No. |
質問 |
回答 |
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世界中で宇宙開発競争が激化している様に感じてますが、他国との協力も大事かもしれませんが、日本の宇宙開発の進め方と日本国の国益として、国民へ反映されるものにはどの様な形で感じれるのでしょうか?はやぶさやH3ロケットなど、成果は多々あると思われます。日本の宇宙開発を国民は応援していると思いますので、頑張って欲しいと思います。 |
・ありがとうございます。宇宙開発には多額の予算・長い時間が必要となりますが、大きな効果(経済、人材、技術開発)も期待されます。
・例えば、宇宙技術について高信頼性が必要など特殊性も指摘されますが、最近では、民生技術の高まりから宇宙技術・製品への転用も進んできています(ロボット、画像技術、AI技術)。日本の宇宙企業が持つ技術・サービスが民間分野に適応されて経済活性化が期待されます。
・特に、日本でも宇宙スタートアップが生まれてきている(ロケットの打ち上げ、リモートセンシング・通信等)。各国をみればスタートアップの存在は、幅広い投資や技術開発を促し、経済の活性化の駆動力となっています。また若い人材が次々にフロンティアに進出し、ビジネスを成功させることは、国内・産業界の士気も高まるものです。 |
2 |
三上さんに質問です.ブリュッセル時代があったことを知りました.ヨーロッパの宇宙政策は三上さんの目にどう映っていますか? |
・世界の各国で宇宙開発の推進するスタイルは異なる。欧州では主に、EUに加盟する国々(独仏を中心)で、社会の発展や課題解決、そして、科学探査のための宇宙政策を立案し、各国の技術・人材を融合する形で推進しており、すそ野の広さがある。
・他方、英国(BrexitでEU離脱)など、EU外での独自の宇宙政策・対策を取っている国もある。
・彗星や深宇宙探査などの科学探査の分野で古くから協力を進めており、今後もその方向が続くと認識しています。 |
3 |
宇宙分野が大きな産業になるため、ロケットを打ち上げ、衛星が軌道上で活動し、大気に投棄あるいは地上に帰還する一連の動きを環境面で支援する、「航空気象」と言うべき分野がぜひ必要と思いますが、宇宙技術戦略等に全く言及がありません。この、「拡大」宇宙天気の実現を期待しています。 |
・「航空気象」とのキーワードの提起、ありがとうございます。
・ロケットが打上がる空間(地上から大気を経て宇宙の低層へ)、人工衛星の活動とその終焉までの空間(地球近傍から月や以遠の宇宙高層まで)における宇宙天気や物体把握など環境の観測・整備は重要と考えます。 |
4 |
三上さんに質問です.スペースデブリの観測と回収について日本企業が存在感を発していると思っています.またプラネタリー・ディフェンスも研究が進んでいます.これらについて,どのような方向性の研究開発を期待しますか? |
・人類自らが出す宇宙ゴミの回収(スペースデブリ対策)はもとより、小惑星など地球に向かう軌道を持つ物体から地球を守る取組(プラネタリー・ディフェンス)についても考える時期が来ました。
・物体の発見には広範かつ頻繁な天体観測が必要であり、また、発見後にはその時期や規模から適切な対策の検討が必要となり、いずれも国際協力が必須な分野ですが、特に日本人は古くからそういった分野のSFやアニメーションに触れ親しんでいることから、技術開発や検討におけるリーダーシップを期待しています。 |
5 |
三神様
つぎに2機上がるみちびきは静止軌道に近い軌道を取るようだが、5機から7機に追加するときは静止軌道の方がメリットがあるのか。
静止軌道のスロットを取る費用や軌道の維持などが要素に上がると思われるがいかがでしょう。 |
・ご指摘のとおり、静止衛星は、気象の定点観測や大容量な衛星通信などに適しており、極めて有益な軌道です。しかし、赤道上空にしかない唯一の軌道で、かつ、衛星が発信する電波信号が混線しないよう衛星位置の重複が許されていません。そのため、非常に希少(プレミアム)となっています。今回、日本の実用衛星・測位衛星のみちびきとして、静止軌道の位置を確保できることになりましたが、航空機の衛星航法補強システムへの利用などもあり、日本として、将来的にわたる確保も重要です。 |
6 |
安全保障の観点から我が国衛星の重要性に優先順位は存在しますか?
三上様への質問です。 |
・宇宙空間を活かした安全保障の実現としてはいくつかの柱があります(例えば、観測、通信、測位) ※これらに加えて、日本はできませんが、他国では「攻撃」もあるかもしれません。
・防衛、気象、通信、科学探査の人工衛星の多くは政府ミッションと考えられます。それらは今後、政府の基幹ロケットH3ロケットで打ち上げられていく予定です(→宇宙開発戦略推進事務局が毎年12月頃に発表する工程表にて、ロケット打上げや衛星の名称が記載されています)。
・他方、人工衛星の開発には3-6年もかかります(急に必要になっても時間が要るのです)。当該衛星の業務・サービスの必要な開始時期に併せて、開発が行われ、そして打ち上げられていくことになります。 |
7 |
主に三上様への質問となります。
超小型衛星を開発してきたものからの質問です。
10年前日本では、超小型衛星やcubesatは教育目的や技術実証目的に使うのだと言われており、実際まだそのような利用が多いかと思います。しかし、特にアメリカではcubesatの技術レベルを業界全体で向上し続け、今ではビジネスにも活用されています。cubesatを生み出したと言っても良い本国としては非常に悔しい現実かと思います。
また、似たような事例は超小型衛星以外にもたくさんあるのではないかと思います。
今後日本が世界の宇宙開発の流れにキャッチアップする、ないし世界の流れをリードするための戦略を、どのような体制で、どんな観点で立案されるか(ないし、されるべきか)、お考えをお聞かせいただきたいです。 |
・超小型衛星は、日本でも、高校生・高専・大学で挑戦されており、今後も素晴らしいものができたり、またその朝鮮の中で、将来の宇宙開発を支える人材やスピリットが生まれてほしいと思っています。
・超小型衛星開発の利点は、スピード感をもって実施し、失敗を見つけても許せて、再トライできるところにあります(スモールトライ・スモールサクセス)。今後、日本では、小型衛星クラスを打ち上げられる小型ロケットが年間100機打ち上げられる国になります。このような宇宙アクセスが増加する機会を向かえて、衛星開発の人材と技術を育て、さらに大型の実用衛星の研究・開発に向けた産学体制となることを政府として期待しています。 |
8 |
三上さん,失礼しました.スペースデブリについて講演の最後で触れておられたのを確認しました.スペースデブリについてさらに強調したい点,またプラネタリーディフェンスについての所感をお聞かせいただければと思います. |
回答略 → 【No4と同趣旨】 |
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先日日経新聞で日本は宇宙ゴミ回収で先進であることを知りました。どの点で優位性があるのですか? |
いくつか注目すべきポイント(技術)があります。日本企業に向いていると思いませんか?
・デブリの発見(地上観測でゴミのカタログ(データベース)はありますが、実際の観測技術)
・デブリへの接近(衛星を同じ軌道上のある目的に接近する(=近づき最終的に同じ速度で同じ軌道を走る)ことは極めて精緻な衛星軌道制御技術が必要です)
・デブリの捕捉(作用反作用の影響をもろに受ける真空・無重力の状態で、ロボットアーム等を使って捕捉することは、極めて困難です;近くでの有人制御ではなく、地上からの遠隔や自律的なコントロールも必要です)
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実際に民間で宇宙市場を拡大していくためには国内の需要、資源では難しい部分もあると思いますが、安全保障の問題も大きい中、米国などとどのように民間レベルで連携できる環境を整えていく予定でしょうか? |
・以前であれば、軍だけで行われていた(軍しかできない)各種のサービスが、宇宙に進出する民間企業の技術力向上によって民間企業サービスが代替それ以上ができるようになったことです(その背景には、ICT・ロボット・AIなど各の要素技術が一定以上に高まるとともに信頼性を持ったこと)
・宇宙空間における実際の技術・サービスの使用に耐えることが分かるよう、宇宙空間での実証事例を多く示すことが重要と思います。そのためには、スモールトライ・スモールサクセスとして、ロケットで打ち上げて実証を進めていく歩みが必要と考えます。 |
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宇宙開発関連の分野で起業したい場合、行政関係でどこか相談できるところはありますか? |
・いくつもあります(JAXA、経済産業省、JETRO)。ただし、以下を整理が必要です。
-宇宙への技術開発をしたいのか(ロケット製造?衛星製造?それらの部品?)
-宇宙を利活用したサービスを行いたいのか(通信、リモートセンシング、測位利用、エンタメ) |
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政府はサプライチェーン強靭化を掲げているかと思いますが、ロケット、衛星のコンポの標準化はこれまでもあったかと思います。なぜ、進まないと思いますか。何があれば進むと思いますか。 |
・ご指摘ありがとうございます。お見立てのとおりです。これまでは製品(ロケット・衛星)の開発をして最後、ビジネスとしての出口段階でうまく関係者がまとまらず、ロケット・衛星及びそのコンボでの標準化がなされていなかったと考えます。
・新しい戦略基金では、国内外で量産化をしていく宇宙ビジネスをもったものを前提とした開発を支援しますので、今後は、標準化(シリーズ化)がなされることを期待しています。 |
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スペースデブリの問題が重要であることは理解出来ますが、一方で働き損、貧乏くじな印象もあります。政府として、どのようなモチベーション管理、マネタイズをお考えでしょうか? |
・ありがとうございます。そのような見方をされる方もいますが、(宇宙だけでなく地上でも、安全や資源の循環的を目指す)クリーンビジネスはニッチ(高い利益)であり、かつ、多くの方から感謝の得られるビジネス分野となっています。
(個人的な見方としては、企業の活動自体が宇宙空間を場としており(行く必要があり)、さらに加えて軌道空間上での細かな制御技術も必要など、技術的な障壁が極めて多く、多くの企業が進出して薄利多売的となる「レッドオーシャン」ではないと考えます) |
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共通技術に電子部品の記載があったかと思います。日本の電子部品の優位性や今後の展望についてどのようにお考えでしょうか? |
・宇宙空間では、低温高温の激しい温度差に加えて、高レベルの宇宙放射線に晒されることから、電子部品について高機能に加えて、高い信頼性・耐久性が求められます。日本企業の電子部品は高性能で有名ですが、宇宙空間での利用に資する信頼性や耐久性については、宇宙空間での実証が重要です(ヴァーチャルなシミュレーションも一助になりますが、現場でのプルーフが一番大事です)。今後、民間企業によるロケットの頻度もあがり、宇宙へのアクセスが容易になると考えられますので、各社では部品・デバイス・コンポーネントの各レベルでの宇宙空間での実証を期待します。 |
15 |
日本の宇宙業界はアメリカと密接に繋がってると思います。今日の大統領選をどう見ていますか。 |
(その後、トランプ政権が確定しましたが)前のトランプ大統領政権時、米軍の中に、宇宙軍が誕生しました。そうしたことから、今後も宇宙空間&安全保障のスタンスはさらに加速していくと考えます。日本政府も宇宙開発に関する米国政府との連携・協調を頑張ります。 |
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フォンブラウンもグラナダも本体は地下です。今から溶岩チューブを探査して、拠点構築に向けて進むのはどうでしょうか? |
・大事な指摘です、ありがとうございます。
月面クレータの都市開発、そのプランについてリーダーシップが取れるのは日本人だと思います。
(ガンダムのほか宇宙兄弟の月面活動も素晴らしいと思います。日本の月面でのリーダーシップ獲得のため、諸外国に翻訳されることを期待します) |
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海外でも数センチメートル級の測位をしようとする計画は上がっているのでしょうか? |
・GPS及びその互換性ある信号(L1Cほか)を用いた測位サービスの位置精度を少しでもあげていこうという挑戦は各国で続いています。ただ、数センチメートルまでの水準には至っていません。
・みちびきでは、国内の電子基準点(1300箇所)等のデータを補強情報として用いているため、国内でその精度を達成しています。人々が描く将来のスマート社会・地域(=自動運転、無人トラクター、無人船舶、ドローン物流などが展開する世界)の実現では我が国が他国の先を走っています。 |
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三上様宛
SLIM後継機に政府の開発予算をトップダウンでつけられないでしょうか?限られた予算で成果を生み出したプロジェクトメンバに次の機会を与えたい。日本独自の技術を維持し伸ばしていければ、必ず大きな成果と感動を届けてくれると思います。 |
・ありがとうございます。社会保障や安全保障などへの支出も増えて国庫予算に強い制約がある中、巨額なプロジェクトを開始・推進するには、その重要性や必要性について、アカデミアや産業界の有志でまとまり発起をいただいて政府・議会の関係者へのご提起・認識をいただくことが大事です。同時に、他のアカデミアや産業界との横断的な連携・コンセンサスも得ていくといった各ステップが大事です。
・宇宙戦略基金でもそうですが、誰と誰で体制を組んで、この次に誰・どこを説得していくのか、そういった座組・パートナーやグルーピング、長期の戦略(ビジネスを含む)が大事ですね。 |
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三上さんに質問です。
私は宇宙開発方面には全くの素人なのですが、今後6cm精度、11機体制等進歩が進むと南海トラフ地震等広域災害対応において大幅な労力削減が見込まれると思われますがどう思われますでしょうか?(被災状況調査や復旧優先順位の検討など) |
・地震が起きると、携帯基地局の故障や電源切れで地上通信が使えなくなります。精密な測位ができるのは衛星測位サービスのみになります。建物・道路の破壊状況の把握やその復旧の優先付け、死傷者の輸送通路の確保などにおいて位置情報は極めて大事であり、今後、いち早く、みちびき専用受信機が広まるよう努めてまいります。
・海上においても、10cm級での測位(高さ方向)ができるようになると、沖合いに離れた場所での海面上限変動から津波探知が可能になるともいわれており、実証が進められています |
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常々気になっていたのですが、スペースデブリ除去技術をよく目にしますが、最終的にはゴミの除去に対して、誰がお金を払うビジネスモデルになのでしょうか? |
・いくつか考えられます。
・ある国の政府・軍若しくは民間企業が、ある衛星を打ち上げしたい/ある衛星軌道を使いたい場合、事前に地上からの観測でデブリがあり将来のリスクが認められる場合、事前に、その除去をお願いする(すなわち、前者はG to C、後者はC to Cでの契約)
・現在、国際ルール的に、寿命の尽きた衛星は保有者自らが処分することになっています(しない場合、米ITCでは保有者に罰金付与も)。自分でできない場合、サービス企業に廃棄依頼をする(大気圏への投入廃棄、静止軌道外にある墓場軌道への廃棄)これもGtoC、CtoCの双方があり得ますね。 |