死の5年前から体格指数(Body Mass Index)が減少,つまり食べているのに痩せていくこと,死の数ヵ月前には栄養摂取量が,続いて水分摂取量が不可逆的に有意に減少し死に至ることを明らかにした。これにより食べないから死ぬのではなく「死ぬ過程で食べなくなる」ことが示唆され,生活の中での高齢者の看取りではむしろケアの「引き算」をすること。また,状態は悪化しても体位,呼吸,口渇,疼痛,孤立などが苦痛とならないよう,理学療法士を含む多職種で「死にソフトランディング」できる老年緩和ケアを提供することが重要であると考えている。
ここでは、在宅におけるターミナルケアから看取りのステージにおける関わりについて紹介し、生活期→ターミナル期→看取りの経過において、対象者にとって必要な存在になるためのサービス提供(専門性・役割・関係性)を考える機会にしたい。
ターミナル期では、状態に応じたPT・OT・STの専門性を発揮すべきこともあるが、看取りの時は一人の支援者として、利用者の家族やケアチームから、その場に呼んでいただける存在でありたい。 在宅看取りの重要な役割を担っているのが、訪問看護(ターミナルケア加算・看取り介護加算)である。訪問看護ステーションに従事するリハ職は増加しているが、エンゼルケアまで支援した報告はほとんど聞かない。エンゼルケアの場面にもリハ職ができることはあり、その経験は専門職にとして成長する機会でもある。看取りに向けた「美しい姿で亡くなるための理学療法」というものがあっても良いかもしれない。
リハビリテーションは、全人権的復権を目指す事から右肩上がりの回復をイメージしている。一方で、厚生労働省は「終末期医療に関する調査」を報告しており、人生の終焉を迎える直前の患者へのケアとしてend of life careの考え方も重要である。右肩下がりの時期であり、患者としては生活の大部分を家族や他人の手に委ねる事になったにしても、心身の苦痛なく、心地よいケアを望むことは当然である。しかしながら、実際の現場では医療や介護を提供する側の価値観と家族の想いなどが複雑に絡み、それぞれの思惑に反し本人にとって負担の多い対応がなされていることも多い。end of life careでは、状況に応じた様々な苦痛を取り除くための働きかけであると同時に新たな不利益を作らないという予防的な側面も含んでいる。本講演では、理学療法士として、患者とその家族を対象にした看取りの考え方や実践などについて情報発信し、多職種との協働について考える機会にしたい。
臨床で患者と向き合い、何かできないかと足掻き続ければ、やるべきことが明確となり、やがて患者の役に立つ存在となる。
役に立つ存在になれたと思えば、肯定的に生きる支援と多専門職種チームの協働により、どんな患者にも立ち向かえる。
たかが理学療法士、給料は簡単に増えないし、働き方改革にある労務管理下では好きにできない。副業も悪くないが自分がしてきたこと極めれば、その分野の有名人と肩を並べて世界が広がる。
コツコツ積み上げれば専門的な資格は自ずと獲得できるし、地域包括ケアシステムを支え、国際医療支援を継続すれば、雇われ組織に留まらず、あらゆるところで活躍することができる。
アカデミックな活動を20年以上続けていると日本全国に仲間が増え、苦労はするが小遣いには困らない程度の生活はできる。
今ある課題から新規医療機器の開発や共同研究・競争的資金を獲得し臨床研究を行えれば、きっとそれは雇われ理学療法士であっても、それなりに歴史に名が刻むことができる。
2010年4月30日、厚生労働省医政局から理学療法士等による喀痰等の吸引の行為が認める通知があり、本会から理学療法士による「吸引」に関する協会の基本姿勢が出された。現状、吸引に関する教育は、各養成学校や研修会、職場に委ねられている。
理学療法を実施するにあたり、自己喀痰排出が難しく潜在的に吸引が必要となる対象者が多いことは容易に想像できる。また、吸引は小児から超高齢者を対象に、急性期病院から生活期までの、どのフェーズでも必要となる行為である。しかし、吸引に対する苦手意識や教育体制の不備から、吸引に対して一歩引いてしまう事もあるのではないか。
本講習では、吸引を実施するにあたり必要となる、解剖学、生理学の基礎的知識、標準予防策、吸引実施前後の評価(含むリスク管理)を学びながら、ハンズオンを通して基本的な吸引技術の習得を目指す。
身体障害者野球は、1981年に神戸市で身体障害者野球チームが結成されたことから始まりました。1993年に日本身体障害者野球連盟が設立され、現在では、全国に38チーム、約1,000名の会員が所属しています(2024年2月時点)。毎年2回の全国大会が開催され、2023年には5回目の世界大会が名古屋で開催されました。
身体障害者野球では、「ルールが障害に合わないなら、障害にルールを合わせよう」という考え方から、様々な選手が野球を楽しめるように試合の進行や用具などのルールを工夫しています。
また、身体障害者野球を含むパラスポーツでは、選手の心身の状態に合わせた対応ができる支援者の育成も重要です。本発表では、日本の身体障害者野球の歩みや展望、理学療法士の関与についてご紹介します。本セッションを通じ、身体障害者野球に関心を持っていただければ幸いです。
障害者野球は多くのパラ競技で用いられるclassificationが無く、選手それぞれの持ち味を活かした競技参加が可能であるため、チームには多様な障害を有する選手が所属している。一方でサポートには多くの知識が求められ、運動器のみでなく内部障害や義肢、知的障害の理解も必要である。また、調査結果では選手が望むサポート内容に「身体を動きやすくするトレーニング」「自身の障害に合ったトレーニングやケア」の回答が多いこと、半数以上の選手が肩痛・肘痛を抱えていることから各種障害の知識と投球障害に対する対応が求められている。しかし、投球障害に必要と言われる体幹・下肢機能に障害を有している場合が多く、患部自体の機能向上や選手個別の動作変更による改善が必要となる。理学療法士の強みを生かした障害者野球サポートのあり方を参加者の皆様と考えたい。
近年、医療の高度化・複雑化にともない、神経難病者に対する理学療法及びリハビリテーションを実践する場面が増えている。ただし、その多くは希少疾患のため支援経験が少なく、手探り状態での対応を余儀なくされていることが想定される。
今回、当事者にご協力いただき、実践的な学びの場として各疾患ごとに3つグループを作成し、並行してワークを行うセッションを企画した。
−内容−
グループ1
歩行可能なパーキンソン病患者さんと学ぶ「パーキンソン病に対する理学療法のための臨床推論」
グループ2
ご協力頂き撮影した脊髄小脳変性症患者さんの動画で学ぶ「小脳性運動失調の標準的な評価と介入」
グループ3
人工呼吸器使用している筋萎縮性側索硬化症患者さんと学ぶ「適切な評価と対応の検討」
当日は各疾患における疾患特異的な評価の確認や本人のニーズに応じた理学療法評価及びプログラムを一緒に検討したい。
近年、医療の高度化・複雑化にともない、神経難病者に対する理学療法及びリハビリテーションを実践する場面が増えている。ただし、その多くは希少疾患のため支援経験が少なく、手探り状態での対応を余儀なくされていることが想定される。
今回、当事者にご協力いただき、実践的な学びの場として各疾患ごとに3つグループを作成し、並行してワークを行うセッションを企画した。
−内容−
グループ1
歩行可能なパーキンソン病患者さんと学ぶ「パーキンソン病に対する理学療法のための臨床推論」
グループ2
ご協力頂き撮影した脊髄小脳変性症患者さんの動画で学ぶ「小脳性運動失調の標準的な評価と介入」
グループ3
人工呼吸器使用している筋萎縮性側索硬化症患者さんと学ぶ「適切な評価と対応の検討」
当日は各疾患における疾患特異的な評価の確認や本人のニーズに応じた理学療法評価及びプログラムを一緒に検討したい。
近年、医療の高度化・複雑化にともない、神経難病者に対する理学療法及びリハビリテーションを実践する場面が増えている。ただし、その多くは希少疾患のため支援経験が少なく、手探り状態での対応を余儀なくされていることが想定される。
今回、当事者にご協力いただき、実践的な学びの場として各疾患ごとに3つグループを作成し、並行してワークを行うセッションを企画した。
−内容−
グループ1
歩行可能なパーキンソン病患者さんと学ぶ「パーキンソン病に対する理学療法のための臨床推論」
グループ2
ご協力頂き撮影した脊髄小脳変性症患者さんの動画で学ぶ「小脳性運動失調の標準的な評価と介入」
グループ3
人工呼吸器使用している筋萎縮性側索硬化症患者さんと学ぶ「適切な評価と対応の検討」
当日は各疾患における疾患特異的な評価の確認や本人のニーズに応じた理学療法評価及びプログラムを一緒に検討したい。
介護予防事業へのリハビリテーション専門職の参画が全国の市町村で広がり、行政からの期待も年々高まっています。本事業において、理学療法士がその役割を果たすためには、行政の目指す方向性と地域支援事業全体を理解する事が大切で、その中で理学療法士としてできることを見出す視点が求められます。今回、介護予防の現場で活躍するために必要な関わり方や考え方についてグループワークを通して考える機会にしたいと思います。
タイトル:青森県理学療法士会における地域貢献活動について
講師:小野寺 遊(一般社団法人 青森県理学療法士会、メディカルコート八戸西病院)
青森県では高齢者人口は減少しているものの、高齢化率は34.38%と全国データを上回り上昇を続けている。青森県理学療法士会は2025年問題に向けた地域包括ケアシステム構築の為に2013年より地域包括ケアシステム推進委員会を発足し人材育成をすすめながら、早期より県と連携し事業を展開している。2015年より県と委託契約しリハ専門職の広域的な派遣調整を行う目的として、「リハビリ専門職派遣調整事業」を展開している。また、介護給付適正化事業においても自治体と連携しリハビリ専門職の立場から助言をさせて頂いている。このように自治体との連携システムはこの10年で確立しつつあるが、質の担保として推進リーダー資格制度を基盤とし会員を派遣している中で、派遣会員の偏りや新規資格取得者数の伸び悩み等、様々な課題がある。当県士会の地域貢献活動に係るこれまでの取り組みと課題に対する今後の展望について述べさせていただく。
タイトル:愛媛県理学療法士会における地域活動 〜新居浜市における介護予防事業への参画〜
講師:阿部 大樹(公益社団法人 愛媛県理学療法士会、ながやす整形外科クリニック)
愛媛県理学療法士会は2014年より新居浜市介護予防事業へ参画し、地域拠点づくり事業として、その地域拠点等で活用する介護予防プログラム(PPK体操)の開発に従事した。その背景となった地域課題として、当時の新居浜市人口約120,000人、65歳以上の高齢者数約37,000人の内、「基本チェックリスト」による選定されたハイリスク高齢者約9,000人に対する介護予防が急務の課題として挙げられた。 その後は、地域住民に対する介護予防リーダー講座や地域拠点への指導に当たっている委託事業者に対する講習会、各種PPK体操ガイドラインの作成に携わり、また新居浜市独自のカリキュラムを作成し市民体操指導士養成講座に着手した。さらに2017年には、愛媛県リハビリテーション専門職協会が発足し、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がそれぞれの職能を活かし協働して地域活動へ寄与している。 詳細な活動報告や今後の展望については当日ご紹介する。
タイトル:公益社団法人 福岡県理学療法士会における地域貢献活動の紹介
講師:松﨑 哲治(公益社団法人 福岡県理学療法士会、夫婦石病院)
公益社団法人 福岡県理学療法士会(以下 当会)は、昭和44年9月7日 23名から発足し、令和元年9月7日(土)には50周年を迎え、現在会員数は6,893名(令和6年3月31日付)となる組織です。現在当会は、11県市町村・21事業において、県市町村と委託契約を結び、各事業を実施しています。今回、県市町村からの委託事業の中でも、糸島市の委託事業を紹介し、当会の地域貢献活動の一つを紹介したいと思います。 糸島市の高齢化率は、30.11%、また後期高齢化率は、15.17%と、福岡県の平均よりは、若干高めです。糸島市と当会は、平成27年より委託事業契約を結び、下記の5つの事業を運営し、地域貢献をしております。1.地域ケア会議・2.訪問C事業・3.在宅医療・介護連携コーディネーターステップアップ研修事業・4.通所B事業・5.介護予防指導者養成事業。今回はこの事業を説明し、その効果をお話しさせていただきます。
タイトル:地域リハビリテーション活動支援事業の7年間の活動を通して
講師:櫻井 健太郎(一般社団法人宮城県理学療法士会)
宮城県リハビリテーション専門職協会は、県市区町村や本事業に関連する団体に対して各種支援事業に展開している。 仙台市とは2017年より、地域リハビリテーション活動支援事業の委託契約を締結し、住民の通いの場へ関わったPT・OT・STならびに参加された住民の方々との対話やアンケート結果を基に7年間の取り組みをまとめた。2019年まで、新型コロナウイルス感染症の第1波から現在に至るまでの活動を紹介する。 参加される住民の希望や通いの場の“ありたい姿”に応えるためには、PTは地域リハを支える社会資源の多寡や住民の生活特性を十分に把握するために、事業関係者ならびに住民との対話を重視しなければならない。 地域共生社会の実現に向けては、行政と住民とリハ職が紐帯し、人々の健康づくりを後押し続けなければなりません。PTは健康危機管理の専門職としての役割が期待されると考える。
タイトル:和歌山市で行っている住民主体の通いの場立ち上げ支援の実績と今後の展望
講師:松井 有史(和歌山県理学療法士協会)
現在、日本では、社会とのつながりに焦点を当て、フレイルと社会参加の関連性が強調されています。そのため、早期からの予防が必要とされています。各都道府県でも、理学療法士や関連団体が地域の通いの場の設立支援に取り組み、地域社会への貢献がされています。
和歌山市で行われている「WAKAYAMAつれもて健康体操」(以下、「つれもて健康体操」)は、2016年から和歌山県理学療法士協会を中心に運営されており、現在では136グループ、約1500名もの和歌山市在住の高齢者が参加しています。
つれもて健康体操は、週に1回、5人以上のグループが参加し、最初の約1か月間(4回)はリハビリテーションの専門家と地域包括支援センターの職員が訪問し、立ち上げを支援します。5回目以降は自主活動としています。
本パートでは、通いの場の設立支援の実態や取り組みの工夫について述べながら、地域で生まれた連携の重要性を中心に、今後の展望について考察したいと思います。
タイトル:島根県理学療法士会による地域貢献活動に関する活動紹介・今後の展望
講師:嘉田 将典(一般社団法人 島根県理学療法士会)
島根県理学療法士会ではミッション・スローガンとして「あなたの大切を彩る」を掲げている。組織内にブロック局を設置して「地域と活きる」ための地域貢献活動に取り組んできた。本シンポジウムでは具体的な活動として、地域包括ケアシステム推進に向けた介護予防事業に関する活動やスポーツ支援を中心とした学校保健活動などをご紹介したい。市町村からの委託を受けて行う地域巡回型介護予防事業や、関係団体からの依頼を受けて行うスポーツ医科学サポート事業、全国高等学校野球選手権島根大会へのトレーナー派遣事業により実践を通じた地域貢献と人材育成、会費外収入の拡大など組織づくりに寄与できていると考えている。今後の展望として多くの会員が職能活動に関わり、地域からの「声」を聞くことで職能団体として必要とされる実践を通じた地域貢献活動を更に進めたい。